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第10話

 半年後。

 ネメシスが奴隷を使って、各地に店をチェーン展開した。

 奴隷の第一期生が従業員として働き、これから半年の実務経験を積む。その後、奴隷を買い足して第二期生として育てる計画だ。


「奴隷が店員だと?」


 首輪の装着が義務なので、奴隷は見たらわかる。

 そして奴隷だと分かると、ナメてかかる客がいる。


「じゃあ代金は払わなくていいな。

 奴隷には財産を所有する権利がないんだから、ここにあるものは『お前らのものではない』ってことだ」


 普通の奴隷だと、こういう場面では泣き寝入りするしかない。奴隷は従うもの。抵抗するなんてとんでもない。そのように教育されている。

 だが、ネメシスの場合は違った。そもそもの本質が復讐者である。


「たしかに我々奴隷のものではありませんが、我々の主人のものです。従って当然万引きは犯罪です。それと、発言の内容が恐喝に当たりますので、それも犯罪です。

 そして最も重要なことは、我々は店の資産を死守せよと命じられており、そのための戦闘行動も許可されています。

 代金をお支払い頂けない場合は、ただちに制圧させていただきますので、悪しからずご了承ください」


 堂々と反論する。

 そうせよ、と教育されてきた。

 護衛なしで行商するネメシスは、もちろん戦闘技術や基礎体力もぬかりなく教育している。


「へっ……! やれるもんならやってみやがれ」


 吐き捨て、道理をわきまえないバカが店を一歩出た。


「確保ォ!」


 ドバッと、積み上げた荷物が崩れ落ちるように、奴隷たちがなだれ打って襲いかかる。

 ほとんど土石流に飲み込まれたようなものだ。

 抵抗できるはずもなく、たちまち押しつぶされ、身動きできなくされて、あっさり捕まる。


「ほほう……これはこれは……」


 野次馬――こうした光景を見ている人もいる。

 その中には、道理をわきまえた人も少なくない。

 そして、そういう人たちは感心する。

 この店は信用できる、と。



 ◇



「何事だ?」


 さらに半年後、奴隷を乗せた馬車が、キャラバンのように隊列を組んでクオーツタウンにやってきた。


「やあ、クイント様。

 お陰様で順調だよ。順調すぎて二期生は予定より多く買えた」


「マジか……。

 てことは、商売を拡大すると?」


「だね。

 この調子なら、三期生が使い物になるあたりで、伯爵家に対抗できるようになりそうだよ」


 損益が「右肩上がり」どころか「指数関数的」なのだ。


「フリンジに新商品の開発を急がせないといけないな」


「おーい、クイント様!」


「クァーリー。どうした?」


 採石場にやってきた、採石業者の長だ。

 小規模な業者をたくさん集めて、合同でやってもらっている。そのまとめ役である。


「これを見てくれ。

 どうもクオーツの鉱脈の質が変わったらしい」


 それは、明らかに今までより質の高いクオーツだった。


「鉱脈の下層に高純度の部分があった……?」


 露天掘りという性質上、鉱脈を上から順に掘ることになる。

 だが鉱物なんてのは、たいてい地下の特殊な環境があって初めて生成されるものだ。

 つまり、単純に言えば、より深く掘るほど、より上等なものが出る。

 その例に漏れなかったということ。

 ただし、その上等な部分がたくさんあるとは限らないが。


「もっと掘ってみないと埋蔵量は分からないがね」


「今までのクオーツが減るということになるのは間違いない。対応を考えておかないと……。

 新しいクオーツの売り方と売り先も考えないとね」


 これが嬉しい誤算になってくれればいいが。


「そうだ。奴隷のなかで、頭を使うより体を使うほうが得意だという人がいたら、ネメシスのところからクァーリーのところへ移ってもらおう。

 露天掘りなんだから、深く掘るほど横へも広く掘り広げるよね?」


 井戸を掘るみたいにまっすぐ下へ掘ると、運び出すのが難しくなってしまう。すり鉢状に掘ることで、運び出すための道をつくるスペースを確保するのだ。


「もちろんだ。側面からは、今まで通りのクオーツが出てるから、埋蔵量的には減る心配はしなくていいぜ。

 ただ作業員の人数に限りがあるから、作業量的に割り振りを考えないと……ていう相談に来たんだが、人数増やしてくれるなら問題ないぜ」


「じゃあその方向で。人増やすにしても戦力になるまで時間かかるだろうし、新しいクオーツは、売り先が決まったら本格的に掘ることにしよう」


「了解だ」


「フリンジのところにも人を増やしてやりたいが、魔道具技師となるとなぁ……」


 専門知識が――そのための高等教育が必要だ。

 なかなか贅沢な悩みになってきたぞ。

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