31 ☆ ーーγ δ
語り部:姫野 真輝
「じゃあ、1の粉と2の粉3の粉をカップ2杯と、塩をさじ2杯、膨らみの粉を4さじ入れて? それぞれにカップとか付いているから、混ぜないように。」
「はい!わかりました!」
「じゃ、マキナはオーブンでも用意しようかな~♪」
るんるんでここから出ていった。
「1の粉? どこ? ……あっ、ここか。」
ここはパン屋のマキナ……あれ?
マキナのパン屋の厨房だ。
ああ。
Now, I’m baking!
そうですよ。
パンを製作中でござい。
……えっと、2の粉はっと。
これかな?
……真っ青だった。
「何これ!」
思わず叫んだ。
何じゃこりゃ?
その青さは、そう。まるでトルコ石のよう。空気の綺麗な山頂の雲のない空の色。亜熱帯の海の浅瀬の沢山魚が泳いでいそうで綺麗な海の色のような……?
これ……食べていいのかな?
なんだろな。
まあ、あとで聞けばいっか。
「えーっと、3の粉はっと。」
これだな。
袋にでっかく3と書かれている。
茶色の袋だ。
……そういえば、何で分かるんだろ?言葉も通じるし、数字とはいえ、文字も分かる。
理解可能だ。
ここは地球?
でも、門番さんは異世界だって言っていたし。
うーあー!
わかんねー……
頭がぐるぐるする~
「マキ?」
マキナおばさんの声だ。
「まだ終わってないの?」
言葉の槍が心にグサッと刺さる。
「あんた、やること遅いね。」
刺さった槍でマキナは傷口を広げてくる。
ぐはぁっ!
“ヒメノ マキに 100の ダメージ!”
「ぐはぁっ!」
「? 大丈夫……だね! 早く準備しなさいよ!」
「……あの!」
「ん? 何だい?」
「この2の粉って食べられるんですか?」
「食べれるよ。これがこのパンの胆なんだからね! さあ、さっさと用意して! 日が暮れちゃうぞ?」
「はっ、はい!」
◇◆◇◆◇◆
っと、2杯と2杯と……4杯か。
終わったー!
「じゃあ、それを混ぜて。」
いつ来た!?
「はーい。」
と言いつつも、返事をする僕。
「伸ばさない!」
「はいっ!」
「よしっ!」
「わかりました!」
「よろしい!」
「わかりましたでふ!」
噛んじゃった。
えへ。
「わかったから……」
エンドレスにはならなかったね!
実はできる限りやりたかったんだけどね!
「やりなさいよ。」
「はっ!」
ええ。
取り掛かりますとも。
まーぜーてー…
「終わりました♪」
「じゃあ次はこの白っぽい液体をカップ2杯、ああ、甘いの好き?」
「えっ、はい、好きです!」
「ん。じゃあ、これを4杯入れなさい。」
「わかりました。」
「あと……まあ、良いわ。マキナはアップルパイでも作ろうかな。ねぇ! 何が食べたい?」
「何としてですか?」
「おやつか夕飯!」
「何でもいいですよ。」
「じゃあ、ピザに決定!」
「な、何で!? さっきオートミール作ろっとっておっしゃってたじゃないですか!」
「夕御飯には合わないかなと思っただけだよ! 別にマキがいいなら、オートミールでいいんだよ!」
「じゃあ、ピザでお願いします。」
オートミールってイギリスでは朝食として食べるってどこかで聞いたことがあるような気がする。
「じゃあ?」
「ピザでお願いします!」
「よろしい。終わったら呼んでね! ここら辺にいるから!」
よーし、頑張っちゃうからねー……なんて声が聞こえた。
マキナおばさん、もう終わりました……次は何をすればいいでしょうか?
◇◆◇◆◇◆
「じゃーあー、混ぜた粉に、さっきの白い液体ぶっかけてー!」
「かしこまりましたー!」
「次はー、混ぜろー! 捏ねるなよー!」
「了解ですー!」
「終わったかー?」
「はい!」
「じゃ、1の粉を少量付けて、形整えろー! 丸だぁー!」
「ラジャー!」
「パンに十字に包丁で切れー!」
「終わりました!」
「よーし、じゃあ、待ってろ!」
マキナのすごいところは、あれだけ言っていても、手は止めずにピザを作っていたことだ。……でも、そんなに食べれないよ……
◇◆◇◆◇◆
「30分から40分ぐらいオーブンで焼くよ!」
オーブンはオーブンでも……竈だった。
イメージとしては、石竈で焼く、ピザの竈みたいな感じ。
「『ファイヤー』」
ぼふっ!
ちょっとした爆発音がでながらも、火が――――付いた。
!!!
何あれ!
魔法?!
Magic?
「……それ、何ですか?」
「ん? 魔法だよ。」
「魔法!」
――魔法。
それは、誰もが一度は憧れるモノ。
ファンタジー世界の産物のそれ。
それを使う人は地球には居なかった。
出来なかった。
……はず。
なのに。なのに!
出来る……人がいる。
魔法。
それは、幻のモノ。
…………。
……………………!
…………………………………!?
ここは……異世界?
ここは、地球じゃない!?
何で!
どうして!!
何が理由で!!!
……僕はここにいる?
心拍数が急上昇して、脳みそに血が大量に巡りだす。
耳にはドクッドクッと血流の音が聞こえるだけで、何も聞こえない。
呼吸は早く、浅くなる。
息苦しくて、胸を押さえた。
頭の中には“異世界”という文字が楽しそうに躍っている。
だんだん頭の中が暗くなっていく。
呼吸は早く早くなっていく。
ツツッ――と背中に汗が流れた。
ここはどこ?僕は誰?
僕は僕だから僕なのであって、ここはここであるからここである。
どこという場所は存在しないし、僕と言う人はたくさんいる。
だから、ここはどこでもなくて、僕は僕でない?
いや、そんなはずはない。
僕は僕だから僕なのであって、ここはここであるからここである。どこという場所は存在しないし、僕と言う人はたくさんいる。だから、ここはどこでもなくて、僕は僕でない――――?
僕は生きていなくて、井戸の中で頭打って死んでたのか!?
……いやいや。
ふるふるっと頭を振る。
落ち着け、僕。
もしかしたら、これは夢だ。
いや、絶対夢だ!
むにゅり。
ほっぺたを引っ張ってみる。
「痛っ!」
……これは夢ではないらしい。
もしこれが夢だったら、起きたときにはベッドの上で乃子が心配そうに見ていた、だとかだったのかなと思ってみたり。
「大丈夫かい?」
マキナが問いかけてくる。
ああ。
これは、現実だ。
残念ながら。
そう。
さっき付けた炎が出す熱が僕の頬を焦がし、ちゃんと竈からはパンの甘い匂いがする。
「はい、大丈夫です。」
ここは異世界なのだと、
「なら良かった。さっき、パンを入れたからね! 火が消えたら、取り出して、そこの濡れ布巾を掛けて冷まして! 人肌に冷めたら呼んでね!
一緒に食べるよ!」
悟った。
「わかりました。」
「どうしたの?元気ないね。」
「あの、ここどこですか?」
「ファルツ村、マキナのパン屋だよ?」
「国は?」
「ユトゥルナだけど……亡命者?」
「……世界は。」
ああ、なるほどという顔をして、
「第3691世界、ILLNISHだよ。異世界から、来たんだね。よろしく、マキ。」
「こちらこそ。」
こうして、僕の異世界物語は始まった。
第二章終わりました!
読んで下さり、ありがとうございます!
次話から、第三章に入る訳ですが、ストックがほとんどないので、週一投稿にさせていただきます。
次話は今週土曜日に、ストックができ次第毎日にさせていただきます。
……と言っても、毎日はだいぶストックをためなきゃですが……
ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!
変態を描いていたら、性格が変態になった 煮込み人間 でした。