#3・恐怖
康介の家の前に着いた。暗闇の中、ただ一つ、明かりのついた部屋…。
康介の部屋だ。
とりあえず康介の家を霊視するため目を閉じた。何だ?背中に冷たさを感じる。
『ねぇ、ちょっと!大ちゃん、この家危ないよ。特にあの明かりのついた部屋。いくら依頼でも危なすぎる。近付かないほうがいいんじゃない?』
「!…雪子か…大丈夫。」
と返事をしつつ、
《雪子…何でついてきたんだよ…》
と、心の中で呟いた。
確かに危ない気配がする。さっきの背中に感じた冷たさは雪子じゃない。何故なら雪子の気配は暖かな陽射しのようなものだから。近づかないほうが良いのか…。
だがこれは仕事だ。それに親友が助けを求めている。諦めるわけにはいかない。
―俺は…俺は心霊探偵神谷零だ!神楽大樹じゃないんだ!絶対解決してみせる!
そう決心した。
ひとまずベランダに上り、康介の部屋を覗いてみる。はたからみればただの不審者である。康介は机に突っ伏して震えていた。いつも明るくて悩みごと0の康介が震えているのをみるのは、なんだか痛々しかった。と、ふいに康介がこちらへ体を向けた。仕事上、姿を見られるのは抵抗がある。しかも友人だ。バレたら危ない。
《やばい!》
そう思ったときにはもう遅かった。姿はバッチリ見られ、目まで合わせてしまった。
《くそっ…バレたな…》
もうどうにでもなれっ…そう思った。が。
「…ぜ、零?零っ!?助けにきてくれたのかぁ!うぁぁぁ…」
泣きそうになりながら駆け寄ってくる康介に、俺と雪子は顔をあわせて首をかしげた。
何故俺を見て零と分かったのか。
何故お前は零が自分の親友だと気付かない。
―その時、何故か恐怖を感じた。