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最強≠最適

 前回はいきなりの更新で申し訳ない。でも、ギリギリ週末に更新できてよかったです。

 今回は少し長めです。途中分けようかと思いましたが、一気にいくスピード感を重視して一つのままにしました。それでは、最終局面です!

 体属性の魔法を使って高速で動くシャロンに、ファイナは徐々に圧倒されていった。


 ランスの穂先が左肩を削り、さらにショルダータックルを喰らってファイナは吹っ飛ばされた。


「つ、強い……デミリクレスポロで著作権フリーが底上げされているとはいえ、これほどの者が学園にいたのか」


 シャロンは火属性を持っていなかったので、以前のファイナは彼女に興味もなかったのだろう。


 倒れたファイナの足下にシャロンは立ち、


「日々の修練は欠かしたことがありませんし、神の祝福を受けた私には無限の力が沸いてくるのです。悪魔に協力するあなたが勝てるわけがありません!」


 見ると、シャロンの胸元のロザリオにはめ込まれた白い石が、止まることなく光る〈粒子〉を集めていた。


「水鏡さん! 大丈夫ですか~!」


 声の方を見ると、燕が天見の肩を持って抱き起こしているが、彼の腕や首が力無く垂れているのを見ると意識がないようだ。


 天見をそんな姿にしたのは、ファイナだ。


 心配と申し訳なさを込めたファイナの視線を塞ぐように、シャロンは彼女の視界に立って天見の姿を見せないようにした。


「いい加減目を覚ますのです。あなたは悪魔に騙されています。『連理の枝』が見つけられないでいたあなたに、ある日突然自分と遜色ない魔法を使う人が現れる? そんな都合の良い話がありますか。あなたはあの悪魔に利用されるため、甘い誘惑に乗せられているのです」


 言われて、ファイナは薄く笑う。


「ふ、それだったらどれほど楽だったろうか。水鏡はこっちが乗せてやろうというのに、物足りないと言って頑なに乗車拒否だ」


 ファイナのそんな様子に、シャロンは苛立ちを覚え、


(なぜ、分かってくれないの。誰も、彼も)


 ランスを握っている手を強く握りしめる。


 その様子に気づかず、ファイナは面白くなさそうな顔で、


「私は正直、水鏡にムカついている。何なんだ、あいつは。私に「物足りない」と言ったり、私の魔法を褒めたり、私を気遣ったり……まったくもって不可解な奴だ」


「不可解で当然です。彼は悪魔。むしろ、理解してはいけません」


「ふん、水鏡が悪魔? 私は今まで他人に顔色を窺われたことはあっても、私のためを思った他人に気遣われたことなどない! だから分かる! 水鏡に打算はない! むしろ少しはあってほしいぐらいだ! 水鏡の頭の中は魔法ばっかだ! 私のことを後回しにするし、なんやかんや言っても、一緒の部屋でも普通に過ごすし!」


「はい?」


 シャロンの呆けた声を聞いて、ファイナは余計なことまで口走ってしまったことを自覚して、それを打ち消すように殊更言葉を強くして、


「とにかく! 私は水鏡が悪魔であろうとも、私の『連理の枝』になれる可能性があればどうだっていい!」


 シャロンはファイナの眉間にランスを突きつける。


「聞きなさい。『神の雫』があれば〈粒子〉量の底上げが出来ます。これを火属性を持つ魔法使いに持たせれば、おそらくあなたの魔法を使える〈粒子〉を得られるはずです。それで切磋琢磨できる真っ当な『連理の枝』を見つけなさい。それが正しいのです」


「うるさい」


「グリューテイルのご息女が、それでいいのですか?」


 ギンッと目を見開いたファイナが、燃える右手でランスの穂先を掴む。


「私は今! 私の! ファイナ=グリューテイルの『連理の枝』の話をしているんだ!」


 一際ファイナの手が燃え上がり、硬質の音を立ててランスの穂先をもぎ取った。


 ファイナは立ち上がり、真っ向からシャロンを睨む。


「…………残念です。そこまで堕ちてしまったのですね……」


 シャロンは手の中のランスを消し、両の掌に光球を作り出す。


「あなたを救ってあげます!」


「ナンバートゥエルブ、インストール!」


「コピースタート!」


 背後で聞こえた悪魔の言葉に、シャロンは不用意に思わず振り返ってしまった。


 天見は手の中に作り出した光球をシャロンの顔面にぶつけた。衝撃は大したことなかったが、シャロンは体を曲げて目を押さえた。


「それを顔面にくらったら、しばらく目が見えなくなることを知っている!」


 勝ち誇っているが、天見がそれを知った状況は『覗き』という恥ずべき行為で全然威張れるものではない。


「水鏡!? 無事だったのか!?」


 心配げな声を出すファイナを無視して、天見は後ろに呼びかける。


「燕!」


 燕はまだ持っていた捕縛用のロープで、シャロンを瞬時に縛り上げた。


「な、なに!? 体が!」


 目を閉じたシャロンが動こうと必死になるが、脚まで縛られているせいでジタバタしているだけだ。


 天見はぶすくれた顔を無表情の奥に隠しているファイナと視線を合わせ、


「起動!」


「コピースタート!」


 同時より、天見の意図を理解したファイナの方が一瞬早く声を上げた。


 ファイナのガジェットからモザイク処理された文言が出現し、天見の指輪が光る〈粒子〉を集める。


『二頭一対の理に爆砕せよ!』


 板割りの練習のように、二人は動かなくていい場所に位置取る。数日の練習の成果で、板割りは三回に一回は成功するまでになっていた。


『双爆輪唱! (Ⓒファイナ=グリューテイル)!』


 突き出した二人の拳の光がシャロンに収束するように吸い込まれ、一気に膨れ上がった。


 怒号が地面を揺らし、爆熱の円柱が立ち上った。


 使った本人達すら肌が焼けるほどの炎が治まると、激しく焼かれたシャロンが地面に倒れ伏した。


 相手を倒したはいいが、腑に落ちないファイナは天見に近づき、


「水鏡、どうして『双爆輪唱』を喰らって無事なのだ?」


 天見は多少焦げているが、別に痛みに悲鳴を上げることもない。回復魔法をかけてもらったとしても治るのが早過ぎる。魔法に耐性が無い天見が、『双爆輪唱』の爆炎を喰らってその程度で済むはずがない。


「天見はあなたと同じ魔法を発動していたのよ。つまり、火属性の〈粒子〉を左腕にまとっていた。だから、左腕を盾にしてダメージを軽減できたのよ」


 説明しながら、ベリメスは天見の頬の擦り傷を手で撫でる。すると、綺麗に傷がなくなった。


 聞いて、ファイナは頬を赤くしてたじろいだ。つまり天見は寝たふりをしていたわけで……話をしっかり聞いていた可能性が高い。確認なんてできるわけもなく、心象のファイナは髪を大仰にかいて悶えた。


「元々失敗を装って一発はくらう予定だったしな」


「なに!?」


「ぶっつけ本番で成功するのは難しいからな。本番でのファイナのタイミングとか勢いとか見たかったし、何より身構えている敵に当てるなんて俺達にはまだ無理だろ。油断させて動きを封じないと」


 そう言いながら天見が隣にいる燕に視線をやると、彼女は得意げに口をVの字にして、


「駆け寄った時に大まかな作戦を教えてもらったんで~す」


「待て。とは言え、だ。水鏡は魔法耐性がないのだ。一つ間違えば大怪我をするんだぞ。わざと魔法を受けるなど……恐怖はないのか?」


 問われて、天見は照れて頬を指でかく。


「いや~、確かにすげ~痛いし全く怖くないっていったらウソになるけど、魔法は大好きだから」


 屈託ない笑顔を見せられ、それ以上ファイナは何も言えなかった。ホントに不可解な奴だと、心象のファイナは口元を緩めて笑った。


「それより天見、早く〈柱〉にエネルギーを補充しちゃいましょ」


「そうだな」


 と、階段に向かって走り出そうとした天見の足が、ピタリと止まった。


「あ、悪魔などに、負けてなるものですか」


 フラフラになりながらも、膝に手を置き、シャロンは必死に立ち上がろうとしていた。


「あなたのように自己を高めようとせず、他人の力に頼って、他人の力で勝とうとする卑怯者が、正しいはずがない! 大神の魔法をコピーしていることが悪魔である何よりの証拠! あの魔法は神に選ばれた、私こそが正当な使い手なのです!」


「俺を卑怯と言うなら、シャロン先輩の仲間はどうなんだ?」


 天見の言葉が、激昂するシャロンの胸に正確に突き刺さり、言葉を失わせた。


 天見は感情を消した目でシャロンを見つめ、


「奴らの一人が自分達の魔法は脆弱だと侮辱していた。そして、プロの魔法の劣化コピーしたものを我が物のように使っていた。それに、顔を隠していたのは違法チップを使っているのを自覚しているから、個人を特定されるのを恐れてだろ。それがご高説はご立派なシャロン先輩の推奨するやり方なのか?」


「あ、あの方達は、まだ、新たに得た力に馴染んでいないだけです。試練と渡り合うために、力が必要だと感じ、全てが終われば、自分達の魔法に向き合い――それで」


「それで、ね」


 言い訳に苦慮していたシャロンの言葉を遮るように、ベリメスがため息交じりに口を挟んだ。


「あなた、天見を(てい)のイイ八つ当たりの道具にしないでくれる」


 ベリメスの視線に圧倒され、シャロンは押し黙らされた。


 苦しそうに目をつぶったシャロンは胸元のロザリオを強く掴み、


「……悪魔に……彼らのことをとやかく言われたくありません!」


「とやかくも言いたくなるわ! コピー魔法使いの美学一つ、コピーであることを隠さない! 俺は魔法だけじゃなくオリジナルにも敬意を持っている! あいつらみたくリスペクトっていう言葉で誤魔化したり、コピーを我が物のように扱ったりはしないんだよ!」


 燕は天見のその言葉を聞き、彼が使った魔法について一度も自分のものだと主張しなかったのに気づいた。


 もはや魔法は出尽くしたと言われる昨今。「意図せず似てしまった」のを免罪符として、著作権法違反ギリギリの魔法だと分かっていても作る人はたくさんいる。


 さすがに文言から発言まで完コピして「意図せず似てしまった」というのは図々しいが、それでも言い逃れようとする人間はいる。それを、天見はしない。


 天見にはいさぎよさだけはある。燕はそう思った。


 だが、同じ著作権委員のシャロンの肩は震え、


「私は! 神の言葉を聞き、それをみんなに伝えています! なぜ、その正しさが分からないのですか!」


「スピーカーか、シャロン先輩は!」


「す、スピーカー……ですって」


「見たこともない神様の言葉よりも、本音と信念からの声の方が、人には届くんじゃないのか。俺の意見だけど」


「言うわね、天見」


 傍らを飛ぶ笑顔のベリメスに、天見は笑い返す。


「間違っているとは思わない」


 悪魔である天見にも返す言葉が無く俯いていたシャロンは、ハッと目を開け、真上を見上げる。そこには〈柱〉の下にある銀の受け皿があった。


「――!! やめなさい!」


 ベリメスが制止の声を荒げるが、恍惚に微笑んだシャロンは止まらず腕を上げて光球を放った。それは銀の受け皿を弾き、溜まっていた光の液体が彼女に降りかかった。


 受け皿の影が消えて、天見達は腕で光から目を守った。そんな視界がきかない中、


「――っか、はっ! なっ!」


 苦しそうなシャロンの声だけが聞こえる。


「一体、何が起きている」


 途端に、目が開けられるほど光が弱まった。四人がシャロンを見ると、〈柱〉の光が彼女の体に吸い込まれるように入り込んでいっている。


 シャロンの体を濡らした液体が血管のように全身に張り巡らされ、その中を光る〈粒子〉が脈打ちながら流れる。その始点と終点は、胸元のロザリオだった。


「早く! 早くそのデミリクレスポロを手放しなさい!」


 ベリメスが絶叫するが、目を見開き、痙攣するシャロンは反応を示さない。


 天見が駆け寄ってロザリオを掴もうとしたが、シャロンを中心に吹き荒れた強風に押し戻された。


「なんだ!?」


「周囲の〈粒子〉が異常にあの子に集まっているのよ!」


「シャロンせんぱ~い!」


 風に飛ばされないよう身を屈めていると、シャロンの傷口から真っ白いクリスタルが現れ出した。


「〈核魔獣〉化が、始まった」


「なに!?」


 風は一旦治まったが、一際強い暴風が光と共に周囲に放たれ、四人を壁に叩きつけた。


 天見が痛みにしかめて目を開けると、あれほど眩しかった部屋がほの暗かった。〈柱〉を見ると、いつ消えてもおかしくないぐらい、小さな玉になっていた。


 そしてその下には、輝くクリスタルをいくつも体から突き出させた、異形のシャロンが立っていた。


「タオス――アクマヲタオス」


 硬質な声と瞳は天見一人だけに向けられていた。


「あの姿は、なんだ」


 シャロンの掌が四人に向けられた瞬間、ベリメスの光が四人を包んで姿を消した。それでも構わず放たれた光の奔流が、四人がいた後ろの壁に大きな穴を作った。


 ほんの少し移動した四人は、放たれた魔法に息を呑んだ。


 天見の創世の魔法ほどではないにしろ、『双爆輪唱』を楽に超える威力だった。


「とんでもない威力です~」


「あんな魔法が上に放たれたら…………」


 ファイナは言葉にしなかったが、上にある学園が大変なことになるのは全員が分かった。


「デミリクレスポロがオーバーロードして、集める〈粒子〉量が本人の許容量を大幅に超えたせいで体内で〈粒子〉の物質化が起こったのよ」


 ベリメスがシャロンの胸元を指さす。


 そこには最早ロザリオはなく、大きなクリスタルが光り輝いていた。


「あれがデミリクレスポロですか~!? 大きすぎますよ~!」


 天見の指輪の石と比べても、十倍近くはある。


「つまり、人間が〈核魔獣〉のようになったのか!?」


「〈核魔獣〉よりも厄介よ。あれは災害だから意思も目的もない。けど、あの子には意志も目的もある」


「アクマヲタオス!」


 明確な天見に対する敵意。だが、シャロンの動きは鈍い。足は引きずり、体の動きはさび付いて軋んでいるようだ。明らかにおかしい。


「シャロン先輩は大丈夫なんですかぁ~!?」


「〈粒子〉はまだ集まり続けている。急いで止めないと体の物質化が進み、死んでしまうわ」


「どうするのだ!?」


「対応は〈核魔獣〉と同じよ。核を壊す。そうすれば〈粒子〉は大気に戻る。幸いデミリクレスポロは結合が弱いから、どんな魔法でも一発いれれば砕けるわ」


 それを聞いた瞬間、ファイナと燕は走り出した。


「ちょっと、二人とも!」


 ベリメスが慌てて止めようとするが、二人の足は止まらない。


「シャロン先輩の狙いは水鏡さんです~!」


「囮は任せた!」


「お、囮!?」


 二人とも一直線に向かわず、天見から距離を取るように大きく弧を描いてシャロンを目指す。


 シャロンは両手首を合わせ、影絵のカニを作るように掌を天見に向けた。手の甲にクリスタルが出来るのに合わせ、掌に大きな光が溜まる。


「ナンバーファイブ、インストール!」


「コピースタート!」


 モノクルのフレームが藤色に点滅し、指輪が集める光の中、天見は踊るように一回転しながら腕を動かす。


「天空で舞え――(てん)翔流(しょうりゅう)羽衣(はごろも)! Ⓒアリエル=リープ!」


 高々と跳躍した次の瞬間に、光の波動が天見の足下を貫いていった。


「水鏡さ~ん!」


「コピー魔法使いの美学一つ! コピー魔法が必要な場面では躊躇なく使う! 苦情なら後でまとめて受け付ける!」


「天気が良いから飛び跳ねただけよ!」


 地下においてその言い訳もあったものではないが、燕はとりあえず黙った。攻撃を行ったシャロンに隙を見出したからだ。


『起動!』


 ファイナと燕の言葉が重なった。


「紅の時雨に空よ染まれ――朱雀宝門流(すざくほうもんりゅう)紅雨(こうう)!」


「闇夜を照らす月、姿を変える月は水面に映る――明暗月夜流刀剣術(めいあんつきよりゅうとうけんじゅつ)水月(すいげつ)・満月の型!」


 多くの火球と力強い水球がシャロンへと迫る。


 だが、シャロンの周囲の床がひび割れ、そこから突き出たクリスタルが二人の魔法を防いだ。しかもクリスタルの表面に付いた魔法は、それぞれ放った本人へと返っていった。


「ちっ!」


 ファイナは舌打ちし、横に大きく飛びすさってはね返った火球を避けた。同じように避けてきた燕と、ファイナは意図せずシャロンの眼前で並んだ。そんな二人にむけて数十、いや百に近い光球をシャロンが自分の周囲に作り出していた。


 マズイッ! と声に出す暇もない。放たれる光球。地面に着弾する一発一発が、燕が今放った水球と遜色ない破壊力だった。


「ファルシオン! Ⓒアルジェルト=クストラ!」


 駆けてきた天見が両脇に二人を抱えて、光球から逃げる。


 脚力だけでなく、スピードに合わせて動体視力まで上がる魔法。天見は降り注ぐ光の合間を縫って、ギリギリの綱渡りで避けきった。


「用心のために学園で使えそうな魔法をストックしてきてよかったわ」


 疲労から肩で呼吸をする天見に、床に下ろされた燕はすかさず刀を突きつける。


「水鏡さん、著作権法第一条を破るつもりですか」


「そんなこと言っている場合じゃないでしょ!」


「世界が滅亡する一秒前でも言ってみせますぅ~!」


 真剣な瞳でベリメスと睨み合う燕。だが、今は口論に時間を使っている場合ではない。


「ならば水鏡、創世の魔法を使え。彼女のボディを構成しているのは光の〈粒子〉だ。創世の魔法を受けても生き残る可能性は僅かながらあるだろう」


「あるわけないでしょ! あの子が使っていたような劣化したものならともかく、天見が使うのは手加減ができないコピー魔法なのよ! あの子ごと消し飛ぶに決まっているじゃない!」


「だが、他に手はない! このまま私達が、いや水鏡がやられてはどうやって彼女を止めて、〈柱〉のエネルギーを補充する!」


「天見にそんなことさせられない。多少厳しい戦いになるでしょうけど、今までストックしてきた魔法で何とかしてみせるわよ」


「そんなことさせません。著作権法は親告罪ですが、オリジナルがいない場所で著作権法違反したコピー魔法が使われ、それを著作権委員が見ていたらオリジナルに代わって報告する義務があります。私は、著作権法違反者には容赦しませんよ!」


 口論に参加せず、体力回復に努めている天見は頭の中で考えをまとめる。


(デミリクレスポロに魔法を当てる結果を導き出すためには……近づこうとすれば手数の多い反撃がくる。遠距離からの攻撃……動きは鈍いけど、魔法を反射させるクリスタルが出現する……)


 多少呼吸が落ち着いて体を起こすと、シャロンの硬質の瞳と目があった。その瞬間、閃いた。


「ベリメス、ナンバーサーティーン!」


「え?」


 戸惑うベリメスに、天見の真剣な視線が飛ぶ。


「早く! 時間がない!」


 言われるまま、ベリメスはナンバーサーティーンをインストールした。彼女の声に反応して、天見のモノクルが輝いて点滅する。


「コピースタート! 雨上がり、晴れ渡る青空に映える白。天空に浮かぶ雲に、自由に飛び立つ鳥の姿――平和の象徴(デザインオブピース)! Ⓒシャロン=ニスレスト!」


 天見の手から、輝く鳥が一羽飛び立った。


「なぜ、ここでそんな子どもをあやすための魔法を!?」


 ベリメスもファイナと同じく驚く。天見があまりにも絶賛してアップロードをせがむからストックしたが、この魔法を使う場面が来るとは全く思っていなかった。


 燕は微妙な表情で唸っている。著作者本人の前で使うコピー魔法。その場合、親告するかしないかは著作者本人に任せられる。


「やっぱり、視界が二重に見える。こんなことなら、テレビはいつも二画面放送で見ているんだったな……俺は目をつぶるから、攻撃がきたら任せる!」


 天見は自分の視界を閉じて、脳に送られてくる光る鳥の視界だけに集中する。自分の姿を俯瞰してみる。普通ではありえない魔法の現象に、思わず笑みがこぼれた。


 天見が腕を振るって動きを確認している時、シャロンが動きを見せた。


 ファイナが天見の首根っこを掴み、燕が彼の足を持って急いでその場から離れた。


 必死に逃げる後方で、光が膨れ上がって周囲に激しい衝撃波を飛ばす。その衝撃波と風に煽られて、四人はまた壁面に叩きつけられた。


「水鏡! そんな劣った魔法で何がしたいんだ!」


「だ~か~ら~! 魔法に強弱はあっても、優劣は存在しない! この魔法が、今一番適している!」


 操作を把握した天見は、光る鳥を操ってシャロンへと向かわせる。


 向かってくる魔法に反応し、すぐにシャロンの足下からクリスタルが突き出した。が、鳥は急浮上でそれらをかわし、高い場所を位置取り、空いている彼女の真上から急降下する。


 クリスタルの囲いを突破して内側に入った鳥を見て、ファイナ達は驚くと共に希望に顔を輝かせた。


 だが、その程度の動きは分かっていたとでもいうように、シャロンは腕を上げ、迸る光の奔流を放った。その鳥は抵抗もなく光の中に呑みこまれた。


「あっ」


 と、落胆するような呟きが燕から漏れた。


 しかし、天見だけはニヤリと笑って、


「シャロン先輩も、訳の分からない力に頼らず最初っからこの魔法を使っていれば、目潰しなんかで負けなかったのにな! 魔法に対する愛! が足りないんじゃないか!」


 天見が大きく腕を振り回すと、ファイナ達の位置からは見えなかったクリスタルの裏側から、輝く鳥が姿を現した。


 天見はシャロンへ急降下すると見せかけて、若干角度を変えて最初からまた鳥をクリスタルの外側に戻すつもりだったのだ。


 シャロンの動きは鈍く、連続して攻撃を行えないことはもう分かっていた。だから、一発攻撃させればその間に攻められる。そして、その際に邪魔なのは攻撃に反応して突き出るクリスタルだけ。天見はそう考え、シャロンのこの魔法にかけた。


「シャロン先輩は言ったな、俺の力は他人の力だと。その通りだ。だから――」


 輝く鳥は地面を這うような低空飛行で体を縦にし、拳も通らないクリスタルのわずかな隙間を通って、シャロンの足下に出る。


「誇れ! この状況に置いて、大神の魔法より適したシャロンの魔法を!」


 拳を突き上げる天見の動作と同調し、輝く鳥が急浮上してシャロンのデミリクレスポロにぶつかり、粉々に砕いた。

 シャロンを拘束するのに燕の魔法を使わせようかと思いましたが、今まで出していない魔法をこの場面で出すのは都合がよすぎるかと思い、縄で捕縛しました。

 次回がエピローグです。風呂敷をたたみたたみしましょう。残っているのは……「連理の枝」問題と「物足りない」問題ですね。

 それでは、次回は金曜日更新です。予告は……神様ベリメスが目立ってないので出番を作ろうかな。

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