何故こんなところに商人が ~ラスボス討伐後の隠しダンジョンに? しかも破壊神の力を持っているだって?~
「ズガン!」
「バキン!」
「ぐ! 強い、強すぎる!」
「ワーッハッハッハ! 勇者共、そんなものか」
「エクスプロージョン!」
「グワー!」
「もう終わりか、つまらん」
「そいつらを城の外へ放り出しておけ」
「ハ!」
(さすが魔王様、今日も絶好調であられる)
「魔王様、少しお話が」
(おや、魔王軍No.2のデーモンタイラント様か。久しぶりに見たな)
(私は初めて拝見する。魔王様とほぼ同じくらいの力を持っているとか)
(この二人が魔王軍を背負っていると言っても過言ではない)
(どうしたんだろう? なにやら思いつめたような表情だったが)
「どうした? デーモンタイラント」
「少々小耳をば」
(隠しダンジョンに人間の商人らしき者がいるとの報告が)
(……)
(は?)
(人間が魔王城地下にある隠しダンジョンに)
(いやいや、そんなはずは。そこの魔物は一体一体が俺に匹敵する力を持っている。人間ごときがそんな過酷な環境で生き残れるとは)
(地下の魔物はほぼ壊滅状態です)
「な、なんだって!」
「コ、コホン」
(すまん)
(……それどころか破壊神様のお姿がどこにもないのだとか)
(まさか)
(実際我々の目で確かめてみようと思いまして)
(そうだな、行ってみるか)
(ではこちらへ)
「地下に到着しました」
「静かだな。前に俺が来たときは魔物たちの咆哮が飛び交い続けていたが」
「ああ、デーモンタイラント様、いらっしゃいましたか」
「例の人間は?」
「……あちらにいます。ついてきてください」
(ここから見れます。あまり顔を出さないように見てください。意思疎通も小声でお願いします)
(あいつか。人間にしては少しデカイな。ん、あれはキングホーン! 俺より強い魔物だ!)
「グ、グワーーーン!」
(あれ、人間を見て逃げ出した)
「ブオン」
「ズガーン」
(キ、キングホーンを殴りつけて倒した!? しかも一撃で!)
(魔王様、あの技はグレイトロックの技、「超筋肉」ですね)
(そうだな、一瞬筋肉が膨れ上がった。……まさか!)
(破壊神様は吸収した魔物の力使えますつまり)
(破壊神様の力をあいつが持っていると?)
「ん?」
(しまった! 気づかれた!)
「シュン」
(魔王様! お逃げください!)
(お前達!)
『グオォォォーーン!』
「パン、パン」
(平手で部下の頭を吹き飛ばした!)
「がくん」
「……た、助け」
「おや、あんたは人間か? 話せるようだが」
「え、ええ?」
「そうか、コイツラに襲われて」
「あ、はい。そうです!」
「俺はネロ。商人だ」
「パチパチパチ」
先ほど倒した魔物の肉を焼く。いい匂いだ。
「ガブッ。うまい」
「食べないのか?」
「ちょっと食欲が」
「そうか」
さっき襲われて死にそうになっていたんだ、無理もない。
「どうやってここに?」
「トンネルを掘って」
「そ、そう」
「そもそもなんでこんなところに?」
「商売さ。ただ、商売下手でね。ライバルがいないところを探して、たどり着いたところがここだったわけさ」
「腕はたつし、他の職業でも良かったのでは」
「子供の頃かじった程度だったが商売をしていた。その時に商品を渡すとお客さんがとてもいい笑顔を見せてくれたんだ。その笑顔を忘れられなくてね」
「ここの最下層に大きな魔物がいなかった?」
「ああ、いたな」
「そいつは今どこに?」
「そうだな、腹の中かな」
「え?」
「なかなか美味かったぞ」
「は、はは。美味かったか」
「美味かった」
(コイツ、破壊神様を食べちまったのか……)
「帰る、助けてもらったこと、感謝する」
「送っていかなくていいか?」
「大丈夫だ」
3ヶ月後。
「グハァーー!」
「やったぞ! 魔王に勝ったぞ!」
「この俺を倒すとはやるではないか! 褒美としてこの地はくれてやろう!」
「よーし! 次は隠しダンジョンだ!」
「ダメだ! そっちは絶対ダメ!」
「ええー」
(そういえば魔王様、地下を封印するためにかなりの力を失ったとか)
(それでこの程度の勇者に)
(一体下には何が)
(わからん。しかしあれ以来デーモンタイラント様を見ていない)
(魔王様自身も地上に戻られたときはヨロヨロと歩きおやつれだった)
「まあ、そこまで言うなら」
「約束だぞ!」
「あれから3ヶ月か。人が来たのは1回だけ。ここはダメそうだな」
「他の場所を探すか」