表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の中にて僕は輝く。  作者: udakuda
第三章 冒険は、始まらず。
42/59

36 ☆  ーーγ δ

変態出没注意です。


……BLには絶対させません。

いや、させてたまるか!!

 「持って来ましたー!」

 ぜぃはぁと息を切らしながら持ってきた。

 高々、階段を登り降りするだけでこんなに息切れするとは思ってもなかった。

 運動不足だなあと思う。

 「どうぞ!」

 勇者とは違い、真っ白なそれを手渡した。

 「ほう……」

 感心されちゃったよ!

 「む。」

 困られちゃったね?

 「君の誕生日はいつだ?」

 「えっと、6月21日です。」

 「じゃあ、0621かな? ……あっ、開いた。」

 「どんなんでしたか?」

 「すごいな、君。」

 「なん――――」

 ですか? と続けようとしたが、止めた。

 アルサルの顔が急に強ばったからだ。

 目を上下に動かしていて、まるでゲームをしているよう。

 「君っ、“缶バッヂ”って物を持っているかい?」

 「あっ、はい。」

 渡す。

 ……渡した。


 その缶バッヂはアルサルの手に渡ったとたんにピシッとヒビが入り、崩れ落ちた。

 「あ…………」



 僕の頭にもヒビが入ったような気がして。


 頭の中が真っ白なぐらい考えられなくて。


 なんか自分の自分らしさが失ったようで。


 乃子とのなれそめも無かったかのように。


 やはり今の自分があるのはこのおかげで。


 しかし今日、それは壊れてしまったのだ。



 じゃあ、乃子との関係も全く同じように。


 ヒビが入って、壊れてしまうのだろうか。


 泣きたくなる。いや、泣きたい。泣こう。




 僕の目からは大量の涙が溢れ、僕は崩れ落ちた。

 「ちょっ、だ、だ大丈夫か!?」

 勇者と名乗る男は僕の背中をさすり始めた。

 うわーん、うわーんと子供みたいに泣いている僕。

 お前は僕のこと、なんにも分かってないって言いたいけど、アルサルの体温が背中から感じられて、なんだか落ち着く。

 お父さんみたい――――、会ったこともないのに、そう感じた。

 僕は思う存分アルサルの胸の中で、泣いた。




 ◇◆◇◆◇◆




 「落ち着いたかい?」

 「はい……」

 勇者さんに泣きついてしまった……

 乃子との関係はまだ壊れると言うわけではないし、もう壊れてしまったとも言えなくはない。

 つまり、これは只のきっかけ作りのとるに足らないモノだったのだ――――と割りきるしかない。

 しょうがない。

 壊れてしまったモノは元には戻らないんだから。


 「もう、大丈夫かい?」

 アルサルさんの声だ。

 「はい、大丈夫です。」

 「ごめんな、壊しちゃって。大切なモノだったんだろ?」

 「そうですけど……心配しないで下さい! 今、吹っ切れましたから。」

 「……ご、ごめんっ。本当にごめんな。…………言い訳みたいだけど呪いの品ってあったから……」

 「のろい……の……品?」

 「ああ、その缶バッヂはなんだ、呪いが掛かってたみたいなんだが……」

 「そうなんですか?」

 「多分、MPを無くす呪いだな。大丈夫か?体調は悪くないか?」

 「問題なしですよ。」

 「貰った人に、意地悪されなかったか?」

 「大丈夫でしたよ。何を心配しているんですか?」

 「いや、MPが0のひとは、普通は気絶するんだ。MPが0で普通に活動している人は、モンスターかアンデットなんだ。」

 「……あんでっと? 死なない人?」

 「いや、死んでから生き返った、そういう生物(・・)のことだ。」

 「へー、そーなんですかって、えーーーーー!! ってことは僕のことを“あんでっと”扱いしていたんですか?」

 「そーゆー訳じゃなくて、ねぇ。見るからにアンデットじゃないのはわかるけど。たまに、人里に降りてきて、悪さをするモンスターがいるんだよ。」

 「僕はモンスター扱いか……」

 「そういうことじゃないけど。ま、用心するに越したことはないってことさ。あっ、導きの石、見せてよ。」

 「あっ、はい。どうぞ。」

 床にいつの間にか落ちていたそれを拾う。

 「あれ、おかしいな……」

 「どうしたんですか?」

 「魔力を通しても画面がでない……」

 「どうしたんでしょう……」

 「ま、いっか。じゃあ、ヒメノくん、始めっから聞きたかったんだけど。」

 「あっ、はい。」

 「君、何歳?」


 …………。

 えーと、この方は何を仰っているんでしょうか?

 (スタッフ)「貴様は何歳か、ただそれだけだ。」

 な、なんか怖いやつキターー!


 そんなことじゃなくて、もっと行間を読んでよ!

 (スタッフ)「貴様は何歳か、ただそれだけを問うておる。」


 もっと的確で、明確な回答をっ!

 (スタッフ)「貴様は何歳か、ただそれだけを問うておるのだ。そんなのもわからんのか、バカモノ。」


 いいよ! もう! 強制消去発動っ!

 (スタッフ)「何度も同じ手に掛かるか。では、サラダバー!」


 アディオスと手を上げながら去った。


 むっかー!

 脳内消去かけたろかっ!


 「? 教えたくないのかい?」

 その問答に掛かった時間、僅か7,56秒。

 普通は怪訝がる。が、僕は声を掛けられて慌てた。

 「14歳ですっ!」

 答えてしまった。


 「そォかあ……」

 ちょっ、目が、目が座ってらっしゃいますっ!

 「幼児ーーーー!!!」

 叫びました。

 ……。

 「幼児じゃありませんって!」

 「いや、幼児だね。俺、わかるから。」

 ……どこが?

 「こことかっ!」

 うわっ!

 や、やめろー!

 初対面でうなじを嗅ぐなぁー!!

 恍惚とした表情を浮かべるなぁー!!

 「いいにおい…♭」

 …とか、言うなー!!

 「やっ、やめろーー!」

 彼を振り払う。どさくさに紛れて蹴る。

 「いたいなぁ。止めてくれよ。俺と君の仲だろう?」

 「今日会ったばかりですが、なにか?」

 「マキナさんに注文をしたじゃないか。俺は客だよ。」

 「いらっしゃいませー。さっさと買って、おいとまなさいませー。(棒読み)」

 「や、君は俺の胸の中で泣いただろ?それで、俺と君との仲が無いとは言い切れないんだ!」

 「……それは、不可抗力なんです!」

 「導きの石、見ていい?」

 「見れなかったんじゃないですか?」

 「あっ、そうだった。じゃ、ヒメノ。導きの石を握って。」

 「……はい。」

 「そして自分の生命力みたいなのをそこに流す!」

 「むぎー、ふむむむむ……うーー!」

 「只、力むんじゃなくて、もっと自分の生命力を感じ! 自分の可能性を信じて!」

 「うぐー、ぐぎぎがー、むうー、うごー!」

 背中の方からアルサルの声が聞こえる。

 「もっとこう、なんかどうとか! こう、なんか優しく!」

 「うがーー、ふぬぬ……? 優しく? こう?」

 撫でる。

 (真輝の導きの石)「…………………………………………………。」

 完全沈黙。

 「ダメかぁ……」

 ため息をついた。

 が、その瞬間!

 導きの石が煌めいた。

 そこから青くて黄色くて黒い塊が現れた。

 「呼ばれず、飛び出てジャジャジャジャジャーン! 始めましてー! ふょです! よろしくお願いします〜! わたしは、ナビゲーションを……って、あれ!? 勇者さんがいる? あれれ? もしかして、わたし不要? うわーん、そんなの嫌だー! ご主人様〜、わたしを捨てないで下さいまし?」

 身振り手振りを付けながら、自己紹介をする謎の小妖精。羽がついている。

 アルサルに助けを求めようと視線を向けても、目をキラキラさせているだけ。


 お前は誰だ!

 どっから出てきた!

 ついでに、アルサル! 説明をしてくれっ!


 聞きたいこと、認めたくないことが、とにかくたくさんある。が、まず、頭を冷やそうか。



 Are you(準備は) Ready(いいかい)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ