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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いのローファンタジー、コピーVSハッカー
28/100

守護者シャロン

 水鏡天見……日本人。ベリメスによって魔法世界に召喚され『コピー』魔法使いとなる。体内に魔法の原動力である〈粒子〉を持たないため、魔法耐性はゼロ。さらに力・体力がなく、攻撃力・防御力も平均以下。ただ、魔法に対する想いから肉体の限界を凌駕することがある。回避率が高いのは、身のこなしがいいのと着用している制服の布地に回避率を上げる効果があるから(いわゆる『みかわしの服』)。

 男は驚きつつも体は動き、掌を自分と光るランスの間にギリギリ差し入れ「起動!」。


 男の掌から放たれた暴風の塊がランスの穂先を押し止め、シャロンを後方に飛ばした。頭巾が外れてショートの金髪が現れたが、彼女にダメージはなかった。暴れるスカートを片手で押さえて足から着地し、靴で地面を削りながら止まった。


 シャロンがランスを振って体を起こすと、胸元のロザリオが揺れた。そして、助けが来て喜んでいる天見に、


「あなたという人は、今度は何をやって怒らせたのですか」


 呆れた視線を向ける。


 濡れ衣に、天見とベリメスはガクッと肩すかしをくらった。


「まず、俺に非がある前提で聞くのを止めてください!」


 という真っ当な天見の訴えを、


「あなたに非があるのは当然ではありませんか。コピーは道義に反した行為。すなわち悪なのですから。どうせ、この方の魔法を勝手に使おうとしたのでしょう」


 信用ゼロで棄却した。


 天見とベリメスは頭に大きめの汗をかきながらも、


「まあ、来てくれて助かりました。シャロン先輩」


「そっか。ここはあの子が放課後に従事している教会に近かったのね」


 と、ベリメスは(林に隠れて見えないが)後ろにある教会の方を向いた。


「仕事の途中で抜け出してきたんですよ」と、シャロンは恩着せがましい前置きをして、


「あなたには借りがありますからね。鳥がやってきて「SOS」と空中に書いて飛んで戻れば、後を追ってきますよ。で、本当のところどちらが悪いのですか?」


「居残りしていたら、あいつがいきなりやってきて有無を言わさず襲い掛かってきたんです」


 突拍子もない事情に、シャロンは真偽を確かめようと今度は男に顔を向け、


「本当――」


 聞こうとしたが、男は天見に指鉄砲を向け、指先から高速の火球を連射した。


「私は眼中に無しですか」


 シャロンは駆け出しながらロザリオ型のガジェットのチップを入れ替え、「起動!」と叫び、火球を避けている天見の前に躍り出た。


「輝きに満ちて、万人を羨望で立ち止まらせよ! 満天の星空(スターダスト)!」


 シャロンの掌から放射状に放たれた大量の光の粒が壁となり、全ての火球を阻んだ。


 だが、その光が充満している空間を避けるように、のたうち回る炎の蛇が上空から落ちてくる。


 気づいたシャロンは襲ってきた蛇の口にランスを突き入れ、


「ジャスティス・ストレート!」


 穂先から光線を放った。その光に貫かれて、炎の蛇は雲散霧消した。


「避けろ、シャロン先輩!」


 言葉と同時に天見がシャロンを手で押しのけ、その反動で自分もその場から離れる。


 今まで二人がいた場所を、黒い球体が通り抜けていった。


「あの魔法って」


「真なる闇の球体(グノーシスダーク)!?」


 だが、その球体は以前見たものより速く――


「はっ!」


 貫こうとしたシャロンのランス(光量は落ちていたが)を抵抗なく砕くほどの威力を見せた。


 そして、やはり狙いは天見一人で攻撃したシャロンを無視して飛行する。


 天見は迫る球体を避けようとしたが、体が球体に引きつけられるように動かなくなった。


「引力か!?」


 動きが止まった天見は反射的に球を受け止めようと黒い球体を掴んだ――瞬間、体が急激に重くなって立っていられなくなる。


 地面に倒れ、押し潰されて徐々に地面に沈み込んでいく。天見はまるで、巨人に踏み潰されているかのように感じていた。


「終わりね」


 男が手を地面に向けて押し込むようにすると、天見にかかるプレッシャーがさらに強まった。


 魔法への対処に迷っているシャロンより早く、身動きどころか呼吸もできない状況の天見が、


「あわぜど! ベリメズ、ジャロン!」


 苦しげなガラガラ声で指示を飛ばす。


「ナンバーフォー、インストール!」


「出来るのですか!?」


 聞きながらも、察したシャロンは行動を起こして跳んだ。


 シャロンは落下しながら、真下にいる天見の目を見て、


(あんな状態で目をつぶらないどころか、瞬きすらしないなんて……不気味を通り越して異常ですわね)


 などと思いつつ、掌に作った光球を突き出す。


「コピースタート!」


 天見が埋まっている穴から溢れるほどの光が放たれ、男はあまりの眩しさに思わず目をつぶって腕でガードした。


「魔法が破壊されました」


 足元にいる猫の言葉に、


「奴らが使ったのは、下級よりもさらに劣る魔法だったはずね」


 男は信じられずに問い返した。が、のんびりと話しているヒマは無かった。


「来ます!」


 猫の注意喚起に、男は目を開ける。


 立ち上がったシャロンは文言を展開し、光のランスを作り出した。それを見て、すかさず男はチップを入れ替え、キーボードを叩いて周囲に文言を展開させる。


 突進してくるシャロンの進路上に、


「起動!」


 土の壁が隆起した。


 いきなりの遮蔽物にシャロンは止まれず、ランスが土の壁に突き刺さった。


「ナンバートゥエルブ、インストール!」


 背後の声を聞いて、男は反射的に振り返りながら裏拳をくり出した。だが、元々背が低い天見はさらにしゃがんでいたので、その拳は天見のはるか上を素通りした。


「コピースタート!」


 帯電した天見の掌底が男の側面――右脇腹に深く入った。


 男は軽く吹っ飛び地面を転んだが、すぐに手をついて顔を起こしたということはそれほどダメージがあるわけではなさそうだ。


「『双爆(そうばく)輪唱(りんしょう)』なら片がついたわよ」


 ベリメスのツッコミに、天見は頭に大きな汗をかいた。


「ちょっと、前回の著作権料が頭をよぎった」


「…………ま、委員が目の前にいる状況で簡単に法を破るのも問題あるわよね。でも、著作権フリーの魔法じゃすぐに――」


 話を続けようとしてベリメスが男を見ると、先程から全く動きを見せていない。


 地面に足を崩したような状態で動かないのはなぜだとベリメスが思っていると、男がガジェットのチップを震える手で入れ替えた。


 天見とベリメスが警戒する中、男の周囲にモザイク処理された文言が出現し、体が宙に浮き始めた。


「次は殺すね」


 慌てて猫は男の背中にしがみついた。


 逃げると分かったが、誰も動きを見せない。天見とベリメスは敵の魔法がコピーできない状況で戦うのは得策ではないと考え、シャロンは天見を助けに来ただけだ。敵が逃げるなら別に構わないと考える。


 そんな中、男の背中にいる猫だけが黄色の瞳をシャロンに向け、


「まさか、あなたがその者を助けるとは」


 流暢に話した。


 猫が話したことに驚き、言葉の意味に疑問を持って、シャロンは呟きの声すら出なかった。


 そして、猫の言葉を残して男は空に消えた。


 いなくなった瞬間、天見は膝から地面に崩れ落ち、血が少し混じった咳をした。


「肋骨が何本かいっているのに、体属性の魔法で加速して敵の後ろに回り込む無茶して」


 すぐに、ベリメスが天見の胸元に手を置いて回復魔法をかける。


 説教を受けつつも天見は楽しそうに、


「魔法を使うのが楽しくって仕方がないんだから、無茶ぐらいしたくなるって」


 その答えを聞き、ベリメスは嘆息して「世話が焼ける」と苦笑しながら呟いた。


「しかし、あいつ何で逃げたんだろ?」


「……う~ん、なぞね」


 シャロンが来ても優勢だったのは明らかに相手の方だったので、天見とベリメスは相手がなぜ逃げてくれたのかが分からなかった。


「あと、シャロン先輩はあの猫と知り合いなんですか?」


「いいえ、記憶にありません。なぜ私に話しかけてきたのでしょう」


 猫の言葉にわだかまりを持って、シャロンは首をひねる。そんな彼女に聞こえないよう天見はこっそり、


「この世界の動物ってしゃべるんだ」


「動物はしゃべらないわ。動物に変化している何者かがしゃべったのよ」


「おお、それはカッコイイな」


 日本人の天見が間違ったこの世界の常識を覚えないように、ベリメスがこっそりと正した。


 回復し終わった天見は立ち上がり、


「シャロン先輩、ありがとうございました」


 あらためてシャロンに頭を下げた。


「燕やグリューテイルさんはどうしたのですか?」


 いつも天見と一緒にいる二人の姿が見えず、シャロンはそれを聞く。


「ファイナは理事長室で、燕はどっかで仕事をしているんです」


「なるほど。だから私だったのですね」


 ため息をつきつつ、シャロンは納得した。ファイナより近くにいると分かっていたから、自分が選ばれたのだ。


「でも、まさか水鏡さんと『連理の枝』の秘技をすることになるとは……我ながらよくできたと思いますよ」


「人に合わせる民族性なので、合わせる自信はありました。それに本気で戦った仲じゃないですか。タイミングは覚えていますよ」


 天見の根拠はいまいち分からなかったシャロンだが、タイミングを合わせたのは確かに彼の方なので、追及はしなかった。


「……一応言っておきますけど、他の人と秘技を成功させたなんて、グリューテイルさんに言わないでくださいよ」


 釘を刺されてキョトンとしている天見を見て、シャロンは大きめの汗を流しつつ言っておいてよかったと思った。


「よく分かってなさそうなので、分かりやすく言って差し上げます。あなたは『浮気』をしたようなものなのです」


 口に出すのも恥ずかしそうなシャロンに言われて、天見とベリメスに衝撃が走った。


「え? そういうことになるの!?」


「それは確かに、あの子に知られたらマズイわね」


 ファイナは『連理の枝』に対する不誠実なことには容赦がないだろうから……天見とベリメスは脳内で炎のオーラと「ゴゴゴゴゴゴ」の擬音を背負う彼女を想像し、顔に青ざめる縦線を作った。


 と、ベリメスは唐突にあることに気づいた。


「あれ? そう言えばあなたは教会にいたのよね? 委員会の集まりに出なくてよかったの?」


 シャロンは燕と同じ、二年C組の著作権委員だ。燕は確か、委員会の仕事をしているはずだ。


 質問に彼女はキョトンと首をひねり、


「今日は著作権委員の集まりはありませんよ」


「え?」



 帯刀している短い赤毛の少女――聖籠燕は人気のない部屋でスーツ姿の細身の男と向かい合っている。


 そして、男はメガネを指で押し上げながら静かに言葉を発した。


「キミが知る水鏡天見に関する情報を全て教えてもらおう。彼を殺すために、だ」

 ふぅ~、ようやく主要登場人物四人が出てきた。まだちょっとファイナと燕は目立っていませんけど、これからいつも通り天見の出番が減って、二人の出番が増えると思います。

 次から色々と説明することが多くなっていくので、書くのにすごい頭を使う。とりあえず、次回はこんな最後にしておいて申し訳ないですが、ファイナへの事情説明になります。彼女の方も今回問題を抱えて、必然的に天見の問題にもなります。

 次回更新は金曜日です。

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