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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いの事件簿
24/100

事件簿2

 載っている場所を変えて申し訳ありません。完結したから、別のページを作った方がいいかなっと思ってましたので。でも、一つにまとめた方が分かりやすいかなっと、ふと思い立ちまとめることにしました。混乱させるようで申し訳なかったです。今後はずっとこっちにアップしていきます。

 三人はザッと病院の前の土を踏み鳴らした。


 事件現場の近くのため、戻ってきた感があるが、


「って、なんで俺達まで一緒に行動しているんですか?」


 肩にベリメスを乗せた天見は、ハビエとリュカに間を挟まれて立っている。背の高い二人に挟まれていると、なんとなく頭の中には捕まった宇宙人の写真が思い浮かんだ。


 ちなみに、魔法の棍は途中で効果時間が終了して、天見の手は空いている。


「無意識とはいえ、ピー小僧は犯人を見た。当事者の顔を見たら気づくことがあるかもしれんだろ」


 ハビエはそう言って、天見の返事を聞かず、半ば強引に引っ張って行く。


 病院内もズンズカと進むハビエは、周囲の人の視線も気にせず、リュカが調べた病室に遠慮なく入る。


「都警だ。全員神妙にしろ!」


「何を言っているんですか、ハビエさん」


 病室にいた女の子は、四人を見て目を丸くしていた。いきなり入って来たのが、二メートルの巨大な男なのだ。何だか分からず固まってしまうのも仕方がない。


 天見が部屋の中を見ると、三つあるベッドの内一つだけが使われていた。そのベッドで寝ている人は、事件現場で見た被害者だ。


 そのベッドの傍らにいるのは、天見と同年代か一つ二つ上に見える、黒髪が肩まである女の子。


「騒がしくしてすみません、都警の者です」


 そうリュカが言って、女の子はようやく強張った体から力を抜く。


 女の子は白い半袖のシャツにジーンズという動きやすい恰好で、魔法使いに必要なガジェットはみえない。


 女の子は立ち上がって会釈し、


「私は娘のキメルです」


「お父さんの御容態は?」


「はい。骨に異常はなく、内臓に少しダメージがあるそうですが、数日で退院できるようです」


「それはよかった」


 リュカがホッとした顔で微笑みかけ、キメルは少し照れたように視線を彼からそらす。


 天見が見ていると、キメルに近づいたのはリュカだけで、ハビエはドアから動いていない。まあ、近づいたら彼女を恐縮させてしまうからだろう。


 天見も口を挟むことではないので、リュカだけがキメルと話す。


「キメルさんは病院から連絡を受けていらしたのですか?」


「いえ、父と一緒に大通を歩いていて、私が買い物に離れた時に」


 悔しそうに俯いたキメルは、すぐに勢いよく顔を上げ、


「誰が父を」


「それは現在調査中です。失礼ですが、お父さんは誰かに恨まれていたということは」


 キメルはしっかりと首を横に振る。


「では、モゾリ=フィールスという方に心当たりは?」


「え……」


 リュカから出てきた名前に、キメルは随分と驚いたような顔をした。


「やはり、知っていますか」


「……は、はい。あの、おじいちゃんの友達で、家族ぐるみで会うこともありますので……あの、それで、どうして……」


「いえ、ただ参考までに――」


 リュカはぼやかそうとしたが、


「このコピー魔法使いが事故現場で『鬼面夜行』をコピーした。それで、犯行に使われたのはそれだと分かった。だから今、このピー小僧も含めた『鬼面夜行』の使い手を探っているんだ」


 ハビエが天見の肩を叩きながら、赤裸々に明かした。


「って、まだ俺を疑ってるんですか!?」


「無論だ」


「余計なことは言わないでください、ハビエさん」


 リュカはため息をつきつつ、キメルへと体を向け直す。


「うちの警部が申し訳ありません。まあそういったことで『鬼面夜行』を扱える方を調べているのです。使用権を持っていたのはあなたのおじいさんとモゾリ=フィールスさんですが、他に扱える方はどなたかいますか?」


「……刑事さん。それだけ聞けばもう十分です。勝手なことですがもう捜査はけっこうです」


 突然の被害者側からの申し出に、場に静かな衝撃が走った。


 だが、申し出たキメルはしっかりとした顔つきでいる。


「なぜですか」


「どうやらことは同門……身内の問題です。他人様のお手を煩わせるわけにはいきません」


「それはできん」


 リュカが悩む間もなく、ハビエが言い放った。


「確かにこの事件はお主らの問題かもしれん。だが、ことは公共の場で起きた。個人が狙いでなく無差別かもしれん。犯人は断固として捕まえる。その後で訴える訴えないはそっちが決めろ。興味もないわ。いいからさっさと『鬼面夜行』を使える人物を教えろ」


 ハビエの睨みと言葉がキメルにぶつけられる。だが、彼女は怯んだ様子もなく黙ってそれを受け止めた。


 その動じない精神に、ハビエのそばにいて迫力を背中に感じた天見とベリメスは驚いた。本当に天見と同年代の女の子かと疑問に感じるほどだ。


 キメルはサイドテーブルにあったメモ用紙にペンを走らせ、


「我が家では祖父の他は、父と私が使えます。他人に教えたことはありません。それとこの住所はモゾリ=フィールスさんのお孫さんのものです」


 メモ書きした紙をリュカに手渡す。


「ご協力、ありがとうございました」


 リュカが丁寧に頭を下げて、四人は病室を後にした。



 病院から出た所で、ハビエは待ち構えていた数人に囲まれる。


「警部!」


「警部! 今回はどういった事件なんですか!? 何か分かったことはありますか!?」


 口ぶりから報道陣だと察せられる。


 天見とベリメスは勢いに負けて囲いの外に追いやられていたが、中心ではハビエが豪快に笑いながら、


「ガハハハハハ、そうだな~」


「余計なことは言わないでください。正式な発表は署を通じて行います。ですから、事件に関しての情報は署でお待ちください」


 リュカが釘を刺して、ハビエの腕を引っ張って報道陣の囲みをかき分けていく。


「ちぇ、リュカさんのディフェンスはいつも硬いな」


「警部だけだったらポロリと口を滑らせてくれるんだけどな」


 空振りに終わった報道陣は残念そうに散っていき、天見とベリメスは小走りでハビエ達を追いかけた。



 リュカがメモ用紙を見ながら先行する。


 今歩いている所は学園に帰る方角とは真逆で、天見は来たことがない区画だ。


 住宅街でお店の数は少なく、戸建ての家よりは集合住宅の方が多い。


 リュカが歩みを止めたのは、一件の平屋だった。西洋風の感じはなく、どこか天見には身近に感じられる家だった。


「フィールスさん」


 リュカが門のところで一声かけると、ドアではなく裏手の方から、


「何か、拙僧に御用ですか?」


 渋い声の後に姿を見せたのは、リュカと同年代ぐらいの二十代半ばの男性。黒髪ではかま姿。腕は組まれているが袖の中に入って隠れている。足元なんて、裸足にぞうりをはいている。


「その恰好は!?」


 和風の様相に天見のツッコミが飛び、


「趣味だ」


 聞かれることが多いのか、すぐさま返答があった。しかし趣味とは……魔法使いに憧れてコピー魔法使いになっている天見の、ある意味お仲間かもしれない。


 リュカが仕切り直すように咳払いを一つして、


「都警です。失礼ですが、モゾリ=フィールスさんのお孫さんで?」


「モリス=フィールスと申します」


 軽く会釈して、モリスが名乗る。


「モゾリさんやご両親は?」


「祖父ならば、すでに隠居の身。田舎にいます。親も祖父についていきました。この町に残ったのは拙僧だけです。何か御用がおありで?」


「いえ、それでしたらモリスさんに窺いたいのです。実は先程大通の方で事件がありまして、それで色々と窺っているのです」


「……残念ながら、提供できるようなものはありません。今日はずっと家におりましたので」


「犯行には『鬼面夜行』が使われた可能性が高いのです」


 ピクリと、モリスの眉が動いた。


「……なるほど、分かりました。狭い所ですが、おあがり下さい」



 通された部屋は木の床板で、そこに座布団を敷いて座らされた。


 日本人の天見には慣れたものだが、ハビエとリュカはどこか居心地悪そうだった。


「それで、何をお聞きになりたいので?」


 姿勢よく正座をしているモリスは、単刀直入に切り出した。


「あなたのおじいさんから『鬼面夜行』を教わった人は?」


「父だけだと聞いています。私は父から教わりました」


「他の方は?」


「心当たりはありません」


 これで現在この町にいて『鬼面夜行』を使えるのは、被害者を除いて天見とモリス、キメルの三人だけとなった。


「失礼ですが、ガジェットの履歴を確認させてもらってもよろしいでしょうか?」


「…………」


 モリスは右手を左の袖口に入れ、そこから掌サイズより少し大きい、天見がテレビの時代劇で見たことがある印籠のようなものを出してきた。


 床の上に置かれたそれには、前面に液晶画面がついていた。


「珍しいタイプのガジェットですね」


「東方に行って手に入れてきました」


 どこか誇らしげに語る。


 リュカが「失礼」と一言断って、ガジェットを持って操作をする。


 天見は何をやっているのかと思ったが、そういえばガジェットは魔法の履歴を確認できるとか燕が言っていたのを思い出して、たぶんそれをやっているのだと思い、


「履歴って、どの程度分かるんですか?」


「使った頻度にもよるけど、二日か三日前までだね。署に戻って専門の人が解析すれば一月ほどさかのぼれるよ。ただ、何時に使われたとかは分からない」


 リュカはガジェットを床に戻し、軽くモリスの方へ押し返す。


「今日も使っていますね」


「修行中の身ゆえ」


 微塵の揺らぎも無く、モリスは印籠型のガジェットを左の袖に戻す。


「午後一時半ぐらいの時、あなたはどこにいましたか?」


「縁側で座禅を組んでおりました」


「お一人で?」


「左様」


 アリバイは無し。落ち着いた雰囲気に変化もない。キメルといいモリスといい、中々精神的に強い。


 リュカはチラッとハビエに目をやるが、やる気無さそうに欠伸なぞをしていた。


「ご協力ありがとうございます」


 立ち上がりかけるリュカを、モリスが手向けて止める。


「誰か怪我をなさったのですか?」


「キメルさんのお父さんです。あなたとお知り合いだと聞きましたが」


「……まあ、それなりに……しかし、随分と早く『鬼面夜行』が凶器になったと分かりましたね」


「こちらにいる子が目撃していました」


 モリスは意外そうに天見をジッと見る。あまりに見られて、天見は小首を傾げた。


「少年のような若者が、一昔前の『鬼面夜行』を見知っていたのか?」


 どうやらモリスは天見が犯人の魔法を見て、あれは『鬼面夜行』だと警察に言ったと思っているようだ。


 勘違いしていることに気づいて、天見は軽く手を振って、


「いや、え~っと、俺はただ、こういう魔法でしたよって伝えただけです」


 そう言った天見に、ベリメスがコソッと耳打ちする。


(なんでコピー魔法で再現したって言わないの?)


(説明が面倒だろ。魔法を見ただけでコピーできるって言ったら、怪訝な顔されるぞ)


 天見の返答にモリスは一つ頷き、


「刑事さん、犯人の動機をお考えください」


 目礼して天見達を見送った。



 ハビエとリュカは犯行現場に戻ってきて、上がってきた情報に再び目を通す。天見とベリメスをまだ連れ回しているが、だいぶ日も傾いてきた。


「どう思いますかね」


 目新しい情報はなく、リュカは現場の地面をジッと見ているハビエに話しかける。


「動機か? おそらく、『鬼面夜行』の利益独占を狙った犯行だな。犯人はキメルかモリスのどっちかだ」


 被害者の身内も視野に入れて、犯人を大胆にも絞り込んだハビエの発言に、天見とベリメスは目を丸くした。


(キチンと考えていたんだ)


 適当なだけのおっさんではないと、認識を改めた。まあ、以前燕が「著作権フリー以外の魔法を使えばほぼ当人を特定できる」と言っていたので、難しい話でもないのかもしれないが。


「しかし、利益独占ですか……よくあることなんですか?」


 よく分からず、天見がリュカに尋ねる。


「正統後継者がいなかった流派ではけっこうある問題でね。著作権が切れた後に、使い手達が争い出す。使うのも教えるのも自由になるから、色々派生する利益の奪い合いになるのさ。あまりに大事になると著作権委員会が間に立つことになるよ。だけど、今回のように使い手が少なく、一度表舞台から消えた魔法では、奪い合いになる利益自体がほとんどないはずなんだけど……再び注目されるまでかなりの頑張りが必要になるから、むしろ大会とかに出られる使い手は多い方がいいと思うんだけど」


 リュカは犯人の動機に少し疑問を感じているようだった。


「おい、ピー小僧! ちょっとこっち来て『鬼面夜行』を使ってみろ!」


 呼ばれて、天見はハビエの元に行く。ハビエはキメルの父が立っていた場所に立ち、その前に天見を立たせる。


 実際に犯行を再現しようというのだ。天見はさっそく『鬼面夜行』を使って手の中に闇色の棍を作り出し、ハビエに向かって構えたが、


「う~ん……やっぱりおかしいですよね」


 すぐに首を傾げて構えを解く。


「ほう」


「何が?」


 ハビエは興味深げに顎をなで、ベリメスは遠慮なく聞く。


「こんな往来で棍を突き込む動作をして、誰にも見られなかったわけがない」


「……そういえば、そうね」


 ベリメスが周囲を見渡せば、道行く人がコッチを見ている。


 昼時の大通は、それこそ立ち止まるだけでも注目を集めるはずだ。棍を構えて誰にも見られないなんてことはありえない。


「俺はてっきり、犯行には放つタイプの魔法が使われたと思ったんだけど、実際に使ったら武具の魔法だろ? その時から変だとは思っていた。キメルさんが買い物しているのを待っている時に正面から棍を突きこまれる。しかも、誰にも気づかれずに……」


 天見は「まるで魔法だ」と思うが、手の中にある棍に気づいて笑ってしまう。本当に魔法だったので、嬉しくなってしまった。


「相変わらず、天見の魔法に対する考察はすごいわね~」


「まあ、間違いなくその棍には隠された能力がある。そこも含めて、明日もあの二人から話を聞く必要があるな」


 現場での検証を終え、ハビエはリュカに顔を向ける。


「よし! 今日はもう帰るぞ! 署に戻ったら書類をまとめておけぃ! 記者たちの相手も頼むぞ!」


「はいはい。天見君もご苦労様だったね。後日また話を聞きに行くかもしれないけど、ご協力ありがとうございました」


 リュカに丁寧にお礼を言われ、天見はちょっと気恥ずかしそうに会釈した。

 というわけで、使い手たちも出て次回で解決です。短編なのであっさりと終わらせますが、やっぱり魔法バトルは少し入れます。

 次回更新は来週の金曜日です。帰り道を行く天見の背中に迫る影は……!? 

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