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闇の中にて僕は輝く。  作者: udakuda
第三章 冒険は、始まらず。
38/59

32 ☆  ーーγ δ

語り部:姫野 真輝

 「ふぅ、やっと終わった……」

 マキナお姉さん(・・・・)のパシリにこき使われ、やっとこさ休めたと思ったのが今さっき、7時過ぎ。もちろん夜の。

 三食昼寝付きとか言ってたけど、“看板ニ偽リアリ”だな。

 朝4時に起きて、8時に昼寝。9時には起きてパンを焼いたり売ったり作ったり。

 ノンストップで働いてます。そりゃ、もう馬車馬のように。

 今日の夕御飯はピザでした。

 来たときにも、食べたけど香りがすごい。

 美味しそうな香りがぷんぷんする。

 もっちりふんわりしたパン生地に独特の香りのよく伸びるチーズ。それをたっぷり使ったので、パンとチーズだけでも美味しいのに、具材もたくさんのっていた。例えば、ハム。普通のやつだと言っていたけど、美味しい。少しだけしょっぱくて、でも旨味がある。燻製の匂いはきつくなくて、柔らかい。こんな美味しいハムはお歳暮でも貰ったことがない。更に菜っ葉。名前は聞くのを忘れたが、美味しい。単体で食べると若干苦味があるのだが、ピザのチーズのクリーミーさとハムの濃厚さが合わさると、ものすごくうまくなる。まるで旨味の相乗効果だ!とまんまなことを口走った。

 「おいしいかい?」

 マキナが尋ねてきた。

 「はい、とっても!」

 「うん、よかった。これ、今度商品化しようと思ってるんだ!」

 「…これを切って販売するんですか?」

 「うん、まあ。そんな感じかな?」

 「コスパはどうなんですか?」

 「コスパ?何それ。“ぱ”を茶漉しで濾す……の?」

 「あっ、違います。コストパフォーマンスです。赤字になりませんか?売れる値段設定にしてますか?」

 「うーん、500ルナぐらいかなぁ?」

 「高っ!」

 「まあ、高いよね……」

 「でも、美味しいから高くつくのは仕方がないですよね。」

 「まあ、ね。チーズもハムもレベルが高いやつ使ってるし、妥協は出来ないねぇ。」

 「じゃあ、少しちっさくしたらどうですか?」

 「うーん、1つだけ小さいのもなぁ。やっぱり、質より量の人は多いからねぇ。美味しいは美味しいんだけど……」

 「じゃあ、一枚一枚焼くのはどうですか?小さく作れば、具材の量も減らせるかも!」

 「小さくかぁ……うーん。まあ、考えてみるよ。たくさん食べた?」

 「うん!」



 とまあ、こんなことがあった訳だ。

 まあ、売れば売れるだろうけど、さ。

 でも、こんなことは僕が考えることじゃない。マキナさんが考えれば良いこと。僕はあくまで働き手、労働者なのだからそんなことは考えなくてもな…と思う。

 おっと、もうこんな時間だ。

 一番風呂に入らせてもらってるから、急がなきゃ。

 「早く、出して下さい。」

 ?

 どこから、聞こえたのだろう?

 マキナさんの声じゃなかった。

 女の声だった。多分。

 外からではない。



 ……空耳か。


 そう思って、僕は風呂に入った。




 ◇◆◇◆◇◆




 お風呂は魔法を使って沸かしているらしい。

 火の魔法。

 持続時間は1時間。

 水を温めてお湯にする。

 だんだん冷めていって30分ぐらいたつと、若干冷たくなってくる。

 魔法って便利だね!

 僕には残念ながらいわゆるMPというものがない。

 から、魔法は使えない。

 僕も魔法使いたかったなぁ……。

 …………。

 ふわぁ…

 眠いなぁ。




◇◆◇◆◇◆




 カッポーーーン……

 「カッポーーーギ!」

 くわんくわんと音がひびく。

 カッポーンと割烹着ってなんかにてるだろ?


 まあ、むさくさ苦しい男のお風呂シーンなんて、見たくもないだろうから、それは省略して。

 そういえば。

 マキナにこの世界の摂理について聞いた。

 この星は魔物が住み着いていて、魔王が居るらしい。

 それを倒すために冒険者ギルドがあるのだが、いまだ倒したことはないらしい。

 ギルドには、冒険者、商業、鍛冶、魔法使い、薬師…などがあるらしく、一つに入れば身分証明が出来るらしい。

 マキナもギルドに入ってるとか。

 通貨の単位はルナで、価値は日本と同じみたいだ。

 文明レベルはちょうど中世ヨーロッパより少し進んだ状態だ。魔法のお陰でかなり文明の底上げがされているようだ。

 宗教はキリスト教チックなレサト教。その開祖のレサト様は太陽と月を産んだそうな。

 暦は土、火、水、風で、それぞれ冬、春、夏、秋だそうだ。

 だいたい1年が360にちで、90日で季節が変わるらしい。

 気候は日本と同じように、春夏秋冬がはっきりしているらしい。

 それから、言語は自動翻訳されるそうだ。ただし、その世界にあるものでないと翻訳はされない。略語も然り。

 そのくらいか。

 ああ、もう一つ。

 月は青色の月と赤色の月があって、それぞれ、アムピオン、ゼトスというらしい。

 今日は15日。

 この暦は太陰暦に似ていて、青色の月に合わせているっぽい。二つの月が満月のとき、お正月なんだとか。

 空を見上げると、東の空に満月が、西の空には三日月が、その間には大量の星々が自己主張していた。

 黄金(こがね)色に輝く月はないっことは、乃子がいないということで、やっぱりここは異世界なんだなぁと思う。

 手を動かすとザパァと水の動く音がして、湯けむりが立ち上る。

 乃子……

 かわいらしい笑顔が思い出される。

 ――――――――っ!

 自分の不甲斐なさがあまりにも目についた。



 …………。

 涙が溢れて来たが、それはお風呂の水でごまかした。


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