第28話
歩きながらアレスが呟く。
「別に家に居たってよかったんだけどよ」
「じゃあ、引き返せばいい」
オレはわざと冷たくあしらった。意表を突かれたアレスはまばたきをして、それからオレの隣に並んだ。
「生意気言うな。俺はなぁ、……」
アレスは睨みつけてきたが、遠くを見始めたオレにそれ以上文句は言わなかった。
「……」
ヒャン、と足元のモフが鳴いたので意識が戻る。抱き上げて、歩みを再開する。
「あっ、あれ!」
アンナが草むらを指さした。
街道の途中、草むらの中に倒れた男を見つけた。
「大丈夫ですか!」
アンナが駆け寄る。
「水をどうぞ」
行き倒れの男をアンナが応急処置する。オデも男の隣にしゃがみこんだ。
「お、おお、ありがとうございます……」
男が呻く。ふと、立ち竦んでいたオレと目が合った。
「もしや、転生者様では……」
腕を差し出す。すがるように。
オレは仕方なく、モフを抱いたままその手を取る。
「はい、オレは転生者なんです」
「おお、やはり」
「大丈夫です。あなたは助かります。次の街まで一緒に行きましょう」
言い終えると、チッ、と背後から舌打ちが聴こえた。
手を離して振り返るとアレスがこちらを見つめていた。不機嫌そうに。
「どうしてばれたんだろう」
オレはたずねた。
「転生者特有の雰囲気ずっと出してんじゃねえか」
「なんだ特有の雰囲気って」
「その『ぼくってかわいそうなんでちゅ』っていう被害者ヅラのことだよ」
アレスは口をとがらせて、わざとらしく幼い演技をする。
「そこまでにするど」
男を背中に担いで、オデは言った。
街に入ったらすぐ男を医者にあずけた。
宿を取って昼食にした。
「あれ、あれれれ」
会計の時に、アンナが身体を叩きながらきょろきょろしはじめる。
「どうしたんだ」
「お財布が、無いんです。落としてしまったんでしょうか」
少しは頼もしくなったと思ったが、抜けてるところは変わらないらしい。
オレたちはアンナの財布を探した。
宿でも、病院でも、商店街の道でも見つからなかった。
「ほらよ」
いつの間にか別行動をしていたアレスが布袋を投げよこした。
「あっ、わたしのお財布、ありがとうございます!」
「どこにあったんだ」
オレはたずねた。
しかし、アレスはそっぽを向いてしまった。
「どこだっていい。今度はなくすなよ」
オレは気付いた。あの行き倒れの男がスッたのだろう。
「そういう気遣いもできる奴だったんだ」
「うるせえ」
アレスは顔をしかめた。




