視られてる
これは、今から三年程前、ボクが体験した話。
三年前、ボクは大学進学の為に北海道で下宿暮らしを始めたんだ。
親から解放された気持ちもあったが、下宿とはいえ初めての一人暮らしなどの気持ちもあって、精神的につらい時期だった。
気持ちを紛らわせる為に、塾講師のアルバイトを始めたボクは、二キロほど離れた場所の塾に面接の予約をした。
二日後の二二時、ボクは予約した塾の室内にいた。
なぜ夜中なのかという理由は、そこの塾長が昼は動けない、ということで塾が閉まった二二時に面接を行うことになったのだ。
一時間程かけて面接と学力テストを終えたボクは、そのまま塾を出て、駅に向かった。
五分程かけて付いた駅には、終電に乗る為か十人程の男性がいた。
プラットホームに入り、電車を待っていたボクは、当時使っていたアンドロイドのスマホを取り出して、気になっていたワードを検索した。
ほんの少し時間が経ち、電車がプラットホームに入り始めた。
それを見たボクは、スマホを左前にあるポケットにしまった。
入れたタイミングで、電車が僕の目の前を通り過ぎようとした。
その時、足元の方から見られている感覚になり、その方を見た。
見ると、そこから女性の顔が覗いていた。
その女性は、眼球が飛び出そうな程、目を見開いていた。
だが、場所がおかしい。
気づいている人もいるだろうが、その女性は電車が走る線路の方から覗いているのだが、その時真上には電車が走っていたのだ。
それに、プラットホームには十人程いたが、女性は一人もいないのだ。
その女性を見たボクは、すぐに霊体だと分かった。
後日分かったのだが、そこの駅では、昔自殺者が多く出たそうだ。今ではフェンスが張られているのだが、
「霊体を視た」
という話はよくあるそうだ。
今回、ボクが視た女性は、その自殺者の一人だったのかもしれない。