表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オデしか買えなかった件  作者: 月這山中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/39

第29話


 ソレイユたちは旅に出た。

 耳当ての『彼女』が暮らす森を探すためだ。


「お名前、なんてーの」


 コレットが『彼女』に話しかける。

 それを見て、ドレシアはコレットの頭を帽子の上から叩く。


「なんで叩くのよ」

「エルフの言葉で話さないと」

「そんなの知らないもん」


 『彼女』は、カッ、ハ、と小さく声を出した。


「あっ、なにか言いそう」

「ちょっと黙ってて」


 コレットとドレシアがお互いの口をふさぐ。


 『彼女』の喉は何かが引っかかったように、カ、カカッ、と音を続ける。

 言葉にはならない。


「ゆっくりでいいんですよ」


 ソレイユは『彼女』の肩を抱いた。

 耳当てを付けた頭は頷いて、また心を閉じた。

 




 夜になる。


「お母様は眠った?」

「ええ、行きましょうコレット」


 コレットとドレシアは宿を抜け出した。探検の為だ。

 それに気付いた『彼女』はベッドから出ると、耳当てをつけて双子の少女を追った。


 夜の林は鳥の声とも、葉のさざめきともわからない奇妙な音がそこかしこから聴こえる。


「逃げてもいいのよ、ドレシア」

「そっちこそびびってない? コレット」


 双子は林の中をどんどん進んだ。

 『彼女』は、それを追いかけた。


 ふと、双子は気付いた。


「光っている、ドレシア」

「ええ、コレット」


 月が反射した泉かと、二人は思った。

 しかし、そのふたつの光は、まばたきをしたのだ。


「やばい」

「逃げなきゃ」


 コレットとドレシアは呟く。野犬の群れは二人を囲んでいた。


「助けて、お母様」

「助けて、お母様」


 その時だった。


「あ、ああああああああああ!」


 甲高い声が響いた。掠れていたが獣たちを驚かすには十分な声量だった。


「ああああああ、やああああああああああああ!」


 声を発していたのは『彼女』だった。

 コレットとドレシアは、声に共鳴して叫び始める。


「たあああああああああ!」

「きゃあああああああああ!」


 足元に落ちていた木の枝を拾って振り回した。

 想像だにしなかった合唱に、獣たちは逃げていく。二人を囲んでいた光も消えていた。


「たす、たすかった。助かったわ」

「ありがとう、あなたのおかげ」


 コレットは『彼女』の身体に抱きつき、ドレシアは両手の平で『彼女』の頬を包んだ。


「カ」


 『彼女』の喉から、引っかかっていた音が滑り出た。


「カサ、ブランカ」


 コレットとドレシアは、『彼女』の顔を見た。


「カサブランカ、東の森の。それが、あたし」


 『彼女』は、自分の名を言った。




「それで、弁明はありますか」

「……」

「……」


 ランプを手に探しに来たソレイユに、コレットとドレシアは甘えることも出来ず頭を下げた。

 『彼女』は、東の森のカサブランカは間に入る。


「怒ら、な、ないで、あげて、こ、こわい、思い、した」


 引っかかりながらもカサブランカは共通語を発した。

 ソレイユは目を丸くして、それから双子の我が子を見た。


「彼女に免じて、許してあげます」

「ひ、ひ、東の森の、カ、カ、カサブランカ。あたしの、名前」

「カサブランカ、二人をよく守ってくれました」


 ソレイユは小さな肩を引き寄せて、抱きしめた。

 コレットとドレシアは羨ましそうに眺めていたが、ソレイユの腕の上からカサブランカを抱きしめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ