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ココロ

作者: rouge
掲載日:2008/05/23

「ねぇ」

僕が立ち尽くしているとこに、僕の半分ほどの身の丈の子が、袖をひっぱる。

こんな子が隣にいるのも忘れて、僕は何を思ってたんだろう。

「おにいちゃん?」

何の反応も示さなかった僕は、二度目でようやく微笑みかけた。

「心ってどこにあるの?」

子供はふと、突然拍子抜けするようなことを聞いてくる。

「そんなのどこにあるのか、分かっちゃダメだよ」

「どうして?」

あどけなく、屈託のない表情が僕を惑わす。

「なんでだろうね?」

「教えてよぉ!」

意地悪をされていると思っているのか、焦らされてると感じているのか、頬をパンパンに膨らました。

その表情が僕をまた、惑わす。



「あの……」

今度訊ねてきたのは若い女の子。

「どうしたの?」

「心は何であるんですか?」

特に感情の込もっていない瞳で、覗き込んできた。

やはり、笑みがこぼれた。

「何であるかわからなくても、あったほうがいいでしょ?」

「なきゃ、だめなの?」

彼女はさっきとは違って、悲しそうで、苦しそうで、切なそうで、泣きそうな表情が浮かんだ。

「なきゃ、今の君は無いんだよ」

でも、僕は笑った。



「すいません」

「はいは〜い」

満面の笑みで振り返ると、絶望の淵にいる中年男性がいた。

「なんでしょう?」

「心は、なんであるのでしょうか?」

人生の終わりと言わんばかりの暗い顔。

「人を傷つけて、癒すためにあるんですよ」

「私の場合、傷つくだけです」

笑顔を絶やさず、付け足す。

「そういう時は身近な心に助けてもらうんです」

キョトンとして、一瞬置き、何か言いたげな顔をした彼。

「どこかでお会いしたことありますか?」



「なんですか、おばあちゃん?」

ゴホ、ゴホ、と咳き込む老人。

「心、ゴホッゴホ……なんであるのかのぅ……」

やはり笑顔で、

「生きて、死ぬのを実感するためにあるんです。人生を歩むためにあるんです。痛みを分かち合うためにあるんです」

言った。

「どこに、あるの?」

咳は治まっていた。

「ここに、あります」

心臓に手を当て、刻む鼓動を手に宿す。

「嘘だぁ。ママ、体の中にはないって言ってたよ!」

いつのまにか、老人は、少女になっていた。

「心臓は、心じゃありませんよ。心は自分です」

首を傾げる苦しそうな少女。

「心は自分でも、自分は心じゃない。心はどこにあるの、自分が持ってる。じゃあ自分の中にある、それでいいんじゃない?」

まだ、よく理解できなさそうな彼女。

「それが嫌なら、心をとりだしてみればいい。自分の中の心が無くなるわけじゃないけど」

笑顔はまだ、一度も途切れていない。

空を見上げて、リズミカルに。

「大切な人が出来たとき、自分とその人で、心二つ。心は欲張りだからもっと欲しい。二人の心が重なったら、きっと出来るよ、三つ目の心」

もう、息をするのがつらくなってきている女性。

「心があるから、命があるんだ。命があるから、心があるんだ。命は心なんだ」

老婆は、息絶えた。

「ね?」

笑顔を向けると、彼女はいなかった。



「はじめ、一人だったのに」

歌いだした、僕。

「だれかがいるからあったんだ、心があるからあったんだ。

 だれからともなくできてきて、心は順に消えていく。

 だれかといるのが恐ろしく、心を閉ざして目を閉じた。

 だれかに呼ばれて起こされて、心の意味を手にしたんだ。

 なのにだれもいなくて、

 何もつらくなかったのに、

 今は前と違って、

 苦しく、泣いた

 これが……ココロ」

そして、歌は聴こえなくなった。

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