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エピローグ

 意図してなかったんですが、ちょうど100話目に終わりましたね。なんか縁起が良さそう。

 天見の回復に二日かかり、ようやくスペリオルに帰れることになった。


 予定よりも長く滞在することになってしまい、旅館の予約日数を過ぎ、最後の一日は燕の家で過ごすことになった。ただその一日はうるさくって、あまり天見の休息にはならなかったが。


 天見達はコウヤの港にやってきて、船の時間まで待機する。


「水鏡、コンロ達はどうした?」


 一緒に来た崑崙とモドリス、ミヤの姿が無く、一応ファイナが聞いてきた。


「どっかに寄ってから帰るらしいから、放っておいていいと思うよ」


 心配などしていないので、ファイナは「そうか」とあっさりと承諾した。まあ、どこに寄るのかと聞かれても、天見も知らないので答えられないけど。


 それからファイナはチケットを買いに行ったので、天見は肩にかけていた荷物を地面に下ろし、ベンチに座ってふぅ~っと疲れたため息をつく。血が足りなくて顔面蒼白の彼を見て、


「大丈夫ですか、天見さん?」


 心配げにセリアが聞いてきた。


「大丈夫大丈夫。それにこれ以上休んでいたら新学期に間に合わないし、船ではまた寝るし」


 コウヤから船でスペリオルに戻り、列車でクレッセントへ戻るとなるとそれなりの時間がかかる。スペリオルでの準備もあるだろうし、あまり余裕はない。


 とは言え、セリアは天見の体を心配して隣に腰掛ける。


「あ、そうだ。ありがとうね、セリア」


 いきなりお礼を言われて、セリアは戸惑った。


「え、な、なにがですか?」


「錬磨さんを呼んで来てくれて」


 そう言われて、セリアは天見が飛燕と戦った日のことを言っているのだと分かり、とんでもないと慌てて両手を振る。


「そ、そんな、天見さんの大変さに比べたら……」


「人見知りのセリアが初めて会う人に事情を説明して、夜に指定した場所に連れてくるのは、しんどかったでしょ」


 その通りだったので、セリアは返答に困って「その、えっと~」と焦りながら俯いた。


「セリアが錬磨さんを呼んで来てくれなかったら、下手したら鋼燕さんとも戦わなきゃいけないところだったから、本当に助かったよ」


 セリアは恐縮して肩をすぼめ、俯きながらチラッと天見の横顔を窺うと、彼の笑顔には力が無くどこか儚げだった。


「……あの、天見さん。無理してません?」


「無理も無茶もしてるよ」


 ノータイムであっさり答えられ、セリアは二の句が告げられなかったが、肝心の天見が疲れはあるんだけど楽しそうに笑いながら、


「やりがいと魔法があるからいいんだよ」


 その儚げも輝いている笑顔に、セリアは不安なものを感じて顔に斜線を作ったが、何も言えなかった。


「水鏡、預けるような荷物があるなら……」


 乗船チケットを買ってきたファイナは、ベンチで並びあって座っている二人を見て、動きをピタリと止めた。


「あ、俺は手荷物だけだから」


「私も大丈夫です」


 という返事は聞き流し、ファイナはベンチの端に座っていた天見を向こうに押しのけ、強引に彼の隣に座った。


 その現場を建物の影からトーテムポールよろしく上下に顔を出して目撃してしまった燕と鍔蔵は、見送りに来たのに出るのを躊躇する。


「うわ~、な~んかあそこだけ雰囲気がピリピリしてる~」


「く~、なぜあの程度の男が両手に花の状況を作れるんだ~」


「そう? 私には針のむしろに包まれているように見えるんだけど~」


 遠くからでも天見の顔に影ができているのが分かった(ちなみにセリアも)。先程から会話も消失しているし、彼の体感時間は今どうなっているのだろうか? すっご~く時間を長く感じていそうだ。


「あれ? ああいう時に緩衝剤になってくれるベリメスさんの姿が見えないな~」


「ベリメスって、あの妖精だっけ?」


「水鏡さんにくっ付いてないなんて、珍しいな~」


「ところで燕姉さん。いつまでもこんなことしてたら船の時間になるぞ」


「しょうがない。さも今来ました~って感じで行くわよ~」


 二人は一旦引っ込んでから、気軽な感じで歩いていく。


「ファイナさ~ん、水鏡さ~ん、フラノールさ~ん!」


 燕が手を振りながら近づくと、一番晴れやかな顔で出迎えてくれたのが天見だった。まるで地獄で仏にあったかのような歓迎顔を見せられ、気づかない振りをしようとした心配りが無駄になりそうだった。


「おうおうおう、兄ちゃん。随分と見せつけてくれるな~」


 軽めの冗談を言った鍔蔵の頭にツッコミを入れ、どうにかその場の雰囲気を一旦流した。


 いい感じに弛緩した空気が流れ、


「どうしたのだ、燕? 別れの挨拶ならば先程済ませただろう。それに今日はたしか刀祢が月光花家元流の師範になったということで、挨拶に来るはずではなかったか?」


「だから逃げてきたんですよ~。姉さんと刀祢さんが付き合ってるって父さんが知っての初対面ですからね~。面倒なことになりそうですから~」


「意外だった。飛燕姉さんもすごいよな~、全然そんな素振りなかったのに」


 ここに来た理由を言ってから、燕は天見に顔を向ける。


「ところで水鏡さん、ベリメスさんは~?」


「ああ、魔断大帝を届けるついでに説教してくるって出かけた」


「届けるってどこにですか~!?」


「おまっ! うちの家宝だったもの、どこにやるつもりだよ!」


 燕と鍔蔵に食ってかかってこられ、天見は背中を後ろへのけ反らせ、


「いや、ちゃんと然るべきところに届けたから。もうたぶん、魔断大帝は表に出てこないんじゃないかな」


「まったく、水鏡さんは訳の分からないことばっかり言いますね~」


「然るべきところってどこだよ」


 鍛冶の男神のところなのだが、言っても頭の心配をされるだけなので、天見は苦笑いで誤魔化した。


 その時、船の搭乗を知らせる一つ目のベルが聞こえてきた。


「あ、そろそろか」


「次会うのは新学期の寮ですね~」


「そう言えば、燕はちゃんと課題を終わらせたのか?」


「心配ご無用ですよ~。ちゃんと後数日で終わるはずですから~」


 まだ終わっていなかったのかと、若干ファイナの肩が落ちた。


「というか、水鏡さんはどうなんですか~? 赤点大魔王じゃないですか~」


「また自分の興味ある教科しかやっていなかったから、ちゃんとやらせた」


「あ~、きつかったな~」


 天見の白さが二割増しになり、風が吹けば灰になって消えそうだ。


 ところが、その話題になりセリアが俯き加減を大きくした。


「そ、そう言えば私……まだ、終わってません」


「え、意外だな。セリアってそこら辺はキチンとしてそうなのに」


 キチンとし過ぎて毎日少しずつやると計画立てていたため、今回の突発的な旅行のせいでやらない日が大幅に取られ、まだ終わっていない。


 でも、強引についてきたこの旅行のせいとは言えないし、旅行に緊張していて課題を持ってこなかったのは自分のせいだ。セリアは帰ったら寝る間を惜しんで頑張ろうと心に決めた。


「不安そうなら、帰ったら一日ぐらい勉強会しようか?」


 セリアの不安そうな様子から天見がそんな提案をしたのだが、そう言った瞬間、彼の背後では燕が目を手で覆っていたり、ファイナの濃紺の髪が少しわき上がったりしていた。


 頬を赤くし、セリアが答えにあたふたしている時、天見は足元の違和感に下を向いた。


「なにやってるの、ファイナ?」


「当然重りをつけているのだが? 文句でもあるのか?」


「いや、ないけど……さ。確か、体調が戻るまでは重りをつけないとか……」


「次は手を出せ」


 天見の訴えは無視し、「出せ」と言いながらファイナ自ら彼の腕を掴んで引っ張り込む。そのため天見の上体が前に泳いで、転ばないように一歩踏み出そうとしたが、予想以上に足が重すぎて動かなかった。


「ちょ! うわっ!」


 ギリギリのところで、天見は前にいるファイナにしがみついて倒れなかった。


 ふぅ~っと、転ばなかったことに安堵した天見の脳天に、ファイナが動揺して手から重りがこぼれ落ちた。


 ガツンッとかなり痛そうな音がして、天見は脳天を押さえてうずくまった。


 すかさずセリアが心配して天見の顔をのぞき込むが、ファイナはフリーズして立ち尽くしている。


「天誅ぅ~」


「なに言ってんの、あんたは~」


 ヒヨコが飛び回っていた気絶から復活した天見は、それでもまだ立ち上がれず、


「ちょっと待て、ファイナ! 重りが倍増している!」


「あ、当たり前だ! 水鏡の課題は体力向上だとハッキリしている! 前のには慣れたようだから、多少重くするのは当然だ!」


「多少じゃない!」


 天見の頭に一度当たったのに、地面に落ちたリストは踏み固められた土の地面に斜めに立っていた。


「いいから手を――手を…………手を出せ」


 尻すぼみに声が小さくなり、今度は強引に手を引っ張ることはなかった。


 天見は嫌だと言っても無理やりつけられるだけだと分かっているので、渋々両手を前に突き出した。


 そして、落ちているリストバンドも拾って、ファイナは天見の両手首に重りをつけた。しばらくは天見もはめられた時の高さをキープしていたが、プルプルと震え出した後にガクンと下がった。


「重い!」


 その時、船の搭乗を知らせる二回目のベルがなった。


「あ、急がないと乗り遅れますよ~」


 じゃれ合って聞こえてないかと思い、燕が声に出して知らせる。


「マズイ。急ぐぞ、水鏡」


「急げるなら急ぐよ」


 天見は膝に手を置いてどうにか立ち上がるが、一歩目の後の二歩目が遅い。


 ファイナは仕方なさそうに天見の手荷物を持ち、天見の右手を引っ張る。


「ほら、行くぞ」


「天見さん、頑張ってください」


 セリアは天見の左手を持って引っ張る。


 両手の重りを考えなくていいようになった天見は、懸命に足を動かして二人に引っ張られていった。


 燕と鍔蔵はその背中に手を振って、


「それじゃまた学校で~!」


「元気でな~!」


 船に乗り込んでいく三人を見送った。



 案の定一筋縄でいかなかったが、どうにか神の依頼である神具の回収を達成した天見だった。

 終わった~! 始めた時はキチンと終われるか不安だったけど、どうにかこうにか終わった~!

 書きたかった倍速コピーも書けたし、一時停止と再開も書いた。もうコピーのバージョンアップネタがないな~。両面コピー? どうせいっちゅうの。


 話は変わるんですけど、第一部とか書き直した方がいいのかな~。でも、みなさんからの感想を参考にして手直しすると、まずヒロインをもっと魅力的にしないといけないので、それはもう屋台骨である「魔法に著作権がある」しか残らないぐらいの手直しになりそうなんですよね。

 そうした場合、編集じゃなくて新しいページに載せた方がいいのかな?


 夏休みが終わるまでは考えていたので、ちゃんと書ききれてよかったです。最後までお付き合いしてくださった方々に、深い感謝を。それではまた今度。

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