次世代お掃除ロボット YG-AI
「次のモデルはどうしよう」
Aは言った。
「ゴミの吸引から床のふき掃除・・・
次はワックスがけかな」
とBが答えた。
「冗談はやめろよ。
業務用じゃないんだから。
家庭のフローリングでワックスかけないよ」
Aはしかめっ面をする。
二人の開発者は次期自動掃除機ロボットを検討していた。
ル〇バのヒットにより、室内自動掃除ロボットが普及した。
そして、機能も充実し、AIで室内の構造を把握し、
余す所なく掃除機をかけ、
バッテリー充電器に戻って接地するのが当たり前になった。
さらに機能が追加され、カメラでスマホに映像を送ったり、
ふき掃除するモノまで登場した。
もう目新しい新機能などないのだ。
「ロボットつくりたいな~」
Bはため息をつく。
本当のロボット、ガンダムのようなロボットを作りたくて、
Bはこの会社に入ったのだが。
「俺もだよ~」
Aもうなづく。
「じゃあ、人間型のお掃除ロボット作らないか。
自立型でカッコいいやつ」
Bは目を輝かせた。
「いいなあ。
竹ぼうきを持たせて、レレレのおしさんみたいな、って。
おいおい、自立型なんて、超難しいぞ~。
不安定だし」
Aはいったんはノったが。
「じゃあ、四足歩行。
それなら安定するだろう」
Bは食らいつく。
「人間が四つん這い?
それじゃあ、カッコ悪いだろう」
AはBをさとした。
「じゃあ、犬型。
犬に掃除させる。
かわいい。
ペットロボットにもなるし」
Bは言った。
「ペットロボットはうちじゃないだろう」
ペットロボットは他部署で開発している。
「うちの部署はあくまで掃除ロボットだ」
「じゃあ、赤ちゃん型。
四足歩行は問題ないし、
おじいちゃん、おばあちゃんに喜ばれる。
高齢化社会へ向けてのアピールになる」
Bは諦めきれない。
「赤ちゃんに掃除させるか~
おかしいだろう」
Aは呆れた顔をした。
Aは次の言葉が出なかった。
二人の沈黙が続いた。
「いいなあ、それ。
四足歩行。
それに高齢化社会向け」
二人の話を聞いていた部長が言った。
「よし、それでいこう」
部長は頷く。
「プロジェクト名は、YG-AIと名付けよう」
そうして、部長は自分の構想を二人に話した。
二人は目を輝かせ、何度も頷いた。
3年後、次世代お掃除ロボット YG-AIが発売された。
YG-AIの売れ行きは好調だった。
既存のお掃除ロボットと違って、郊外や田舎で売れに売れた。
それはそうだろう。
庭や敷地、耕作地がなければ意味がなかった。
そうYG-AIは文字通り、ゴミではなく、雑草を取るのだ。
夏場などほっておくとすぐに雑草で埋め尽くされる。
YG-AIは庭の手入れができない高齢者向けの雑草取りロボットだった。
そして、乳も出た。
取った草を体内でバイオ処理し、バイオエタノールが乳として出るのだ。
これはBの発案だった。
そう、YG-AI、それはヤギ(YAGI)型ロボットだった。