33 ☆ ーーγ δ
語り部:姫野 真輝
おはよう、みんな。
みんなのアイドルの真輝くんが起きてきたよ?
あっ、いたっ!
やっ、やめてよっ!
消しゴムならまだいいけど、辞書はー!
まあ、消しゴムもいやだけど!
わかったわかった!
僕はみんなのアイドルなんかじゃないから! これでいい?
ふぅ……
収まった……
……たんこぶできちゃった。
みんなのアイド…いや! なんでもありませんって!
ちょっ、辞書を構えるのは止めてくださいって!
あーーーーーーーーーーーーー!
当たるっ、当たる!
ボグッ!
重鈍器の直撃を受け、僕の意識はあっさりと闇の中に沈んだ。
◇◆◇◆◇◆
(スタッフ)「あらっ? 真輝君の意識が無くなりましたわね。」
(スタッフ)「そーだな。」
(スタッフ)「……そういえば、さっき、真輝君は重鈍器って言っていたけれど。」
(スタッフ)「うん、確かに言っていたね。」
(スタッフ)「重鈍器って言葉はないと思いますの。」
(スタッフ)「ん? 何で?」
(スタッフ)「重鈍器があるなら、軽鈍器もありますの? 軽鈍器って何よ、と思うんですの。」
(スタッフ)「そうだよね。そもそも、鈍器って棍棒とか殴る武器だよな?」
(スタッフ)「そう存じ上げておりますが……」
(スタッフ)「辞書を重鈍器と定義付けると、軽鈍器って……傘の柄とか?」
(スタッフ)「そのぐらいしか考えられませんものね……。“軽”繋がりで軽自動車を軽鈍器と呼ぶのはちょっと…ですし。」
(スタッフ)「だよな。だったら、“どんき”繋がりでドンキってどうだろう?」
(スタッフ)「……でも、それは軽鈍器も重鈍器も関係ないと思いますの?」
(スタッフ)「ドンキホーテのキャラクターにド〇ペンくんってのがいるだろ?」
(スタッフ)「ええ、確かに居ますね。真輝君がドンペリと間違えたことは深く記憶に残っていますわ。」
(スタッフ)「そうだよな。大声で『ドンペリ!!』なんて叫んだときは笑いが止まらなかったな。」
(スタッフ)「本当にそうですわ。何でワタクシ、真輝君の元で働いているのでしょうか……」
(スタッフ)「おおっ? ちょいちょい、ストップストップ!」
(スタッフ)「いいんですの。止めないでくださいまし。真輝君に暇を頂いてきます。」
(スタッフ)「っ! お前、知ってるか?真輝以外に再就職先なんてないんだぞ? 脳内スタッフを雇ってるそんな変人なんていないんだぞ? 辞めたら即、死亡だぞ?」
(スタッフ)「うっ、わっわかりましたわ! 辞めるのは我慢しますが! ちょっとずつちょっかいを掛けていきますわ!」
(スタッフ)「まあ、ほどほどに、な。話しは戻るけど、さっきのドン〇ンくんでえーいって殴ったら、それはもう軽鈍器じゃねぇか?」
(スタッフ)「成る程……ドンペ〇くんは、辞書よりは軽そうですものね。以前、〇ンペンくんなるものを見てみたのですが、大きい割りに軽かったですもの。ふっかふかで気持ち良かったですわ。」
(スタッフ)「ああ。あれは絶対軽鈍器だな。」
(スタッフ)「「と、いう訳で、軽鈍器はド〇ペンくんです(わ)!!」」
「うるせー! 黙れー! 人の安眠を妨げるなー!」
(スタッフ)「「じゃあ《では》、お聞きしますが“重鈍器”とは何ですか?」」
「分かったよ! 僕が間違ってた! 許してくれ!」
(スタッフ)「分かればいいんですの。」
「わぁ、ありがとう! じゃあ、おやすみ〜……」
(スタッフ)「……マキナさんが待ってるから、はよ起きろー!」
「UGYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ええ、大変悪い目覚めでした。
◇◆◇◆◇◆
カランコロ〜ン♪
「いらっしゃいませー!」
勤務中でございます。
いらっしゃったのは、露店商のお姉さん。
普通の体型の彼女で、好きなのはメロンパン。
「じゃあこれ、お願いねー。」
「かしこまりました。」
レジに立ち、パンの値段を紙に書き込む。
メロンパン 1個 200R
特上素材のチーズピザ 2個 900R
ハム&卵のサンドウィッチ 1個 350R
「えっと……、1450Rですね。」
「あっちゃー、1000R越えちゃったかー。」
「すっ、すみません!」
「いーの、いーの! この、特上素材のチーズピザが美味しいからね?」
「なんか、すみません……。」
「まあ、もうちょっと安くならないかなぁなんて思っているけど、これ以上値段を下げると質落ちるよね。」
「そうですね…」
「まあ、マキはただ働いてればいいからね? じゃ、1450R払ったよー!」
「ありがとうございました〜!」
こんな感じでほぼ1ヶ月過ごしてきた訳だ。
看板娘として。
ああ。
自分が娘じゃないことはわかっているさ。
でも、みんなが呼ぶうちに自分も看板娘なんじゃないかと思って、つい認めちゃったんだ。
もうすぐ、約束の期日の1ヶ月が過ぎるけど、これからどうしようか?
マキナさんに無理いって雇ってもらうのもどうかと思うし、もうすぐ姪が来るって言ってたから僕はお役ごめんだろう。
……いざとなったら、冒険者になって暮らそうか。
……乃子、残念ながら僕、まだ帰れそうにないや。
姫野 真輝
Lv 50(これ以上上がりません)
HP 541
MP 0(呪い)
素早さ 880
攻撃 141
防御 97
幸運 527
魔法 999
賢さ 346
スキル 【悪の手先】 【尋常でない育毛】 【パン屋の息子】
状態 呪い
前途多難
装備 フリルのカチューシャ
フリルのエプロン
皮のブーツ
果物ナイフ
【エビルデビル】の缶バッヂ(呪われています)