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闇の中にて僕は輝く。  作者: udakuda
第三章 冒険は、始まらず。
55/59

48 ☆  ーーγ δ

 

 「じゃあ、出発だ。」

 次の日の朝。本日も快晴だったりする。

 え、昨日? あれはノーカウントだよ。

 「出発だって……、僕に作らせたパンはどうするんですか!」

 「こうする。」




 「…………んっ? 何か問題でもあったか?」




 「大丈夫か?」




 「マキ! 反応しろ、マキ! 生きてるか?」


 「んあっ? 何だよ…………ギャーー! 変質者ー!」

 「マキ、俺だよ俺!」

 「新手のオレオレ詐欺ですか! 騙されません、騙されませんよっ!!」

 「アルサル、アルサルだってばっ!」

 「カエサルなんて人知りませんよ!」

 「カエサルじゃない! アルサル・ウェルシュ、勇者だ!」

 「……本当だったらそんな変態な格好を……! ……って変態だったね。じゃ、行こっか、変態さん♪」

 「へ、変態じゃ……まあ、いっか。マキが認めてくれるんなら変態呼ばわりされても……」

 「変態〜! 早くでないとこの魔具畳んじゃうぞ〜♪」

 僕にはわかる、顔ににやついた笑みが張り付いていることを。

 「うわっ! 出るから、すぐ出るから!」

 「にひひっ♪」

 と、笑ってみたはいいものの……

 「畳み方、わからない……」

 「……しょうがないな、まだ子供だから知らないんだな!」

 「こ、子供じゃない!」

 「むきになっちゃって……、ほら、ここの匂いはまだ子供だぞ?」


 「――――――――っ! やめろっ!」

 寄るな触るな匂いを嗅ぐな!

 ついでに舐めようとするな!

 「お前は変態かっ! 」

 「変態だ!」

 「認めるのかっ!」

 逃げようと暴れるも、30センチ以上の体格差があり、逃げられない。

 「……まさか、自分がやることになるとは思ってなかったぜ……」

 無理矢理勢いをつけて腕の中で一回転。

 向き合ってそのまま……

 「必殺! 金的キーッくつつつ……」

 鎧に足が当たっただけでした。

 すねに金属板が、クリティカル……ヒット!


 ……つーか、パンを頭に被っているのに首筋の匂いを嗅げるのか?




 ◇◆◇◆◇◆




 「んじゃ、出発するか。」

 「アルサル! 何その顔! 食べ物を侮辱していませんか!?」

 いつもにっこりと不気味な笑顔で微笑んだ顔、顔にたいして小さな体、オマケに真紅のマントまで!

 「××××××じゃねーか!」

 この世界に於ける異文化排除システムにより全てよくわからない言語になったが。

 「××××××だよなー、これは!」

 確かに、遊び心もあってあの顔にしたけれど……

 「実写版××××××じゃんか!」


 「そのあなぼは……らたってなんだい?」

 「アしか合っていない! ××××××は、僕の世界の×××(アニメ)の……ああ、×××もダメか。有名な絵本の主人公なんだよ。愛と勇気だけが友達の淋しい人……人かなぁ?」

 頭がなくても行動できる奴は人と言えるのだろうか?

 「よくわからないが……俺は俺だ。そのアなんとかとは違うからな。さあ、行こう。」

 「何でパンなんか頭に被っているの? 食べ物に対する侮辱? 侮辱なの?」

 「いや、そうするとステータスが上がるからな。ああ、マキの作ったパンはいいぞ。全ステータスが3割増しだ。」

 「うわっ! 何それ、チートでしょ!?」

 「違うな、これは勇者特典だ。」

 アルサルは魔具の家をいとも簡単に畳み、小さなボロ道具入れにしまった。

 そして僕らは作った竈を置いて、新たなる場所へと出発した。


 へ、竈?

 場所も悪かったし重かったから、持っていけないんだよ!

 わ、悪かったね!

 持ってけない竈を作って!




 ◇◆◇◆◇◆




 「うわぁ……森だぁ……!」

 目の前には何もない草原だったのから一転、いつの間にか大きな森があった。あと、5、6キロ歩いたら着きそうな感じの。

 針葉樹のような深い緑の森はなんだかおどろおどろしかった。

 「なぁ、マキ。」

 「ん、何?」

 「なぁ、この草が抉れている部分って何だろな。」

 「えー、あー、うー……き、気のせい……じゃない……?」

 何で言わないかって……、恥ずかしいじゃないか! 若気の至りで作った道だなんて、黒歴史認定されてもおかしくないよ!

 「むー、気のせいじゃないと思うんだが……」

 土色のブーツでそのラインを蹴ると、他とは違いガスッガスッと土っぽい音がした。

 「あ、それはですねー♪」

 あれ、ふょ!?

 ま、まさか……!

 「な、なーんと! 真輝が作ったものなんです! すごいですよね!」

 「ふ、ふょ、ふよめ……」

 「ま、でも曲がりすぎていて道には使えないがな。」

 「う、うん……」

 「ま、よくも悪くも歴史には残るかもな。これがあの道を作った“マキ ヒメノ”だってな。」

 「え、う……そんなんで歴史に名を残したくないよ!!」


 一歩ずつ一歩ずつ、その森への距離は縮まっていった。




 ◇◆◇◆◇◆




 「アルサルー……本当にここに入るの……?」

 目の前にはぐおんぐおんでぐよぐよでぶるぶるでふよしゅーで背筋ぞくぞくな森は僕に大口を開けて隙あらば喰らおうという雰囲気が滲み出ていた。

 「……ここ、絶対駄目だよ……死ぬから……」


 何故かわからないけど身体が震える。武者震いなんて大層なものじゃない、ただの恐怖によって震えている。


 怖い……


 恐怖だけが身体を渦巻いている。


 「んじゃ、今日はやめて、明日入ろうな。」

 「そ、そういう意味じゃないんだってば! 街へ行くのが目的なら、違う道を通ればいいじゃんか! 何でそんなに入りたがるんだよ!」

 「……え、そこに森があるから?」

 「……なにその登山家みたいな言葉! 本当に生きて帰れないかもしれないんだよ! やめようよ、ねぇ?」

 「いや、やめない! 俺は……、」

 「俺は……?」



 「いや、言わない! 言うと叶わない気がするんだ!」

 「いや、言えよ!」


 スコーンとアルサルの脳天にツッコミが決まったあと、アルサルと何故かふょの説得の末、僕はしぶしぶその森に入るのを了承した。

 条件は、危ないと感じたら森を出ることと、今日僕に剣の使い方を教えること。

 剣なんて付け焼き刃でそうそう出来るようになるはずなんてないけど、やらないよりはましだと思う。

 だから……




 「必ず、生きて帰るよ……乃子……」


お気に入り登録ありがとうございます。

これで第3章は終わりです。

改訂作業に入るので少し時間がかかるかも知れません。

とりあえず、頑張ります。

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