22 ☆ ーβ γ δ
語り部:竹村 乃子
「乃子様、乃子様!」
「なーに、田中?」
「部下が見つけたようですが、逃げられました。」
「当たり前よ。どうせ笛とか吹いたんでしょ?捕まるものも捕まらないわよ。」
「はい、確かにそうですが……」
「じゃあ、今度はもっと上手くやりなさい?」
「でも、ですね…。」
「でも。」
「はい?」
「その言葉によって人は妥協する。」
「はぁ。」
「つまりは、竹村財閥の人間はそんな言葉を吐いちゃいけないのよ。」
「わ、わかりました。」
「じゃあ、始めて頂戴。」
「あ、あの、少し良いですか?」
「? 何よ?」
「先刻、発見した姫野真輝が…いえ、真輝様の様子がおかしかったのですが…。」
「何よそれっ!言ってなかったじゃない!」
「すみません。」
「で?」
「発見したとき、靴を脱ぎ、それを転がしていました。」
「それで?」
「笛を吹いたら、塀の上に飛び乗り、そこから屋根に移り、どこかに行ってしまいました。さしずめ、猫のように。」
「分かったわ。私も本格的に探すわ。田中、車を出して。居そうなところを探していくわよ。」
「かしこまりました。」
「急いで!」
「はいっ!」