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特訓

それから彼女との特訓が始まった。


「まずは君の詰まってる魔力溜まりから解消からしていきましょうか?」

「魔力溜まり、ですか?」

「……ん?君の家だとそう言わないのかしら?」


彼女に問いかけられて、記憶を遡る。けど、そんな単語に聞き覚えがない。俺が難しい顔をしているのに気づいたのか、彼女もまた思案するように視線を落とす。


やがて、何かに思い至ったのだろう。彼女は小さく何度か頷き、「気にしなくていいよ」とでも言うように、軽く微笑んだ。


……余計に気になる。そう思ったが、その笑みはこれ以上踏み込むなと、はっきり告げていた。俺は切り替えて、再度問いかける。


「それで……その、魔力溜まりっていうのは、どういうものなんですか?」

「簡単に言えばね。本来は体中を巡るはずの魔力が、途中で滞ってしまっている状態かな」


彼女は俺の反応を伺いながら説明してくれる。


「それを治すって事ですよね?」

「うん、その通りだよ。それを解消できれば、君は本来の魔力量を取り戻せる。……弟さんに負けないどころかたぶん、圧倒できるくらいの魔力量を得られるよ」

「————っ!?本当ですか!!」


思わず、彼女と距離を詰めて聞いてしまう。声が裏返るのも構わず、彼女の顔を覗き込む。


ずっと魔力量を増やすことについては調べてきた。地道に魔力の操作や循環をしてきたし、意図的に魔力切れだって起こした。けど、使い続けても、鍛錬しても変化は微々たるものだった。


それが今、ここに来てようやく希望が見える。俺の魔力量が上がる。それも、弟と同じくらいまで!!長年、俺を縛り続けた問題が、ようやく解決できるかもしれない。その喜びを抑えきれず、俺はアリシアさんを見つめる。期待を隠しきれない視線で。


……なのに。彼女は、ほんの一瞬だけ、困ったような表情を浮かべた。……もしかして、必要な条件があるのか?そう、不安に思っていると、彼女は口を開いた。


「確かに、魔力は上がるよ。ただ————」

「ただ……」

「これ、すっごく痛いんだよね」


まるで世間話でもするかのように、彼女は笑って言った。その取り繕ったような笑顔に、寒気を感じた。


「もしかして……それって、あの時、治療してくれた時みたいな……」

「うん。たぶん、それくらいは痛いかな」


思わず気を失った時のことを思い出す。あの全身を引き裂かれるような痛みを。やられてことはないが、まるで腹をさかれて内臓を取り出したような、そんな感覚だった。


なんせ、あの死にかけていた時の全身を貫くような痛さが一瞬でやってきたような錯覚を抱くほどの痛みだったのだから。


「……それって、寝てる時にできたりとかは」


そんな淡い期待を込めた俺の言葉を、彼女はあっさりと切り捨てる。


「別にいいけど、変わらないと思うよ。どうせ痛みで起きることになるんだし」


……逃げ道はないらしい。


「つまり……今ここで痛みで気絶するか、寝てる時に痛みで叩き起こされるか、どっちがマシかって話ですかね」

「まー、そうなるかな」


アリシアさんは、少しだけ視線を逸らしてそう答えた。


「それで、どうする? やる? それとも、諦める?」


その問いかけに、俺は歯を食いしばった。手のひらを強く握りしめ、無理やり口角を上げる。


「……もちろん、やります」


無理に作った笑顔で、そう答えた。次の記憶は、悲鳴と共に、意識が闇に落ちていく感覚だけだった。


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