18 ☆ ーβ γ δ
語り部:姫野 真輝
金曜日の午後、授業が全て終わりました。
これで、今週は終わりです。
あっ、でも、日曜日には乃子のお父様に会わなければなりません。
億劫です。
午後二時に竹村家に集合って言ってたから、もしかしたら御飯をいただくかもしれないなぁ。
お母さんにそういうマナーを学ぼうと思います。
まだ、竹村乃子と付き合ってるとは言ってないから、少し驚くかもしれません。
うーむ、やっぱり億劫です。
PM.10:00
「ただいまー。」
お母さんが帰ってきました。
お仕事お疲れ様ですと思いつつ、
「お母さん、少しお願いがあるんだけど……」
「ん?何?」
「テーブルマナーを教えて欲しいんだ。」
「いいけど、何で?」
「彼女の家に招かれたんだ。」
「えっ?あんた彼女いたの?」
「う、うん…」
「誰?誰なの?」
「えっとね、……竹村乃」
「えっ!あの竹村財閥の竹村?」
「うん…。」
「すごいじゃない!玉の輿じゃないの。」
「まあね、乃子ちゃんは一人っ子だから玉の輿と言えなくもないけどさ。玉の輿は女の人が乗るものでしょ?」
「まあ、いいんじゃない?あんた女の子っぽいし。」
「何、人が気にしてることをグサッとしてるんだっ!」
「幸せに苦痛は憑き物よ。」
ヒューどろどろ~、とお化けの振りをする。
「憑いてたら怖いよっ!」
「それもそうね。それより、テーブルマナーを教えろ?」
「うん。」
「まあ、いいわ。親の顔が見てみたいって言われないようにしなきゃ。面倒だけど。」
「はーい…」
「じゃあ、いつもの料理をお上品に盛るから手伝ってね。」
「うー…」
「あと嫁入り前に読んだ作法の本、出しとくから暗記しなよ。」
「うがー…」
「何、奇声を出してるの?恥をかくのは、あんたなんだからね。あぁ、心配しないで。親の顔が見てみたいって言われたら、行ってこんな顔ですがって言ってあげるからねっ?」
「くっ…馬鹿にしやがって……。絶対そんなこと言わせないからなっ!」
「はいは~い、頑張ってね~。本出しとくから読みなさいよ~。」
「ぅあーい。」
また、勉強か……。
「090XXXXXXXっと…」
ピポパポと電話をかける。
電話先はもちろん乃子の家だ。
プルルルルルルッ、プルルルルルルッ、プルル、ガチャ
をっ!
「…誰だ!」
いや、あんたが誰だ。乃子のケータイなのに。
「あっ、えっと、僕、乃…いえ、竹村さんの友人の姫野ですけど……、た竹村さんはいますか?」
何とかセーフ!
「……。お前、姫野真輝か?」
ん?不穏な空気が…?
「はっ、はい。」
「そうか、お前が姫野真輝か。」
つーか、あんた誰?
「はい、そうですけど……」
まさか、乃子のお父様!?
「で、何の用かな?」
若干、冷や汗が出る。
「えーっとそのぅ、あなたは乃子のお父様ですよね?」
「…ああ、そうだが。」
ウワー!キター!嫌な方向からー!
「はい、あの、日曜日にあなたに招かれたって乃子から聞いたんです。それで何か特に持っていくものはないかなぁと思いまして。」
「ふむ、成る程。まあ、そんなに気を使わなくて良いぞ。」
『お父様!何で私のケータイを使っているんですか?』
電話口から乃子の声が聞こえた。
「何、ワシが話しておるんだぞ?」
『何よ、お父様!返してよ!まーくん…じゃなかった、姫野君とお話しているんでしょ?』
あらー、親子喧嘩が勃発しちゃいました。
『とにかく、お父様は関係無いでしょ?返してよ!』
「何を言っておる?もしかしたら竹村家の跡継ぎになるかもしれない人だぞ?関係無い訳がないじゃないか。」
えーっと、どうすれば良いと思う?
『明後日、ゆっくり話せばいいじゃない!』
「ならば、乃子だって月曜日に話せばいいじゃないか。しかも昨日も学校で話しただろ?」
『そんだけじゃ足りないの!』
親子喧嘩の論点が僕……。
「大体なー、乃子。一体いつからお前はそんなに強情になったんだ?」
『かっ、関係無いでしょっ!』
「そういえば、幼稚園のときから“SSK”(←名古屋のお嬢様学校)に通っていたのに、中学校は何で公立に通いたいと言ったんだ?そこから強情なのか?」
……いつまで続くのかな。
『お嬢様学校じゃない学校を体験してみたかったからよっ!』
「だからお前に悪い虫がついたのか。」
『姫野君を悪い虫扱いしないでっ!』
「そうだろ?だってあの子は……」
『ん?何よ?』
「いや、何でも プツッ、ツーツーツー…」
ガチャン。
はあ、悪い虫呼ばわりか。
まあ、その通りなんだけどさ。
僕が乃子を誘拐しようとしなければ、僕との接点はなかったのだから――――。
復活しました。
よろしくお願いします。