雨の音
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窓にポツポツと雨が弾く。
その音を聞きながら、進まない本のページをめくる。
内容など、ほとんど入ってこない。頭の中に浮かぶのはたった一人。
今日は空き教室にでもいるのだろうか。
彼とは、幼なじみ。
小さい頃からずっと隣にいた、家族より。
彼の一番はずっと、僕だと思ってた。
高校二年の夏休みに、彼は恋人ができた。
相手は、高校から一緒になった柚月。ふわふわとした雰囲気の守ってあげたくなる存在。
だけど、柚月は男だ。
よりにもよって、自分と同じ男。
どうして、彼は僕ではなく柚月を選んだのだろうか。どうして、自分には何も言ってくれないのだろうか。
ザーザーと、音がなる。
窓にあたる雨の音がどんどん強くなっていく。
柚月は、彼に言ったそうだ。
「実は、3年前から好きだったんだ」と。彼は嬉しそうに僕にそう言った。
僕だって……
喉から出そうになる言葉は、決して言葉にならない。
ザーザーザーと音がなる。
まるで、僕の代わりに泣いてくれてるようだ.......
「10年以上ずっと好きなのに.......」
自分でも抱えきれないほど大きくなった思いを吐き出した筈が、あまりにも掠れて音にしてはとても弱いものだった。
僕の10年間の思いは呆気なく、終わりを告げた。
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