42 ☆ ーーγ δ
「おっ、どうだったんだ?」
アルサルが戻ってきた。
ふぅ、危ない危ない。【魔王への道端】についてのことが聴かれるとこだったよ。
「レベル9に上がってたよ!」
【魔王への道端】は隠していく方向で。
「れ、レベル9……強いな。」
「ん? どういう意味?」
「……どうも、こうも、俺がレベル17に達するのに2ヶ月掛かったんだぞ! ふざけんな!」
今にも殴りかかってきそうな剣幕で捲し立てた。
「い、いや、ふざけてないよ?」
「いんや、ふざけとる。俺だって、勇者特典でレベルが10%増しで上がりやすいんだぞ! それも俺の前世が頑張ってレベルを…………って! あっ! マキ! あの、缶バッヂ、何回着けた?」
「えっとぉ……」
もらった時から、ほぼ毎日付けていたんだよなぁ。遅刻も、あれ付けて走れば免れたし、スポーツテストの結果も力を抜いても良かったし。
もらった日は2月の中旬だったから、今は、変わってなければ7月の上旬で。毎日付けたと数えると……?
あれ、わかんないや。
落ち着いて、もう一度計算を……
アルサルが待ってるよね、早く計算しなきゃ。
えーと、あれ、いつもらったんだっけ? 2月26日? 違うわ。それは乃子と付き合い始めた日だ。えーっと……そうそう、2月の中旬だったな?えーっと、今は……
「今日、何日?」
「ん? 今日は水の暦のニ月目の第三日だよ?」
「ありがとう。」
えーと、今日が多分七月三日だとして、もらったのは、二月の……何日だったっけ?えーっと、えーと。
えーっと、えーと 何にしますかー?
えーっと、えーと 何にしますかー?
えーっと、えーと 何にしますかー?
えーっと、えーと 早くきめてくれー
たまご下さい たまごひーとーつー
……って! コンビニ歌うな!
そこ、脳内スタッフ! 脳内ソングをエンドレスでかけるな!
ふぅ、危ない危ない。
集中を乱すところだった。
えーっと、何を考えてたんだっけ?
……………………。
……………………?
……………………!
ありがとよ、脳内スタッフ!!
計算結果を教えてくれて!
「はい。取得経験値が207%増えます。」
言われたままに答えてみた。
「……207回も付けたのか…………。3倍、3倍、か……」
……落ち込ませる要因があったらしい。
「……3倍ってどういう意味?」
「ああ、レベルが207%、つまり人の3.07倍、レベルが上がるのが早いってことだよ。嗚呼、世界は広いなぁ……。」
「……でも、50レベルになったら、多分、上がらないんでしょ?」
「……まあ、そうだが、50レベルまではすっごい上がるんだぞ? 50レベルからも、普通には上がっていくんだから。ずりーな。チートだ、チート。」
「あっ、ゴメン……」
「ま、謝ることはない。……むしろ頑張れ。俺は勇者だから、魔王を倒しに行くんだけど、一緒に来るだろ?」
「う、うん……」
「本当に?
「うん!」
「ありがとな。ついて来てくれて。……パンも頼むな。」
「? ……パンって何に使うの?」
「一種のステータス上げ?」
「へー! すごいね!」
RPGとかで役に立つよね! 食べるとステータスが上がるやつ!
「マキも、戦闘には慣れただろ?」
「まだ、馴れてないけど……」
「大丈夫だ。次の街ぐらいだったら行ける。その間で戦闘に慣れればいいさ。じゃ、次の街に行こうか。ほら、行かないのか?」
草原の向こうを指さしながら、手をさしのべられる。
えっ……
「や、ちょっと急すぎないかな〜って思っただけだよ。」
「なら、大丈夫。物資は沢山調達してきた。5日分はある。これでOK?」
「心の準備が……!」
「今出来た。」
「マキナさんにあいさ……!」
「もう済ませた。のー、ぷろぶれむ。」
「あのピザがもう一度食べたい!」
「買ってある。」
……と言われても、アルサルはほとんど何も持っていない。
「何処に!」
「ここに。」
ブワサァーと広げた真っ赤なマントの中には、小さいくすんだ皮袋があった。
ピザなんて、1/4に折り畳まないと一枚も入らない程に。
「これのどこに入っていると言うのさ!」
ああ、もうファルツ村に帰りたい。だけど、道を知らないから帰れない〜♪
「ほら。」
「うわっ!」
本当にピザが出てきた。
まだ、若干温かそうな。
ジュルリ、よだれが出てきた。
「……食べていい?」
「ダメだ。これは今日の夕食だ。」
残念だ。
「……それって、四次元ポケット?」
あるなら欲しい。
「なにそれ?」
ポンコツ青狸なんて、知ってる訳ないよね。
「あっ、知らないか。それは、何?」
「これ? これは道具袋だよ。」
まんまだね。
「何でも入れれるの?」
「ああ。マキも冒険者になったら、もらえるぞ。」
冒険者って、冒険者ギルドに入ってる人だよね。
「やったあ!」
「次の街には冒険者ギルドがあるんだよな。そういや、マキ、お金返せよー?」
「わ、わかってるよ!」
「お金の切れ目は縁の切れ目、ですよ?」
いつの間にか僕の導きの石に戻って、いつの間にか出てきたふょが言った。
「それ、意味が違うから。」
はははと笑い声が広がる。
楽しい?
どうだろうか。
白い雲が太陽を横切っていった。
辺りが墨を引いたように暗くなった。
でも、すぐに後ろの方から明るく、日が差している。
地球に戻れる条件は、もしかしたら、“魔王を倒す”かもしれない。
――――だから、乃子。
待っててね?――――
◇◆◇◆◇◆
僕の、いや、“僕たち”の冒険は始まったばかりだぜ!!!
……なーんて言ってみたりしてみたかっただけだけど。
今日は主人公の誕生日(という設定)だったりします。
まだギリギリ小説内の時間の方が早いです。追い抜かされるのも時間の問題だこりゃ。
次回の更新は……土曜日にできるといいな!