旧三○二住人・赤津好の息子 C氏インタビュー録音記録
【令和六年度 伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 調査報告書 No.B064-追補07】
作成日:令和六年十一月九日
作成者:伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 主任 A田B男
『旧三○二住人・赤津好の息子 C氏インタビュー録音記録』
調査日:令和六年十月十八日
調査者:伊佐鷺裏市役所防犯推進課 主任 A田B男
被調査者:旧三○二住人・赤津好の息子 C氏(男性、二十代)
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【録音開始】
A:本日はお越しいただきありがとうございます。いきなりとなりますが、お母様が三〇二号室に住み始められた当初の様子から教えていただけますか?
C:(少し息をつき、ゆっくりと)ええ、最初は普通の生活でした。母は明るくて、よく近所の方とも話していました。でも、引っ越してから数ヶ月すると、だんだんと様子が変わってきたんです……。
A:どのように変わってきたのでしょう?
C:夜になると、誰もいないはずの部屋の中から声が聞こえると言い始めました。最初は『気のせいだよ』と私たち家族も慰めていましたが、母は『誰かが話しかけてくるの。ハッキリと聞こえるの』と、何度も繰り返していました。すごく怖がっていたんです。
A:その声は具体的にどんな内容だったと聞いていますか?
C:(目を伏せ、声を震わせて)『帰れ』『助けて』『ここから出して』……そういう言葉が多かったようです。母は、誰もいないのに返事をしたり、話しかけたりしていました。『無視できない』って、いつも言っていました。
A:その頃、お母様の生活に何か変化はありましたか?
C:外に出ることがどんどん減って、家に引きこもるようになりました。夜中に突然泣き出すこともあって、家族はみんな心配していました。だんだん、話す言葉も少なくなり、目も虚ろになっていった気がします。
A:お母様が引っ越しを決められた時のことを覚えていますか?
C:(しばらく沈黙し、絞り出すように)急に、『もうここにはいられない』と言い出しました。理由ははっきりとは言わなかったけど、怖くて耐えられなかったんだと思います。それから、すぐに火災の事故が。
A:……心中お察しします。
C:当時より私も大人になりましたから。それでもやっぱり、思い出すと辛いですね。
A:お母様が話していた声や、奇妙な出来事について他に何か覚えていることはありますか?
C:(少し顔を強張らせながら)ある夜、家の前で誰かが囁くような声が聞こえました。母は『それは私の幻聴だから気にしないで』と言いましたが、私は違うと思いました。本当に誰かがいるようで、背筋が凍る思いでした。
A:本日はお時間いただきありがとうございました。ご冥福を、お祈りいたします。
C:ありがとうございます。
【録音終了】
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『調査官所見』
旧住人の息子であるC氏の証言は、赤津好氏が三〇二号室に住む内に次第に精神的に不安定となり、謎めいた声に苦しんでいたことを詳細に示している。
引っ越し後の音信不通や、夜中の不可解な声の存在は、三〇二号室に何らかの異常が存在した可能性を強く裏付けている。
以上




