α
よーし、決めた。
僕は“No”を選択する。
やっぱり悪には成りたくない。
『悪の小なるを以つて之を為すこと勿かれ。』と、昔の人も言っていたし。(小さい悪だからといってそれをしてはいけないという意味。)
ま、めんどくさいしね。
返信しない。
明日、海辺野公園に行ってケータイを置いてこよう。
そうと決まったら、準備しなきゃ。
ビニール袋を用意して。
……海辺野公園ってどこ?
地図帳…は載ってるはず無いし。
お母さん…には聞けるはず無いし。
友達…には聞いても興味を持たれてダメだし。
インターネット…は家に通ってないし。
いや、あるっ!
その名もケータイ!
使えるじゃん!
十字キーみたいなボタンの真ん中にある決定ボタンを押してインターネットをセレクト。
インターネットに繋いで、海辺野公園を検索。
近くにあった。
チャリで10分ぐらい。
こんな公園があったんだーとびっくりした。そこは山の中だった。
海辺って言ってるぐらいだから、海の近くにあるのかと勘違いしてた。
歩いて20分か。
まあ、大丈夫だな。
でも、なんで行かなきゃいけないんだろう?
面倒じゃないか。
幸い、近くまで知ってる道のりだった(一番近いピアラの近く)からよかった。
そこから手書きで地図(超ヘタクソ)を書いて、リュックの中に入れる。
そして、明日の準備。
明日は、数学・英語・体育・国語・社会・家庭科だ。
ウヘェ。家庭科かぁ……。テンション下がるなぁ。
とりあえず準備して。
寝る前の水を一杯飲んで。
おやすみなさい。
◇◆◇◆◇◆
コケコッコー!
最近、刻を作り出した鷄が朝を告げる。
うー、眠っ。
まだ5時じゃん。
あと2時間は寝れるよ。
うーん。今日は眠りが浅い。
いつもはこんなときに起きないのに。
まあいっか。
バターンと布団に倒れこみ、再び夢の世界へ……
「起きなさい!」
うっ、何だよ。
まだ5時だぞ。
「真輝!起きなさい!」
何で?
「もう8時よっ!」
えっ?
マジ?
ガバッと機械仕掛けの人形のように起きる。
時計を見ると確かに8時を指していた。
ヤバイ。
時間ない。
着替えて、ダッシュすれば間に合うか?
微妙だ。
遅刻しそう。
だったら、ゆっくり朝食を取ってから学校行ってもいいんじゃないか?
「お母さん、あんたをチャリで学校まで送ったるから、支度しなさい。」
えっ?
今、なんつった?
チャリで送る?
……恥ずっ。
でも、背に腹は変えられない。
食パンを袋ごとつかんで、リュックの中へ。
ぱぱっと着替えて支度する。
僕はちっちゃい方だし痩せてるから、結構軽い。
前計ったとき、45キロぐらいだったような気がする。
でも、重いかな?
教科書を入れると、50キロは裕に越える。
僕が漕ぐんだろうな。
「早くっ!」
「はいはーい!」
急がなくては。
まあ、思った通り僕が漕ぐことになったけど、遅刻は免れた。
さあ、つまらないつまらない一日の始まり始まり~!
◇◆◇◆◇◆
げっ、国語のプリント忘れた。
あと、ランチの食券忘れた。
うーわ。
今日はついてないなぁ。
◇◆◇◆◇◆
あっ、シマッタ!ランチ間違えて注文したっ!
ラーメン、食べたかったなぁと思いつつ生臭い鮭の焼いたヤツをもそもそ食う。
まずっ。最低。
◇◆◇◆◇◆
は、腹が痛い。
ぐきゅ~って感じ。
うっ、腹から何かが出てくる!
「先生…。」
「ん?」
「トイレ行ってきていいですか?」
「おお、どうぞ。」
「あっ、りがとうございます。」
顔面蒼白の僕の顔を見てびっくりしたみたい。
よろよろと教室を出て、トイレに向かう。
教室から囃す声が聞こえるが無視。
トイレに30分余りこもり、先生にサボりかとあやしまれた。
腹が下ってただけなのに。
ずっと便所座りしてて疲れたよ。
◇◆◇◆◇◆
あぁ、やっと今日の授業が終わったよ。
今日はついてなかったなあ。
早く海辺野公園に行って、ケータイを置いてこなきゃ。
心なし急いで歩いて学校を出る。
◇◆◇◆◇◆
冬服、暑い。
◇◆◇◆◇◆
学校から海辺野公園まで40分かかりました。
だって、昨日計算したのは、家から海辺野公園までであって学校から海辺野公園までじゃないんだもんっ!
迷っただなんて、口が裂けても言わないんだからねっ!
まあ、とりあえず海辺野公園に着きました。
なんか清々しくない公園です。
あぁ、なんか裏の組織の人たちが使いそうな場所です。
人は居ません。
トイレはすぐ見つかりました。
なかなか綺麗なトイレです。
トイレに入って、個室に入ります。
ビニール袋に包んだケータイを置きます。
リュックのチャックを閉めました。
ドアを開けて、外に
ドスゥッ!
出ます。
あれ?
あれれ?
今の音は何?
ブシャッ…
僕のお腹から聞こえます。
下を見ると、お腹から血柱が上がっています。
ぴゅーぴゅーと。
………。
……。
「キャーー…もぐっ。」
口を塞がれたっ!
再びドスゥッ!という音。
そこは喉。
もう、声だへない。
さらにナイフを突き立てて、腹を裂き、中身を出して逝く。
臓物は黒いビニールの中に吸い込まれ。
首をスパンと苅られ。
僕は絶命した。
死んだ。
I was DIED.
天に昇る少しの間にこう思った。
何で僕はおじさんの誘いを断らなかったかと。
(スタッフ)「主人公こと姫野真輝が亡くなってしまったので、代わりましてわたくし脳内スタッフが事後報告をします。」
(スタッフ)「真輝君が亡くなった後、【エビルデビル】はビニール袋ごとドラム缶に詰めて、コンクリート入れて日本海溝に捨てたです。」
(スタッフ)「それで、姫野真輝君は行方不明として世間に忘れられるのであったのだ☆」
(スタッフ)「星をつけるのは、不謹慎ですよ?」
(スタッフ)「いいの、いいの。これでいいのだ☆」
――END――