19 ☆ ーβ γ δ
語り部:姫野 真輝
お母さんにテーブルマナーを教えてもらってそれなりにはなりました。
背広なんて洒落たものはないから学ランで行きます。
ういろうを手土産として持ちました。
ういろうは小学校で食べたやつの方が美味しいです。
身支度は完璧です。さあ、出発しましょう!
……一人ぼっちで。
◇◆◇◆◇◆
PM.1:45
竹村家の門の前に着きました。
広いです。
本当に広いです。
でら広いです。
どのぐらい広いかというと、門から塀の切れ目が判らないぐらいです。
広いです。
広いです。
ヒロシ……じゃない!
……何でヒロシと広いを間違えたかなぁ?
アホだから?
うん。そうに違いない。
そんなお馬鹿は死んだ方がましだ。
じゃあ、今すぐ死のう。
思い残したことは……ある。やっぱ、やめた。
僕が死んだら乃子が悲しむだろうに。
付き合い始めたばっかなのに、相手が死んだら悲しすぎるでしょ。
……。
……。
………。
ふわぁー…、眠いなぁ。
………。
…………?
ん?
あれ?
私は誰?ここはどこ?
私は何のためにここにいる?
この何かでっかい木の門は何?
何のため?
何のため?
て言うか私、何のためにここにいるんだろ?
◇◆◇◆◇◆
謎の大きな門の前に座って考えていたところ、急に門が開いた。
びっくりしてる間に背中は門から離れ、後ろに移動していた重心でコロンって一回りした。
そしてバタムッと門が閉められた。
寝っ転がる僕にかかる二つの影、五十歳ぐらいのおじさんと年若い少女が見下ろしていた。
「あなたたち、誰ですか?」
そう言わずにはいられない。
少女は悲しそうな顔をした。口角は下に下がり涙で目が潤んで、でも正直言って可愛い。
抱き締めたくなるような可愛らしさ。
でも、誰?
そして僕は誰?
「……乃子の名前も覚えていないのかい?そんな奴には乃子をあげられないなぁ。」
乃子?
「まーくん、大丈夫?」
まーくん?
これが僕の名前?
〇〇〇まーくん?
なにその名前。
「あなた、誰ですか…?ここはどこですか?」
「………。」
「ワシは世界の竹村財閥の会長だが?ここはワシの家だ。」
「おっ、お父様…!」
「そ、そんな畏れ多いところにいるなんてっ!あっ、ありがとうございましたっ!さささようならっ!」
ドォゥァーー
ダッシュで門から出て、右に曲がった。