38 ☆ ーーγ δ
語り部:ふょ
「ふ、ふふ……ふひょ?」
「ちーがーいーまーすー! ふょです。」
ワタシの名前を間違えるなんて、ダメですよ。何てったって、ワタシはピクシーなのですから。
「ふょちゃんかー(はーと)」
アルサルさん……というそうですね。
さっきから、発音練習していると思っていましたが、このためだったのですかー。のどがいがらっぽいのかと思ってましたー。
「ふょちゃんはピピ、ピクシー……な、なのかな?」
「はい、そうですよ♪」
ワタシは真輝と話がしたいのです。
「本当に! マジでっ! 本当に? うわー! 俺、勇者で本当に良かった〜!」
そんなのはどうでも良いですから。
ちっ、泣き出しましたか。面倒臭いですね。勇者なんて、さっさと役割を果たせばいいーんですよ。魔王を倒してめでたしめでたしでいいじゃないですか。早くワタシは真輝と話がしたいのです。
「あなた〜! パンが出来ましたわよ〜!」
また、厄介そうな者が出てきましたよ?
目が合った。
ピシッ――
空気が凍った――――
何この昼ドラよりは濃くはないけど、複雑な空気は!
しかも、ワタシが中心だなんて最悪です!
あ、真輝の目が、回ってる。
ふふ、おっかしー。
「かくかくしかじかでこうなりました。」
「ほうほう。こういうことがあったのね。」
何だろう、カクカクシカジカって。
カクカクシカジカーー? ……カクカク♪シカジカ♪四角いムーブ♪
あっ、これですかー。
カクカクシカジカは地球のCMソングという訳ですね。地球に出張へ行ったときに聞いたんですよ。
でも、何で地球のCMソングを歌うのでしょうか。
「ピクシーかぁ……。ふんっ、なによっ、私よりそのピクシーの方が好きな訳?」
いや、よっぽどあなたを溺愛していない限り、不可能ですよ。
「…………。」
アルサルは泣いています。
ワタシ、そんなに偉くないですよ?精々、髪の毛レベルですし。ワタシは堕フェアリーですからね。
「なによー!」
マキナが涙目で叫びまましたー!
まだ、アルサルは泣いているのです。
ワタシは、真輝と話がしたいだけですし。
「まあまあまあまあ、落ち着いて落ち着いて。」
真輝が助け船を出してきましたが――――
「黙「っていなさい。」れ」りなさい。」
うるさいです。
黙っとけです。
今から、女同士の醜い争いを繰り広げるつもりなので、真輝とアルサルはどっか行ってて下さい。
アルサル!
いいかげん、服の裾から手を放しなさい!
もう、充分でしょう!
動きにくいんです!
なんで、まだ話してくれないんですか?
真輝も部屋から出て行きませんし。
もう、しょうがないですね。
最終手段を使いましょう。
「情報の交差点――――!」
「?」
近くにいたアルサルはワタシが何か呟いて何故と思ったでしょう。
これは、ワタシの魔法……魔術? ……いえ、魔法ですね。
ああ、ワタシの体がだんだんと軽くなって来るのがわかるのです。
ほら、そこにはたくさんの式神が――――!
ワタシはそれを操ってアルサルと真輝の体に入り、少々血流を止め、二人の意識を奪い、ワタシにそれを運ばせました。
お分かりでしょうか?
ワタシの能力は増殖能力。ワタシの今の体重は、まだ2トンぐらい残っています。
さあ、始めましょう。
醜い醜い女の闘いを。
わからせてあげましょう。
人がワタシに逆らう愚かさを――――
…………そして、終わったら、この状況を引き起こした真輝に八つ当たりでもしようかしら?
ピクシーは幸せを運ぶ存在なんだとか。(ファルツ村の村長談)