46 ☆ ーーγ δ
夕立が接近したよ企画でした。(特に意味はないですけど)
シャワーのごとく雨が降り、床が震えるほどの雷が落ちる……
あわよくば、外に出て走りたいとか思いましたが色々と怒られそうなのでやめました。
意味もなく雨の中を走る……青春ですよね……!
あ、それから、本日のイラストは R15仕様と……? いや、ワカメちゃんや静香ちゃんをかんがみれば大丈夫か?
とりあえず、煮込みクオリティーなのでへたっぴなのは確実と。
見たくない方は 挿し絵off をぽちっとすればいいと思います。
#4 変態への対策は
「朝だよ〜。」
呑気な声で僕の意識はベールを脱いでいく。
覚醒しつつある僕の後ろから声が聞こえるのは……夢?
「はっやっくぅ、おっきっろっ♪」
ギュッと後ろから抱きしめら……
「ヤッ、ヤメロォ!」
ボォッと。
後ろで音がした。
チリッと。
何かの音がした。
「マキ、マキ!」
後ろから声が。
「水、水!」
ツンと鼻にくる焦げ臭い匂い。
あれ、背中が暑い……?
振り向くと――――
「あっ、ウォ、〈ウォーター〉!!」
ジュッと音を立てて炎は消えた。
「あっ、ご、ごめ、ごごごごめん……なさい…………。」
そこには焦げかけたアルサルが、あと、焦げたベッドがびちゃびちゃでありました。
「い、いいよ……」
アルサルもなにとなく呆然としているような。
「ご、ごめんなさい……」
何でこんなアホなことしたんだろう、何で火なんか出したんだろう、何でこんなアホなことを……がエンドレスで頭の中をぐるぐる回る。
ぐるぐる、ぐるぐると。
瞬きを忘れた眼は乾燥し、そして潤んでいく。
ツゥッと一筋、溜まりきった涙がこぼれ落ちた。
「だ、大丈夫だよ! ほら、そ、そんなに焦げてないんだから!」
「いやいや、そんな慰められても困るだけだし……」
「いやいや、大丈夫だから、大丈夫か?」
「いやいや、僕は死んだ方がましだよ……」
「いやいや、そんなのは大丈夫だから、体が資本だし……」
「いやいや、僕が悪くて焦げたんだし……」
「いやいや、それを言ったら俺が……」
「いやいや、それを言う前に僕が……」
「いやいや……」
「いやいや……」
「いやいや……」
「いやいや……」
「「………………。」」
「いやいや……」
「いやいや……」
「「…………。」」
同時に目を見合わせる。
「「あはは、はははははっ!」」
笑う。
笑える。
笑いが止まらない。
「「……ごめんね」」
笑ったあとの謝罪の言葉とも重なった。
#5 見た人は、変態か?
「もまもーもおあいあーふ。」
口の中にたっぷりとマキナのパンをほおばったふょに声をかけられた。
机の上にべたっと座って、パンくずをボロボロとこぼしている。
「どーしたんですかー? ほげ、ムグムグゴックン、焦げ臭いんですがー。」
「「えーと、ちょっとね。」」
ハモった!
「なんか、きな臭いですね。どーせ、あははでうふふの薔薇性活でも送ってるんじゃないんですかー?」
「違うわっ!」
「……えーと、それもそうかもなぁ……」
……ハモらなかった。
「つーか、違うから! こいつと、うふふであははの薔薇色生活なんて送りたくないし! それから、アルサル! 嬉しそうに頬を染めるのをやめろ!」
「……や、やっと俺に心を開いてくれたんだね!」
腕を開いて、ハグしてきそうに突進してきた。
「そんな訳ないだろーが!」
右アッパーが顎に決まり、180センチを越えるアルサルの体が吹っ飛んだ。
「…………あ。」
そこには気絶したアルサルが倒れていました。
◇◆◇◆◇◆
「えーと、どうしよう……。」
頭を抱えて踞る。後悔の念が襲ってくる。
「どうしようって……ああ! “魔王への道ばた”のLvが上がりましたよー!」
「そういう意味じゃないよ! また、仲間に暴力を振るっちゃったよー……」
「大丈夫ですよ、きっと。キチンと正当防衛になってます。ま、そうでもして突き放さないと抱きしめられて穴を掘られかねませんからね。」
「ちょっ、まっ! やだからね。僕には心に一つ決めた人がいるんだからっ!」
「えー、いいじゃないですかー。元の世界には愛しい彼女がいて、この世界にも愛しい愛しい彼女がいるだなんて! なんてステキな――――」
「どろどろの三角関係――てか? やだよ、そんなの。僕は元の世界に戻る義務があるの。」
「えっ、何年何月何時何分何秒、何国何県何市何区何町何番地でそんな義務を負ったんですか? それが保証する権利は何ですか? そして、その書類は何処にあるんですか?」
「なっ……そ、そんな小学生みたいな真似するなよ……。そんなのわかるわけないだろ! それから、県とか、市とか何国は日本限定だろ!」
「……要するに、真輝が勝手に負っている義務なのですね。だったら、その義務放棄すればいいじゃないですか。きっと、その愛しの彼女もきっともう真輝のことなんて想っていませんよ。」
「いいや、想ってる。絶対、想ってるね。」
「……ふーん。」
無駄に熱く熱弁したら、冷たい返事が返ってきた。何だか、むなしい。
「…………。……そういえばさ、乃子って元気かわかる?」
「…………元気ですよ。ただ、喪った悲しみに明け暮れているようです。」
「……ごめんよ、乃子……」
「……何、空々しいこと言ってるんですか! ここで新しい恋を見つけようとしてらしたのに!」
「そんなことは断じてない! 絶対、してない!」
「何を今さら。アルサルに頼られていい顔をしていたのは、いつ頃でしたか?」
「いい顔なんてしてないし! アルサルは仲間だから、そういうのは関係ないし!」
「……そうですか。その事は目をつぶっててあげましょう。」
「何その、上から目線!」
「ボヤ〇キーの真似ですよ。」
「ボヤッ〇ー違うから! 強いて言うなら、2号だよ!」
「説明しよう! 姫野真輝の彼女は、とっても美人さんで大金持ちなのだ! そして、姫野真輝の家は貧乏でなかなか辛い生活を強いられているのだ! ……まるで、逆シンデレラみたいですね!」
「逆シンデレラ言うな! 結構気にしてるんだぞ!」
「別に良いじゃないですか。玉の輿。全世界の女の子の夢ですよ! 良いじゃないですか、玉の輿! とってもとってもとーっても羨ましいです!」
「羨ましくなんかないよ! 人の妬みとか雨霰だし、お義父様のプレッシャーもなかなかすごいし、友達も少なくっというかいなくなったし、僕の周りに集まるのは少しでも甘い汁を吸いたい大馬鹿者だけだし。ああ、……僕には、乃子しか居ないんだ。乃子、乃子……会いたいよぉ……」
目尻から涙が溢れそうになり、ついには溢れる。
涙は、涸れたはずなのに、再び溢れ出た。また、湧き出たのだろうか。
「……ま、真輝! これも美味しいですよ!」
滲む視界に黄色のそれが黒っぽいモノを持って近づいてきた。
これは、気のせいか? 幻聴と幻覚が一緒にダブルコンボなのか? 乃子、乃子! 愛してる!
「……むぅっ!」
乃子のことを考えてばかりいて、全く聞いていなかった僕は、急に口に広がった甘酸っぱい味に驚いた。
「どうですか! 美味しいですよ……ねっ!」
目の前に、通常であってもピントが合わないほど近くの……ふょが言う。……乃子じゃないのか。あっ、それと声は少し抑えてくれると嬉しい。
「えっ、これは……レーズン?」
「そうです! レーズンです! 甘くて口の中にたくさん貯められて、あと、保存が利いていいですよね!」
「ああ、確かに美味しい、け、ど……これ、パンの材料だから! パンに入れる分のレーズンはあるの!?」
「え、もうこれだけしかないですよ?」
「あーー!!! レーズンパンが遠のいた……」
ギブアップのレフェリーみたいに机をバンバン叩く。
「あれ、ダメでしたか? ほら、レーズンパンってあんまり美味しくないじゃないですか。」
「ダメも何も、パンのおかずが一つ減ったんだよ! 嫌だよ!」
「パンのおかずって何ですか? 別にハムやチーズかなんかを挟めば良いじゃないですか。レーズンじゃないとダメなんですか? 卵でもマヨネーズでも良いんじゃないですか。」
「や、その蓮〇さん口調はやめろよ。」
「何でですか? 蓮〇さん口調、最高じゃないですか。あ、ジャパニメーションも好きですよ? その幻想をぶち壊す!」
「上〇当麻!?」
「もっと次へ加速したくはないか、少年。」
「〇雪姫!?」
「海賊王におれはなる!」
「ワ〇ピース!?」
「ウソだけど……」
「…………? ……ああ、みーくんかっ!」
ツッコミをするっ! そもそも、それはアニメ化していないだろう!
それはもう、さっくりとツッコミしよ……少し思い留まろうか、僕?
「まあ、知っているのはこのくらいですが。あと、特撮モノも好きですよ。ジュワジュワ言ってて、こういう風にする人とか!」
……っ!
左手を右手の肘にあて、右手は地面と垂直に立てている! 右足を前に出し、左足は後ろに退かれ両足とも膝を地面についている!
多分、ジュワジュワ言っている人の必殺技なのだろう……。うん、ジュワジュワ言ってるとか意味がわからなかったけど、まあ、それはいいとして。
…………………………っ!!!
うん、落ち着こうか。
まず、ふょの格好は十二単の簡略化バージョンなんだ。お雛様をモデルにしたらしいけど、それはおかしい。竹取物語にも出てくる喪や、袴なんかが欠片もない。しかも、腕を出す部分がすっかり消えている。
言うなればポンチョみたいなそんな格好で下から腕を出したなら……?
……イチゴパンツっ!
僕の網膜には赤々としたイチゴと真っ白な下地がきれいに映っていた。
人生初パンツがこれか……。いや、保育園の時は男女の違いなんて無かったし、小1の時もプールのときとかも一緒だったけど、それはあくまでノーカウントだ! 初めては乃子が良かったんだっ!
ああ、でも、何故?
目が離せないー……!
「あと、頭の上の兜も攻撃手段になりましたよね? ほら、真輝のその髪のような感じでしたよね?」
パンツに目が離せない……いやいや乃子がいるじゃないか……いやいやこのパンツがあるのが悪い、と責任の擦り付けをしている時、かなりの痛みと大きな“ぶちぃ”と
「い゛でぇっ!」
「あれ、あれれ……ごっ、ごめんなさい! てっきりもっと強いと思ってました! ごめんなさい!」
「……くっ、許すっ!」
狼狽えるのがかわいらしくて、頬が弛む。
「あっ、ありがとうございます! あと、髪の毛がもうすごい勢いで伸びはじめて来てるんですけど大丈夫なんですかか?!」
「あー、確かに……えっ、ちょまっ! 伸びるの速くないかっ!?」
「え、もう、肩甲骨の辺りまで伸びてますよ?」
「あれ、前より速い?」
「そうですね。“尋常でない育毛”のレベルも上がってますよ。だから、速いんじゃないですか?」
「いや、速くなっても困るから!」
「いや、でも、レベルを上げたら、髪の毛を自由自在に操れますよ?」
「やだよ、そんな境地! なあ、ふょ、熱が通るハサミってある?」
「持ってませんね。どうかしましたか?」
「や、切りたいなぁと思って。」
「持ってたとしても貸しませんよ! その伸びきった髪で鬘を作って売りましょう!」
「やだよー! そんなの作っても売れないよー!」
「何言ってんですか!薄毛に悩むおじさんは全世界共通なんですよ!」
「サラサラロングヘアーのおじさんなんて見たくないよ!」
◇◆◇◆◇◆
「ん……おはよぅ……早いな……」
「もまもーもおあいあふー」
「おはよー」
コーン入りのふわふわしたバンを頬張りつつ、言った。
「なんだか、顎がいたいんだが、寝違えたかなぁ……?」
「きっ、気のせい気のせい、気のせいだよ! ほら、早く食べないと出発できないよ!」
「ふーん、そうか。じゃ、食べるとするか。いただきます。」
「いただいてます。」
「それから、髪の毛が床に引きずってるが、大丈夫か?」
「……あ、うん、大丈夫だよ……」
「ま、マキの可愛らしさが倍増して良かったのだが……」
「ふょ! さっさと切るぞ! さっさとハサミを貸せっ!」
嫌です、と答えられたが、ほっこりと暖かい朝ごはんは始まったばかりだった。