表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の中にて僕は輝く。  作者: udakuda
第一章 人生は、急激に。
8/59

08 ☆  α β γ δ

語り部:姫野 真輝

「貴方、誰ですか?」

 当然の反応だろう。知らない人に声をかけられたら警戒しましょうってね。

 そもそも、何で僕に?

 「キミを解放しに来た。」

 怪しい男はそう答えた。

 「……ハア?」

 意味がわかりません。

 ほっといてくれませんか?

 「キミを解放しに来たんだよ。立ち話もなんだから、ちょっと来て。」

 「イヤダ。」

 絶対に誘拐される!

 「ね、おじさん変な人じゃないから。信じてよ。」

 ……信じられません。

 「じゃ、ファミレスはどう?」

 「…………。」

 食欲に誘われる。

 グゥーキュルルルルーー……

 「…………。」

 …恥ずっ! 穴があったら入りたい! 穴を掘ってでも!!

 「なんなら、おじさんが奢ろうか?」

 「……わかりました。」

 腹の虫に脅された男子中学生が一匹。



 ……考えてなかった。

 抜かった。

 僕は学校帰りの途中で、ロン毛で、学ランだってことを。

 まだ、同伴者が普通の大人ならいい。

 まだだ。

 今は、水色スーツのサングラスマンだ。誰もが二度振り向くであろう変人。

 嗚呼、悲しきかな、変人とロン毛男子中学生のペア。

 記憶に残らないわけがねぇーーーーーー!

 ……僕、下手したら学校に通報だよ?

 退学は絶対ないだろうけど、だいぶ絞られるぞ。

 うわぁ……。

 頭の中にあんなことやそんなこと、R15指定されそうな画像が浮かぶ。

 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!

 今からでも遅くない。

 ここから、逃げ出さなくては!(漫画的に言うと、カッと目が光る。)

 「……ダメだよ~、逃げちゃあ。」

 学ランのカラーを捕まれて、逃げ出せませんでした。

 猛禽類に連れ去られる蛇ってこんなこと思ってんだろうなぁっと引きずられながら思った。



 さあさあ、近くのジョニーズにやってきたよぉ~~~~!(ヤケクソ)

 カラーンというベルの音が鳴って、店内に入る。

 「二名様でよろしいでしょうか?」

 ひきつった顔のウェイトレスさんが話しかけてきた。

 「うん。喫煙席じゃなくて、外から見えない場所がいいなぁ。」

 …………恥ずかしい。

 「あっ、はいかしこまりました。では、席にご案内いたします。」

 「ハイハイ。」

 席まで案内するウェイトレスさんのあとをついていく。

 案内し終わって、メニューを置くと、

 「ご注文が決まりましたら、お手元のベルを押して下さい。」

 と言って足早に去っていった。

 ……関わりたくなかったんだろうね。僕も、もう関わりたくないけど。ていうか、逃げたい。

 というか、関わりたくない。面倒だ。

 「さあ、何食べたい?おじさんの奢りだから、何でも食べていいよ。」

 ニコニコと気味が悪い。

 「…………。じゃあ遠慮はしませんよ?」

 「どうぞ、どうぞ。」

 10分くらいかけて、メニューを決めた。北海道チーズとクリームのドリアと、エビが入っているサラダと、イチゴのショートケーキ。

 「おじさんは?」

 とりあえず、訊ねる。

 「もう決まっているから。」

 だそうで。

 備え付けのベルを押すと、ピンポンという間の抜けた音が夕食時でないので人のまばらな店内に響く。

 ウェイトレス(さっきとちがっておばさん)が来た。

 「ご注文は?」

 無愛想な声と共に。

 「えーと、このドリアと…」

 バサバサ(メニューのページを繰る音)

 「…このエビのサラダと…」

 バサバサ

 「イチゴのショートケーキで。」

 パタムッ!

 メニューを閉じた。

 ……おじさんは?と思いおじさんに目を向ける。

 おじさんはとっくにウェイトレスに向かっていて、「ドリンクバー2つと、ハンバーグセット。ご飯で。」

 ……よくわかるなっ!すげぇなっ!

 「以上でよろしいでしょうか?」

 「はい。」

 「では、注文を確認します。北海道のクリ……」

 もう心ここに在らずだった。

 つーか、なんでここにいるんだろう?

 ……悲しいや。

 涙が出そうになったけど我慢。

 漢に涙は似合わねぇっ!

 「……大丈夫?」

 変なおじさんに心配された。うつむいてたからだ。

 「あっ、はい。大丈夫です。」

 悲しい気持ちもおさまった。(嘘。蓋をしただけ。)

 「ドリンクバー、取りに行きなよ。頼んだからさ。」

 「……はぁ。」

 椅子から立ち上がり、ドリンクバーを取りに行く。

 だーれも、居なかった。

 うーん。迷う。

 ……こーらにしよう!

 コップを取り出して、放出口にセット。そして、ボタンを押す。

 ウィーンと鳴いて、ジョボジョボジョボ~と出てくる。

 離すと約3秒後に止まる。

 それを持ち、あのおじさんが待つ席に戻る。

 「あ~、おじさんのも持って来てくれる~?」

 ひきつった笑顔で返事。

 めんどくせぇことしてくれんなー、オイ。

 コップを置いて、また向かう。

 「メロンソーダとコーラの半々のミックスで!」

 ……キモい色になるよ?

 いい大人がジュースを混ぜて飲むなっ!小学生かっ!僕は一度もやったことがないぞ、コラァ。

 と心の中でつぶやきつつ、キモキモミックスジュースを作った。

 戻る途中、ウェイトレスさん(さっきの)がかわいそうな子を見る目付きがなんとも言えないぐらいイタかった。

 ……なんで僕はここにいるのかな?

 泣きたくなるよ、お母さん。

 涙が悲しそうに漫画では光るのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ