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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いのローファンタジー、コピーVSハッカー
27/100

ハッカー来襲

 ちょっと金曜日の夜に更新できるか怪しいので、このタイミングで更新します。一応金曜日ですが申し訳ない。

 現在の天見のコピー魔法ストック……1、原初の光輪 2、双爆輪唱 3、平和の象徴 4~12、著作権フリーの光・闇・風・地・火・水・体・木・雷。

 水鏡天(みかがみあま)()は構えていた。彼は目標を見つけようとジッと凝視し、探し当てるとすぐさま立てた指で一刺し。その行為はもう何十と繰り返されたが、まだまだ先は長い。


「遅いというより、ノロい」


 という、隣からの苛立った声。天見がそっちに顔を上げると、隣席に腕組みをしている無表情のファイナ=グリューテイルがいた。


 ファイナが苛立っているのは声の感じと、腕組みしている手の指がトントンと腕を叩いている様子から察せられる。


「じゃ、別に待ってなくっていいって。何で俺の居残りに付き合っているんだよ」


 天見は気軽にそう言う。十五歳の彼は背が低く、柔らかい茶髪で全体的に幼く見えるため、学園の制服に着られている感がスゴイ。


 背が低いということ以外容姿に目立った個性はないが、左目にあるモノクル(単眼鏡)と左手の指にある青い石の指輪は目を引く。


 天見の物言いに、怒りの温度が上がったファイナの長い濃紺の髪が揺れ動いた。整った顔立ちと長身の彼女は綺麗という表現がピタリとはまる(とても天見と同い年には見えない)。


 相手に弱みや感情を見抜かれないように、多少のことでは表情を動かさない彼女は『仲間殺し(キリングメイト)』や『孤高の銀雪』などと学園では言われている。


「放課後のまさに今、『連理の枝』の授業が行われているのだ。それに出たいのに、パートナーである水鏡が居残りなどやっているから待ってやっているのだろう」


 天見とファイナは『連理の枝』という魔法使いのコンビだ。『連理の枝』は秘技という合体魔法を扱い、魔法戦の複人戦では驚異的な強さを発揮する。


 その『連理の枝』を養成する世界唯一の学園が、二人が通う聖クレストエルク魔法学園だ。


「そりゃ俺だって『魔法理論・情報入力』の課題なんてほっぽり出して行きたいよ。でも、テストで赤点取るのは確実だし、補習をクリアする最低ラインの知識ぐらいは手に入れないとな」


 天見が先程からやっているのは、初級魔法である『闇の(とばり)』のデータ打ちこみである。『魔法理論・情報入力』の教科書に書かれている文言を見ながら、半円状のキーボードをポチポチと押して、キーボードと繋がるクリスタルの表面に字を書きこんでいるのだ。


 データを打ちこみ、刻紋(コード)が入ったチップに写し、それをガジェットに入れて文言と発言を唱えれば『闇の帳』を使えるのだが……コピー魔法使いの天見は魔法を使うのにガジェットもチップも必要としない。そのため、この教科を天見はまったく必要としない。


 だから、意味がないとあっさりと諦めたのだ。


 だが、そうは言っても学園の教科の一つだ。やらなくていいことにはならない。だから仕方なく天見は、嫌々ながら授業中に終わらなかった課題をこなしている。ちなみに、初級魔法の打ちこみが授業中に終わらなかったのはクラスで天見だけだ。


「普通の最低ラインは、赤点を取らないことだ。水鏡の考え方は地獄で死ななければいいだろうと考えるのと同じだぞ。もう死んでいるんだ」


「まあ、天見は諦めたことについては一切時間も労力も使わない主義だから」


 と、天見の頭の上からフォローが降ってきた。


 天見の頭の上に寝そべっているのは、ライムカラーの髪を一つにまとめ、肩が見える服に短い淡色のフレアスカート姿のベリメスという妖精で、天見の保護者だ。


「勉強がそんなに得意じゃない俺が人並みレベルになるための時間と労力を考えると、補習を受ける方が短くて済むんだ」


「補習や居残りで放課後や休みが潰れるぐらいいいじゃない」


「よくない。私の『連理の枝』が赤点と補習漬けなど…………」


 相応しくないと言おうとした口をつぐみ、


「――いや違う」


 手を振って別の言い方に切り替える。


「『連理の枝』の授業は放課後と土の曜日にあるんだ。放課後が潰れたら授業に出られないだろ」


「なんで授業に組み込まれていないんだ?」


「『連理の枝』のカリキュラムは特別なものだ。全生徒が受けるものではない。それに『連理の枝』のパートナーは基本的に学園内の同学年で組むことになっているが、特例として他学年や生徒でない人をパートナーにすることもできる。放課後や休みの日でないと時間を合わせるのは難しいだろう」


「生徒じゃない子って、いいの?」


 生徒でないのに習えたら、『連理の枝』になれる唯一の学園という強みが薄れるような気がして、ベリメスは首をひねる。


「前例では卒業生や……信じられないが先生というのもあったらしい。この学園と関わりがあればいいのだろう」


「へ~」


「ならさ、ファイナも同年代じゃなく、上級生でパートナーを探せばいいじゃん」


(…………これだ)


 当のファイナは声を一切出さないが、心象のファイナは苛立ってムスッとした声を出す。


(水鏡は私の『連理の枝』であることにこだわりを持っていないから、自分は私に適したパートナーが現れるまでの繋ぎ程度と考えているのだろう)


 だから、先程「私の『連理の枝』に相応しくない」などと言おうものなら、すぐさま「じゃ、解消する?」と簡単に言うはずだと、ファイナは思ったのだ。


「いいから手を動かせ。初級の魔法の打ちこみなど手慣れた者なら十分で終わらせるぞ」


 ちなみに授業中から数えて、天見はもう四十分も格闘している。


「だって、やたらにキーの数が多くて、どこに何のキーがあるのか探すのも一苦労なんだよ」


 半円のキーボードには文字だけでなく、記号や図形などそれ自体に「意味」があって「音」を発さないものがある。そのため、キーの数がやたらに多い。


「慣れればキーボードなど見ずとも打てる」


「そこまでのレベルになる気はまるでないけどな」


 ようやく「闇」を意味する記号を見つけ、ポチッと押す。


 ふと、ベリメスはいつもより静かなことに気づいて、周囲を見渡す。


「そういえば、もう一人の子はどうしたの? 天見の周りにいないなんて珍しいじゃない」


(せい)(ろう)のことか? 委員会の仕事があると言っていたが」


 天見とファイナのクラスメイトの聖籠燕は、一年C組の著作権委員である。常に帯刀し、著作権を破ろうとする者には一切容赦をしない。


 天見が学園に入って以来、コピー魔法使いの彼が著作権法を犯さないよう、二十四時間ほぼ監視している。だから燕は、天見とファイナと同室である。


「あ~、そういう時こそコピー魔法をうんと使いたい」


 著作権が魔法にかかっていても、戦闘や営利目的に使用せず、出典先を明らかにすれば罰せられることはない。だが、燕は非生産的なコピー魔法に対しても目くじらを立てるので、天見は窮屈な思いを強いられている。


「『連理の枝』の授業で『双爆輪唱』を使うようなことがあれば使わせてやる。だから、早く終わらせろ」


 ファイナの許可に天見のやる気はアップしたが、ポチ…………ポチ…………。が、ポチ……ポチ……程度に変わったぐらいだ。


 その時、学園内に放送が響いた。


『一年C組のファイナ=グリューテイルさん。理事長室で理事長がお呼びです。一年C組のファイナ=グリューテイルさん――』


 理事長はファイナの祖母でもある。その呼び出しにファイナは無言の態度で難色を示していたが、仕方なさそうにため息をついて立ち上がる。


「さぼるなよ」


「りょうか~い」


 教科書とキーボードを行き来している天見をチラッと見てから、ファイナは情報室から出て行った。


 部屋に二人きりになって、ベリメスは天見の頭から飛び立って教科書の上を浮遊して眺める。


「なるほどね~」


 魔法のデータを見て、ベリメスは感心したような呟きを漏らす。


「何がなるほどなんだ?」


「発動に関する祈りや威力に関する言葉をデータ化しているから、昔に比べてあれだけ文言が短くなったんだな~って」


「そうなんだ」


 ベリメスは教科書の記号や図形を指さして、


「昔はこの言葉に出来ないものは動きで表していたの。だから、間違った動きをすると発動しなかったり暴走したり、違う魔法が出たりしたわ」


「へ~」


 昔の魔法の原理の話になって、天見の手は止まってベリメスの話に聞き入る。


「それと、このデータの中に入っているけど、魔法の威力を決めるのに重要になってくるのは名前よ」


「名前?」


「そう。精霊や魔獣や神獣、そして神様の名前を入れることで威力が安定するのよ。この初級の魔法には闇に関する精霊の名前が使われているわね」


 ベリメスが指差す場所を見るが、ミミズがのたくったような記号と図形で、天見には読めなかった。


 教科書を凝視して首をひねる天見に笑いかけ、


「まあ、人の声で発音できるものとは限らないから」


 ベリメスは説明する。


 天見は手を顎に当て、じっくりと考えるように黙る。その頭の中は、もうすっかり情報の課題を忘れている。


「なるほど。だから、か」


「何がなるほどなの?」


「だから、秘匿されているんだな~って」


 天見の言葉でベリメスは息をのみ、


「……ホント、天見は魔法に関してはスゴイわよね」


 褒めただけで何も答えなかった。


 天見は構わず、教科書を指さしながらベリメスに質問しようと、


「! 天見、伏せて!」


 瞬間、部屋の窓ガラスが全て割れ、暴風が部屋の中を蹂躙した。


 砕けたガラスがそこら中に散らばり、クリスタルやキーボード、机や椅子が滅茶苦茶に倒れた。


 床に伏せていた天見が体を起こすと、背中にあったガラスや椅子の背もたれが落ちる。そして、天見が作った体と床の空間からベリメスが飛び出て「ありがとう」と伝える。


「こっちもありがとうだよ。一体何だ?」


 天見が荒れた床を踏み鳴らして立ち上がり、窓の方へ視線をやると、


「なぜ生きているね。早い所死ね」


 割れた窓枠を飛び越えて、一人の男と一匹の猫が入ってきた。


 男は天見と同じぐらいの世代に見える若さで、顎がシュッとした小顔で、切れ長の目から冷ややかな印象を受ける。短い黒髪は艶やかで光を反射している。


 服装は赤いシャツにジーンズのズボン。そして、こげ茶のジャケットを着こんでいる。


 天見の目を引くのは、男の左腕に付けられている流線型のガジェットだ。装着型のガジェットにしては大きく、デザインなど考えられていない無骨さだ。多くの学生がいる学園でもお目にかかったことがないようなタイプだ。


「悪い、もう一度今の魔法を見せ――」


 男に頼みこもうとした天見は、後頭部にベリメスのゲンコツを喰らって黙らされた。そして、彼女が代わりに男に向かって、


「いきなり何よあなたは! どうして天見に死ねなんて言うの!」


「そんなこと、いちいち説明する義理ないね」


 男はジャケットの内側からチップを取り出し、ガジェットに入れる。


「アクセス」


 ガジェットから現れた光のキーボードの上を、男の指が躍るように動く。ガジェットにはめ込まれた白い宝石が音を上げて大気中の〈粒子〉を集める。


「プロテクト解除」


 男のガジェットの液晶から、モザイク処理された文言が周囲に展開される。


「起動!」


 男の足下から渦巻く炎が現れ、先端が蛇の頭を形作って天見に向かって迫る。


 天見が横っ飛びに避けると、炎の蛇は背後の壁を貫いていった。


 その威力を見て、


「何でだ!? 文言も発言もないのにこの威力――著作権フリーの魔法じゃないのか!?」


 驚愕の声で天見は疑問を口にするが、魔法を使っている男は答えず腕を引く。


 再び炎の蛇が壁を貫いてきて、口を広げて襲い掛かる。


「ベリメス!」


「ナンバーナイン、インストール!」


 すでに『赤の書』を開いているベリメスの声に反応して、天見のモノクルが水色に点滅する。


「コピースタート!」


 左手の指輪が光る〈粒子〉を集め、右手に大きめのボールサイズの水球を作り出す。それで思いっきり蛇の頭を横から叩き、体を入れ替えるように燃える蛇の側面に逃れる。


 天見は間近を過ぎた炎の熱気で、肌にヒリヒリとした痛みを感じた。


 男に戻った炎の蛇はとぐろを巻いて首をもたげ、炎の舌を出して天見を威嚇する。著作権フリーの水属性の魔法では方向を逸らすのがやっとで、効いた素振りもない。


 天見は男の顔をじっくりと見て、


「どこかで会ったことがあるか?」


 自分が魔法使いの顔を忘れるなんてありえないと思いつつ、尋ねる。


「初見ね。恨みも何もない。だから殺せるね。俺の利になるから」


 抑揚なく言う男のセリフに、天見は底冷えするものを感じた。夏も近いというのに、背筋に寒気が走った。


「ベリメス! 今の魔法を――」


「ダメ」


『赤の書』を開いているベリメスは、


「モノクルに入っていないの!」


 信じられない様子で叫んだ。


「死ね」


 男が掌を天見に向けると、炎の蛇が部屋をのたうち回りながら襲い掛かった。



 天見とベリメスは情報室から飛び出し、廊下を走る。背後には二人を追いかける炎の蛇がいる。


「いったいどうなっているの!? 天見、ちゃんとあいつの魔法は見たのよね!?」


 天見が魔法をコピーするためには、モノクルを装着している左目で魔法を最初から最後まで見る必要がある(詳しく言うと、魔法で使用する道具、くり出す時の動作、文言、発言、魔法の形状や属性、威力など、魔法の全てを見ることでコピーできる)。


「愚問だぞベリメス! 俺が魔法を見逃すと思うのか!?」


 全く思わない。おそらく天見なら、自分を殺すほどの威力を持った魔法が眼前に迫っても、瞬きせずに見続けられるだろうとベリメスは確信できる。


「そうよね」


「…………いくつか考えられることはあるけど」


 走りながら考え事をしている天見に、傍らを飛行するベリメスが次の角を曲がるよう指で示す。


 曲がった先に開いている窓があり、天見はスピードを落とさず飛んで、窓を潜り抜けて外に出る。そして振り返り、


「コピースタート!」


 モノクルに入ったままの、先程使った著作権フリーの水球を放った。


 炎の蛇は窓を破壊したところで、水球を受けて姿を薄くして消えた。


「どうやら、効果時間が終了したみたいね」


 ベリメスの声を聞きながら、全力で走り回った天見は肩で息を整える。


「天見、著作権フリーの魔法で何とかできるような魔法じゃなかったでしょ。何で使ったの?」


 呼吸を整えた天見は体を起こして、左手でモノクルを触りながら、


「壊れていないか確認したんだ」


 コピーできなかった可能性の一つをすぐさま潰した天見の手際に、ベリメスは素直に感心し、


「すっご~い」


 拍手をした。


「しかしマズイな。壊れていないなら何であいつの魔法をコピーできないのか分からないし、ファイナも燕もいないし…………こういうコピーできない敵を相手にした時こそ、コピー魔法使いとしての輝かしい戦績からのストックで何とかするという、燃える展開の機会なのに……」


「この前ストックを整理しちゃったから、大半が著作権フリーの魔法よ。こんな時に命を狙われるなんて」


 燕があまりにうるさいので、天見とベリメスはストックしていた魔法の大部分を消去していた。


「しぶといね」


 降ってきた声に、天見は仰ぎ見た。


 先程の男が腕組みしつつ、空に浮かんでいた。猫も一緒にいるが、猫は男の足に必死にしがみついていた。猫に対して落ちるなら落ちろと言わんばかりの素っ気なさだ。


「空飛んでる! いいな! 俺、まだ飛んだことないのに!」


 命を狙われているというのに、魔法を見ると目を輝かせる天見。


「羨ましがってないで! 自由に空を飛ぶのは莫大な〈粒子〉量と繊細な技術を必要とするから、熟練の風属性の使い手でも難しいのに……火と風属性の二つ持ちかしら」


 男はガジェットのチップを入れ替え、


「アクセス。プロテクト解除。起動!」


 モザイク処理された文言が周囲に展開してすぐに、男の周囲に何十もの大きなツララが現れた。


「三つ目の属性!?」


「しかも、やっぱり文言も発言もない!」


 人が使える魔法は元来持つ属性に限られ、後天的に増えることはない。そして、体内〈粒子〉の総量は各属性の割合で分けられるため、バランスよく伸ばすと各〈粒子〉量がそれほど伸びず、上級の魔法を使えるほどの〈粒子〉量にならないかもしれない。


 だから基本は得意の属性を一つか二つ決め、それ以外の属性の割合を下げる『属性の剪定』をやるのだが。


「風・火・水のかなり強い魔法を使うってことは、〈粒子〉総量も並外れているのか? 分からないことだらけだな」


「天見、どうする!?」


 男が手を振るうと、ツララの一部が天見に向かって落ちてきた。


 それを避けると、次はその避けた方にツララが落ちてきて、徐々に天見の逃げ場を消していく。


「一度に落としてくるよりいやらしいわね」


「ああ。よくあの魔法を分かっている。好感が持てるな!」


「天見ね~! 状況分かっているの!?」


 失礼な。と天見は心外そうに、


「ここをどこだと思っているんだ? ベリメス、ナンバースリー!」


 言われて、ベリメスは『赤の書』を開きながら周囲を見る。逃げてきたここはグラウンドの端で、中央の方で放課後に活動している人の何人かは遠巻きにこっちを見ているが、いるのがコピー魔法使いの天見だと分かると近づきもしない。


「ナンバースリー、インストール!」


 天見の意図は測りかねたが、言う通りに魔法をモノクルに込めた。反応してモノクルのフレームが白く点滅する。


「コピースタート! 雨上がり、晴れ渡る青空に映える白。天空に浮かぶ雲に、自由に飛び立つ鳥の姿――平和の象徴(デザインオブピース)! Ⓒシャロン=ニスレスト!」


 天見の手から、輝く鳥が数羽飛び立った。


 今現在、天見が自由に使える使用権が出た数少ない魔法の一つだ。


 男が輝く鳥に気を取られた隙に、天見はツララの囲みから抜け出した。


「天見、視界は大丈夫なの?」


『平和の象徴』は一羽一羽と視界がリンクしていて、映像が脳に送られてくる。以前の天見は一羽でも手こずって、自分の目はつぶっていたのだが。


「大丈夫。もう練習したから慣れた!」


 使用許可が出てから、暇があれば燕の責めるような視線の中使い続け、今では十羽飛ばしても問題なく処理ができるようになっていた。


 男は牽制するように自分の周囲を回る輝く鳥に向けて、ツララを放った。


 天見が手を動かして鳥を操作してかわすが、同時に攻撃されたせいで何羽かは貫かれて消滅した。


 その手応えの無さに、男は眉をひそめる。


「この魔法、随分弱いね……本当にあいつがそうなのか?」


「間違いないです」


 男の疑問に、足にしがみついている猫が答える。


「なぜ、神の魔法を使わないね?」


「さぁ。私には分かりませんけど、やっぱりそう簡単に使えるものじゃないのでは?」


 ようやくの反撃に少しは期待した男だが、期待外れもいい所だった。


 男はジャケットから新たなチップを取り出し、ガジェットのチップと入れ替えながらゆっくりと地面に下り、必死にしがみついていた猫は地面にへたり込んだ。


「さっさと終わらせるね。アクセス、プロテクト解除――起動!」


 男の周囲にモザイク処理された文言が出現した次の瞬間、天見の周囲の地面から先の尖った木が一斉に突き出た。それらは柔軟に曲がり、四方八方から天見に迫った。


 が、その全てを天見は避けた。前方からだけでなく、死角であった後方からの攻撃もまるで見えているかのように避けた。


 絶対の確信を持った攻撃を避けられ、男は信じられずに一瞬呆然とした。


「勘か……いや」


「おそらく、あの鳥ですね。上空の鳥から何らかの方法で彼に伝わるのでしょう」


 猫の解説を聞き、男は上にまだいる鳥に視線を走らせる。


「そんな魔法もあるのか……中々面白いね」


 それが分かるやいなや男は木を上空まで伸ばし、貫き、叩き落としていく。


 天見は必死に手を動かすが、鳥たちは徐々に数を減らしていく。


「天見!」


「分かっている……でも、見るのには慣れたけど、まだ一度にたくさんの鳥をコントロールしきれないんだ」


 最後の一羽があっけなく貫かれた。


 ガジェットのチップを入れ替える男を見て焦るベリメスは、


「コピー中は他のコピーを使えないわよ。中断する?」


「いや、このままでいい」


 天見は緊張した面持ちで、男から視線を外さない。


 男は光るキーボードを叩き、掌を天見に向ける。


「トドメね。アクセス。プロテクト解除」


 その時、男の視界の端に光る鳥が入ってきた。まだ残っていたのかと、少し後ろに退いて鳥を避け、


「起動! 仇なす敵を打倒する力よ、強固な槍となって顕現せよ! 神聖なる馬上槍(ジャスティスランス)!」


 裂帛の気合いの声と共に光るランスを構えて男に突っ込んでいったのは、シスター服に身を包む二年C組著作権委員、シャロン=ニスレストだった。

 いかん、あかん。こんなに載せていたら書き溜めていた分がすぐになくなる。もうちょっと進行状況をよく考えてのせないと。

 まあ、そんなことは置いといて……ナイスタイミングで現れるシャロン! もう書いていて楽しかった。さて、コピーVSハッカーを早速やってしまいました。出し惜しみするのも何ですからね。第一部のコピーVSオリジナルは途中で終わっちまいやしたが、今回は明言しないけど読んでいる人には勝敗が分かるように白黒つけようと思います。

 というわけで、次回の更新は来週の金曜日です。予告は天見・ベリメス&シャロンVSハッカー……しかし、もしかしてハッカーに名乗らせるジャストタイミングを今回逃したかもしれないと、一抹の不安を覚える。

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