03 ☆ α β γ δ
語り部:竹村 乃子
時は過ぎて5月になりました。
入学時は桜はピンク色をしていましたが、もう新緑の緑が青々と繁っています。
しかし、いまだに私に告白してくるお馬鹿さんがいるのです。
断った数は数知れず、いまだ告白してくる輩です。
総勢、5人の人達です。
・石田 作造
・倉本 勇人
・阿部 晴明
・大友 みゆき
・磯野 鯖人
の5人が意固地な人達です。
他の人々はなんとか諦めてくれました。
彼らは毎日告白してきて、休む隙もないという感じです。
もう、告白ではなくて、根比べのようにも思えますが?
そして、私はこの状況を打破するため、このような提案をしました。
「私の気に入るプレゼントが有ったら、付き合います。結婚を考えてもいいでしょう。期限は無期限です。」
そろそろ、うざったいなーと思いましたので。
諦める理由を作るため。
#
あっ、家に着いちゃった。
ごめんね、また、明日ね。
えっ?家に入りたい?
ごめんね、それは駄目なんだ。霊的な物や妖的な物は弾かれちゃうから。
うん。
また、明日ね!
◇◆◇◆◇◆
あら?
朝も?
いいわよ。
今は車で登校していないのかって?してないわよ。
運動不足になるじゃないの。
何できつい口調なのか?分かってないわねー。
私は低血圧なの!
さっさと語るわよ。
#
最初に持って来たのは石田作造くんでした。
普通の爽やかーな少年?の彼です。2本のアホ毛が人気です。
私があの事を口走った次の日、当に次の日、彼は大きなプレゼントボックスを携えて現れたのでした。
あたかも、とっても自信有ります!な顔をしています。
まあ、多分無理なんだろうなとは思いますが。
「開けていいかしら?」
笑顔の首肯が返ってきました。
リボンをシュルルッとといて、箱を開けます。
プワワーンと辺りに甘い甘ーい匂いが広がります。
ぐきゅっとお腹が鳴ったのは秘密ですが。
パカッと開けると
“LOVE”
“TO乃子 FROM作造”
白い文字で描かれていました。
ええ、チョコレートです。
甘そうなミルクチョコレートに白いホワイトチョコレートで文字が描かれています。
チョコレートですか。
バレンタインに愛の告白として女の子から男の子に贈るのは日本の風習で、外国は日頃の感謝として贈りますが。
もちろん、例外もありますよ。
しかし、せめてバレンタインに欲しかったです。
うん。
ふたを閉めてリボンを元に戻す。
みんなが固唾を飲んで見守っているのをひしひしと感じます。
「ごめんなさい。」
あちゃーという空気を感じます。
「基準はとある理由で言えませんが、その基準から大分かけ離れています。ごめんなさい。仲良くしましょう。」
一瞬の間があって、
「うん……判ったよ。」
涙目になって教室から出ていく彼。
とっても自信有ります顔が見るも無惨に消え去ってしまいました。
だから、嫌なんですよね。告白を断るのは。
本当に、止めて欲しいです。
◇◆◇◆◇◆
今日は私の誕生日、9月15日です。
はい。
こちら、まず1人来てくれました。
倉本勇人くんです。
彼はかなりのナルシストらしく、オールバックです。整髪料は校則で禁止されているので、水でしていると風の噂で聞きました。
また、彼の家はそれなりの貴族の血筋でお金持ちらしく、バリバリの政略結婚感が否めません。
「開けてもよろしいですか?」
「気に入って頂けたら幸いです。」
食べようと思ったら、一口で食べれちゃいそうな大きさ。
まるで、この感じは……
指環だった。
私が箱を開けると同時にこうのたまひました。
「結婚してくださいっ!」
「嫌です。」
即答です。
即答します。
嫌なんですよね、本当に。お金に任せたようなことをする人は。
まあ私、成金の娘ですがね。
「ごめんなさい。これからも仲良くしましょう(棒読み)。」
「なっ、何で駄目だったんだよー?」
「お金は全てではありませんから。」
きっぱりと凛とした態度で言い放ちます。
「くっ…」
彼は覚えてろ!と捨て台詞を言って立ち去りました。
何を覚えてろなんでしょうか。わかりません。
まあ、あと3人です。
今の時点でかなり疲れて居ますが。
本当に、大丈夫でしょうか?
#
妖精さん?
学校に着きましたよ?
えっ?今は凄く感じが良い?
いつもよ、い・つ・も。
じゃあね。
◇◆◇◆◇◆
じゃぱにーず。
日本語を英語で言うとこうなる。
でも、日本語を日本語で言ったら日本語だ。
またまた、英国人は英語を話すけど、英語を話す人が皆、英国人かと言われたらそうではない。
キツツキは上から読んでも下から読んでもキツツキだが、上下逆さまのキツツキは見たことがない。
太陽は動いて見えるけれど、実は私たちの方が動いている。
これらは簡単な言葉遊びかも知れない。
でも、これは人間の本質を少なからずは覗き見する。
人間に出来ることは―
―少ししかない。
#
まだまだ今日は私の誕生日です。
三時間目の放課に彼が訪れました。
阿部晴明くん、珍しい白髪・天然パーマの人です。
彼はまあ、なんというか……スゴい人ですね。
言葉に出すのが憚られるぐらいに。
かなりスゴいですね……。
…………。
彼の説明はもうやめです。
「こんにちは。何用でしょうか?」
「告白しに来たの〜」
「あら、そうですか。」
「うん。出来れば受け取って欲しいかも?」
「はい、分かりました。」
こいつ、苦手!
「これからもおねがいします〜。」
取り出したのは中ぐらいの、強いて言うならニンテンドーDSのソフトのケースの大きさぐらい。高さも同じぐらい。
「開けますね。」
「どうぞどうぞ〜。」
それが嫌なのよ。
それはともかく。
開けた。
うん?
うん。
…………。
「大丈夫〜?」
「うっぅぅぅ……」
「お腹痛いの?」
「…………(プルプル震え中)。」
「あっ、もしかしてOK?」
「んなわけないでしょう!」
ばっちーーーーーーん!!
私の平手打ちが変態の頬に触れて弾かれる。
きっと、真っ赤な紅葉が出来るだろう。
「バカーーーー!」
といい放ち、逃げた。
変態とは聞いていたけど、ここまでとは思わなかったわ。
まだ、付き合ってない女の子にあの…えっエッチい下、下着をプレゼントするなんて、信じられない!やっぱりあいつの頭の中はお花畑なんだわ!
トイレの個室の中で思います。
……この、告白騒動で何か良いことがあったかしら?
いいえ。良かったことなんて1つもない。
私は自問自答します。
先刻のことで、心に傷を負ったけれど慰めてくれる友達もいません。
私は竹村乃子だから、強くなければいけません。
友達ともつるまずに、孤高の一人に成れるように、頑張らなくては……
トイレから出ます。
新しい、竹村乃子にふさわしい仮面を着けて……