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胡蝶の闇
一匹の虫がいた。それはあらゆる光を飲み込んでしまう闇に染まっていた。Gかと思ったがどうやら違うようだ。俺たちが色を視認出来るのは光の反射によるもので、実際に色づいている物は存在しないらしい。物体が光の成分からどれを反射し、吸収し、透過するのかにより、我々に届く色は決定する。それでも人々は色に魅了され、心を動かされる。
人生というのも本質は同じなのかもしれない。数多の可能性から道を創っていく。それはとても素敵な事で、同時に自分には出来ないと確信していた。
俺たちの関係もそんな風なら良かった。しかし俺は色の感じ方を誤った。仕方のない事だった。きっと前提から間違えていたんだ。お互い見ている世界が違った事に気付いた時には何もかもが遅すぎた。
道を分かつ-アイツは光へ、俺は闇へ。決して交わることの無い二者は走る。ただひたすらに。そうして時は流れ……あぁ、そろそろのようだ。
大きく漆黒に染まる自慢の羽。鱗粉を散らしながら光に向かって。