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闇の中にて僕は輝く。  作者: udakuda
第三章 冒険は、始まらず。
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43 ☆  ーーγ δ

戦闘……ねぇ。

戦闘……かなぁ?

戦闘……難しいなぁ。


もうすぐ、テストだなぁ。

 某旅人アニメだと歌うのだろうか。

 そして、もし歌っているならば、僕とふょだろう。


 もちろん、そんな獣と魔物が行き交うフィールド上で歌う訳が無い。

 そいつらを集めたくないからだ。




 ガルルルルルル

 主に獣の咆哮が響き渡る。

 カサコソ、カササッ

 声を立てないのは大抵魔物。

 こちらの方が危険。

 ひざ丈の草は、素足の脛をちくちくと傷つけている。

 せめて、長ズボンがはきたい。

 「あっ、あっちの方に魔物がいますよー。」

 「おっ、いっちょ狩るかー。ついてこい、マキ!」

 「はーい!」

 アルサルが背中から緑色の大きな剣を鞘から抜く。

 日本だったら銃刀法で逮捕されるけど、あいにくここは異世界だ。

 僕も、かっこよく小剣を抜いてみた。

 ピッ。

 服に刃先が引っ掛かったが、破れなかった。

 失敗したな、と思いつつ、まずは一発〈ファイア〉をとばしましょうか。

 「アルサルー! 行っくよー!」

 「ほーい!」

 予想着弾点から、アルサルは10メートル下がる。

 「よーし、〈ファイア〉!!」


 ボッヒュウ!

 大きな火は灯り、20秒ぐらいすると、消えた。

 消えるのを確認する前に、僕は走り出す。

 狙うは中心地付近にいた狼。一応獣の範囲に入る。

 火傷を負っていて、身動きが取れない狼に僕の小剣を突き刺す。

 刺したのは、目。

 まだ、辺りに魔物や獣は残っている。

 止めは後でさす。

 心臓の位置がわからないからなんだけども。

 両目にその小剣を刺し、抜いて、いつでも走り出せるようひざをまげる。

 1、2、3……4匹か。

 まあ、まずまずだな。

 火傷なのは、1頭か。魔物はなし……ッと!


 「〈ウィンド〉!」

 行き先の2頭を風で足を取らせ、小剣で一頭の頭蓋骨を破壊する。

 残念ながら、これはスピードに乗っているからこそできる芸当だ。

 すぐに、手応えがなくなり、剣が前に進まなくなる。


 ガウルルルルルル……ガオッ!


 げ。

 3匹いっぺんに襲ってきた!

 ヤバイ。

 獣にそんな知能あると思わなかったし!


 バッ、と目の前に獣が飛び出してきた。

 とっさに、左手を出して胴を庇う。


 !

 い、いたい……

 でも、お腹に剣が刺さった!

 「アルサル! ヘルプ!」

 すぐに来てくれるといいんだけどな……

 この場は僕だけなんだから……


 とりあえず、少し下がって……

 狼を遠ざけて……

 「〈ウォーター〉……」

 いずこからか、水がたらいをひっくり返したように降ってきた。

 それは、僕の体を濡らすとともに、腕から流れ出す血が消えていく。

 よーし、やってやろうじゃないか。

 まだ、動ける3匹に立ち向かう。

 痛みも薄れたし!



 ザザザッ――――

 風が草を撫でていく。

 濡れていて、動きにくいけど、どってことない。

 

 まず、さっき刺した狼に向かう。

 体が以前より軽く感じる。

 ほら、もうこんな近くにいるよ。

 見失うなんて、ダメじゃないか。

 ジャンプすると1メートル近くは跳べて、怪我した狼の背に着地。

 狼はそのまま横倒しに倒れた。

 そして小剣を下構えにして、狼の胴体にあてて、おもいっきりふりかぶる。


 スパァッ……

 そんな音をたてて真っ二つに狼は分かれた。

 よしっ、やった!

 切断面からは、おびただしい量の血が飛び出ている。見ると、内臓や骨や筋肉がグロい感じで存在していた。

 しかし、それもすぐに光となって消えていった。


 うぷっ。

 さっきの画像が目に浮かぶ。

 吐きたいような、吐きたくないような、よくわからない気持ちになる。

 ところが、僕は最大の失態を犯してしまった。


 グワゥ、グワルルルルル!!!

 2匹とも、同時に襲いかかってきた!

 瞬間的に僕は本能にしたがって、頭をかかえてしゃがみこんだ。


 ―――――――――――――――――ッ!!

 今までと比べても、ハンパなく痛い。

 たっ、耐えることより、何か改善策を見つけなきゃ……!


 が、ぶちゅ……

 背中に鋭い痛みが走る。鋭い、鋭い――――

 「……ぐぅっ。」

 それを奥歯を噛み締めて耐える。それしか出来ない。

 いや、それしか出来ないなんてことあるか!

 諦めるな、僕。

 落ち着け、僕。

 獣なんだから、生き物なのだから、絶対弱点があるはず!

 魔法で対処できることがあるはず!

 火、水、風、土の中で獣に有効なのは……!

 火――――だ!

 ……火かぁ。

 焦げるのは……嫌だなぁ……。

 でも、背に腹は変えられぬってか!

 「〈ファイア〉……あちゃあたー!」

 あちっ、あちゃー!

 「〈ウォーター〉!」

 ザバァと水が降ってくる。

 よしっ、これで対等だ。

 怪我をしていない、狼2匹。怪我をしていない、僕。

 さあ、これで対等だ。

 走り出す。

 狼を同じような位置にかためる。

 対等なのは状態としては、だが。

 「数の分のハンデをもらうよ。〈クレイ〉」

 ドサドサドサドサドサドサ!

 大量の粒の小さな“砂”が落ちてきた。


 「死ぬのが本望? んな訳ない。」


 ふはは。

 そう笑って、また走り出す。

 「〈ウィンド〉」

 風に乗って、アリ地獄と化した狼の元へ行く。

 自由には操れないが、風速15メートル/秒で向かう。

 出ようともがく、狼の脳天に刺――――さらなかった。

 刺さったのは、柔らかい砂の上。

 うわっ。

 来た!!!

 2匹とも、苛ついていらっしゃるようで。

 ここは、退却をば……

 「〈ウィ……〉」

 ヤバイ。

 これすると、気絶する。

 ヤヴァイ。

 頑張れば、自然にMPが回復するだろうから、ここは一つ、逃げるという手を使おうか。


 「鬼さんこちら〜、手の鳴る方へ〜!」

 逃げるといったら、鬼ごっこでしょう。

 草原を全力で走る。

 グワッ! ギャルルルゥ!

 かなりの

 そして、狼の方がスピードが早い。

 し、か、しー!


 「ほうわっ!」

 予備動作なく、上に飛び上がった。

 狼は、足下を通り過ぎていった。


 このあと、どうするかなー、と考えていたとき、真紅の塊が近づいていることに気がついた。

 「アルサルー!」

 「おうっ!」

 豆粒ではなくとも、かなり小さかったアルサルが僕が着地する前にすぐそばを通り過ぎていった。

 ザシュ、ザシュ。

 重く、鈍い音が出ると同時に光は空へと昇っていった。




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