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4〜腹黒美人とバカ長男と富田〜

あれ以来。

宮城クンはちょくちょく意味なく来るようになった。


孝生さんは面白そ〜うにしている。


やっぱり、腐れ縁って言うけど仲良しなんじゃん。



今日は宮城クン来ないな…きっと売れっ子だから忙しいんでしょ。



カランカラン♪


「いらっしゃいませ……。」


わあ…可愛い!!


思わず溜め息が出てしまうぐらい肌が白くて…メイクも上手くて…きっと元の素材がいいんだろう。巻き髪もグリングリンに決まってるし。


細くて…ボインボインで…



ああ。一緒に並びたくない…。



「孝生くん〜遊びに来たよ♪」


知り合い?


烈さんが小声で

「あのコは常連さんで…白鳥みるくさんって言うんだけど……」


と、意味深な語尾をつける。



「よお!相変わらず男騙してるか?」


孝生さん…勘弁して下さい…私にじゃないけど。


みるくさんはプーっとほっぺたを膨らませて


「みるく、そんな悪いコぢゃないもんっ!孝生くんのいぢわる〜!ぷんすかぷん!!」


ああ…頭の弱い女のコでしたか…。これなら何言っても大丈夫だろうね…


みるくさんはウイスキーのロックをクイッとやって


「…今日、みるくのダーリン連れて来るからよろしくねっ♪医者の卵なのぉ☆」


孝生さんは面白そうにニタニタ笑い


「へえ。でもどうせまた自ら墓穴でも掘るんじゃねぇの?結婚して保険金かけるまで本性だすなよ〜」


墓穴?

本性?

保険金殺人??


まあ…冗談ということに…したい…



―――――――――――

それから数分後。


カランカラン♪


「やあ、ぴんくちゃん!お待たせ」


ぴんくちゃん?


烈さんが小声で

「みるくさんの源氏名。どうやらキャバクラのお客を連れて来たみたいだね。」



そうか。

みるくさんキャバ嬢なんだ…


って事は…なるほど。

この男はカモか。


男は全身ブランド品で固めている。

ブランドを一種類に統一すればいいのに…

これじゃ悪趣味というか…センスなさすぎっていうか…


見栄っ張りだな。


ちょっと前までダブルブリッジ眼鏡かけてネルシャツをケミカルジーンズにしまっていた私に言われたくないだろうけど。


男は

「ふっ」

と鼻で笑い

「なにも…こんな店にしなくたっていいのにサ」


なっ…なにぃ!!


私はちょっとカチンときてカウンターを見るが…


孝生さんは何ごとも無かったかのようにグラスを磨いている。



さ…さすがプロだ…!


これがプライベートの場だったら…ククク。笑いが出るねぇ。悔しいっ!!!



みるくさんは彼に

「マサさぁん。何飲むぅ?」


マサさぁんというのか。

「ん〜そうだな。ドンペリゴールドでもいただこうかな。」


「きゃーすごぉい♪」


ドンペリゴールド?


烈さんが小声で

「ドンペリゴールド…15万円也…」


じゅっ…じゅっ…じゅっ…じゅっ…!?

15万円!?


酒なのに!?


あたしの貯金の約えーと……うーと…何倍だ!?


「おや、マスター。安酒すぎたかい?」


孝生さんは相変わらず何ごとも無かったかのように栓を開けて


「ドンペリゴールドです」


とシャンパングラスをおいた。



みるくさんはさっきから

「すごぉい!」

を連発している。


すごぉい…見栄っ張りって意味かな?


「ぴんくちゃんは何飲む?何でもいいよ。好きなのを頼みたまえ。」


たまえ。ってオイ…

どんだけ偉いんだ。

貴族か?



「えぇっとお〜ぴんく、お酒弱いのぉ〜」


「ははは。まだまだお子様だなぁ」


「ぴんくは大人だもんっ!ぷんすかぷん!!」



…さて。今のは突っ込み所満載だ。


まず…


『オメ、さっきウイスキーをロックでクイッっていっといて、お酒弱いのぉ〜はねえだろ!!ぷんすかぷんじゃねぇっ!!ぷんすかぷん!!』



…なーんて、てへ。


心の中で思う存分叫んでみた。


ここのお客は…どうして突っ込み所満載なのだろう…



「ぴんくぅ、カシスオレンジにしよぉっ♪」


「はい。」


孝生さんも…いつもの口の悪さはどこへやら。このバカ男&みるくのやりとりを見てても、全く動じない…紳士だ…



…というより相手にしてないだけ?


「富田さん。」


突然孝生さんに苗字…それも“さん”付けで呼ばれる。


「は…はい」


思わず声が裏返ってしまう。


な…なんだ…!?


「手伝ってくれるかな?」


なっ…?


いつもの孝生さんじゃない…!


「は…はい!」


思わず気合いが入った返事をしてしまう。


キャッシャーには、何か言いたげな烈さんが居る。


わあ…。嫌な予感。



私は孝生さんの横でライムを絞りながら孝生さんの出方を観察していた。

みるくさんはやたらボディタッチをバカ男…あ、いや…マサさぁんに仕掛けている。


ムカつく位、豊満な乳がぽよよんぽよよん♪


計画的犯行だ…


マサさぁんもデレデレしながら

「コラコラ。ボクが紳士じゃなかったら変な気を起こすじゃないか。」


「え〜っ?わかんにゃ〜い。変な気ってにゃあにい?」


あの…キャラ変わってます…


「もう☆本当にピュアだなぁ。ぴんくちゃんは…男はオオカミなんだぞっ…」


鼻の下伸びるオオカミねぇ…


「ぴんく、わかぁんにゃぁい☆これは『ぴんくちゃんニャンニャン☆スマイル』なのだぁ〜☆」


今の乳を揺らしてた下心満載の猫パンチ…スマイルなんだ…へぇ…。


な…なんだ!?このヒガミ根性は…!?


「ところでさぁ…ぴんくちゃん。ボク…悩んでるんだ。」


へぇ…バカにも悩みがあるんだ…


「なあに?なあに?ぴんく心配!!」


みるくさんは身を乗りだし心配そうな顔をしながら乳を寄せている。


ぴんくちゃんニャンニャンますくめろん挟み撃ちって所か。


に…人間なんて…

メスなんてこんなもんさ…ってあたしも一応メスだ…。“マスクメロン”と“まな板”の違いだけど…

なんだこの胸の底からの苛立ちは…!?


マサさぁんはしっかり挟み撃ちを食らっている。


「実はさぁ…ボクん家…医者やっててさぁ。」


心配そうな顔でみるくさんは身を乗りだして頷いている。


孝生さんも聞いてないフリしながら聞いてる感じ…?


「ボクが病院の跡取りになるんだってさ…すごいよね。ボク。」






…あの、悩みは?


「すごぉい!すごぉい!頑張ってぇ♪」


みるくさん…ハイテンションだ…


「ねぇねぇ、お金どれぐらい持ってるのぉ?マサさぁんのお家。あとぉ、マサさぁんって病気しやすい人?」


…うあ!?直球!?


さすがに孝生さんにも反応があった。


烈さんなんかキャッシャーから冷や汗ダクダクでこっちを見ている。


本気で…保険金かけるつもりだな…それと遺産も狙ってる…。


黒い…黒いよぉ…


「うん。ボク長男だから一番偉いんだけど…そうだね…何億もあると思うよ。把握できないからさ。あと、ボクけっこう風邪引きやすいからさ…見たまんまさ…デリケエトなんだよ」


ああ…

私は人が騙されそうになっている瞬間を見ている…


あと…マサさぁんは聞いてない事にも答えている…


みるくさんはグリングリンの巻き髪をイジイジしながらマサさぁんに上目使いをして、


「ぴんくの悩みも聞いてくれるぅ?」



…締めにかかるな!


これは…野生のカンだな…メスとしての。


「ぴんくのぉ〜ユメはぁ〜お嫁さんになることなのぉ」


直球すぎるよ!!

金目当バレバレだよ!!しかもそれは悩みじゃなくてエグ黒い願望です!!



ところが…


「ふふっ…もちろんO.K.さっ…。ぴんくちゃんもお嫁においでよ!!」


「“も”…?」


みるくさん、初めて真顔になる…


わ、…なんか…とてつもなく…何か怖いモノの気配が…?



その時。

孝生さんがようやく口を開いた。


「あかね。よ〜く見ておけ。バーで男女の痴話げんか、別れ話なんてよくある事だ。…ただ、」


ただ?


「この女は…普通の口の悪い女なんかにゃ比べ物にならない…強敵だ!!」


たとえがよく解らないが…とんでもない事になるらしい…あぁ…胃が…



「ぴんくちゃんは5番目の奥さんね。あとの4人の方が可愛いから〜君はおっぱいデカいからサ〜10人中5番目☆」


ズゴゴゴゴ…


地鳴り!?


「…………デカいのは……テメェの態度だ!!!!!!このあほんだらぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」



ガッシャーーーン!!!


ブっ飛ぶグラスとドンペリゴールドのボトルの大破する音が店いっぱいに響く!


あわ…あわわわ…!



すっかり鬼の形相のみるくさんが仁王立ちしている。



「ぴっ…!?ぴぴぴぴんくちゃん!?」


「じゃぁかしいわ!!バカ長男!!さっきからよぉ!!頭使ったセリフ言えんのか!!この口がァ!!ああっ!!?」


マサさぁんの顎を掴みながら、怒鳴る。

そして髪を引っ張りながら、

「あぁ、頭ワリィから無理だな!空洞だらけの脳ミソならアンタのオヤジのやぶ医者に見てもらえっつーんだこのタコ野郎が!!!ついでにその薄い毛もなんとかしろや!このハゲボンクラがぁ!!!ヨメが10人もいるだぁ!?アタイだけに金よこせばいーんだよお!よこせや金!!腐る程あんだろ!!テメェなんざ金以外用はねーんだよっ!!!!他のメス豚と比べてんじゃねえっ!!タコ野郎!!いてもうたろうか!!!」


「ぴ…」

「じゃぁかしいわ!ドツキマワしたろうか!ボケェェェ!!!!」


「ヒイィィィィイーーーーーーー!!!!!」



―――――――――――


とまあ…閉店時間まで一方的な毒責めが続いた。

不幸中の幸いか、その暴発をみて居たお客は居なかったが…


警察呼ぶ事を必死で考えさせられたよ…


まあ、マサさぁんはなぜかグラス破損代と会計全額払ってフラフラ帰ってったけど…


まあ払わないと殺されそうな勢いだったしな…



カウンターにはすっかり火の消えて、嫌味ったらしくボインボインな乳を元気なく垂らしたみるくさんがウイスキーのロックを片手にヘコんでいた。

「また…だめだったのねぇ…私ったらオバカサン…」


あらら…老けてる…ように見える。


「まあ、毎度毎度そうだろ?ウイスキーぐらいおごってやるからよ…いいかげん…普通の男作れ」


孝生さん…ごもっともです。


なんか…かっこいいです…


烈さんもやっとカウンターに出て来れて


「どうして金持ちって…バカな人多いんだろうね…」


烈さん今回…結局キャッシャーに(体が収まってないけど)隠れてるだけだったじゃん!!




はぁ…バーの仕事は…本当奥が深いね…


改めて女の怖さを痛感した一日だった…。


玉の輿も…楽じゃないんだなぁ…

☆富田の常連客リスト☆

白鳥みるく(23)

キャバクラ“MAXピュア”のキャバ嬢。巨乳・純粋を武器にしているが、キレやすい性格で男には連敗中。必殺技は『ぴんくちゃん☆ニャンニャンスマイル』


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