【プロローグ『そして彼女は、異界へ落ちた』】 -379
純粋に萌えるBLを求めるそこのあなたはブラウザバック!
異世界でなんでもうはうは出来ると思うなよということで、王道設定で邪道をねじ込みました。
女騎士じゃなくて、男騎士が好きなオークがいても、いいじゃない。
泣いている、女の子が現れた。それは何処から、私の部屋から。これは夢かな、漫画の読み過ぎ? 気を失っているその子を触ってみるが、柔らかい。格好は全身黒尽くめ、だけどあちこち怪我してる。一番酷いのは、破れた服から覗く豊かな胸の間に広がった傷跡。それに関しては古傷のようだけど、一体何があったのか。どうせなら、美少年か美青年が落ちて来たら最高だったんだけどなぁ。ほうほう……下着は黒っと。
「き、きゃああああ! 何すんのよ! 」
「ああ、起きた? 安心して。別に取って食いはしないから」
私がその子のスカートを捲ったところで、奇声を上げて彼女はようやく目を覚ます。
「ここ、どこ……? あんたは……」
「お嬢さん、力が欲しいかい? 」
「何悪魔みたいなこと言ってるの? まさかあんた……凄い悪魔だったりするの!? 」
この際悪魔と契約しても構わない。深い憎しみを抱えた赤い目で、彼女は私を見つめ返した。
「生憎私に、力は無いよ。だけど……私には知識がある。それは貴女の世界には存在しない概念だ。故に貴女がそれを極めれば、貴女は貴女の暮らす場所で、偉大な存在となるだろう」
「……偉大な、存在。それって、復讐にも使えるの? 」
「戦わずして、全てが貴女に平伏すさ」
私の言葉に、彼女は涙を拭い……頷いた。何でもすると言わんばかりの強い意志を感じる目。いい目をしている。
「覚悟は決まったようだね。それじゃあまず、ここに貴女の名前を書いて貰おうか? 手当はそれから行おう。ああ、言葉が違うかな。じゃあ私が代筆しよう。では名前から」
「ロ……ダイヤ=キャロット。」
「ダイヤ? キャロットが名前? 」
「キャロットがファミリーネーム」
「じゃあ書類には逆にして……職業と年齢は? 」
「魔法使い、今は十六。……って何を書いているの? これは召喚獣の契約書? 」
「履歴書さ! ようこそキャロットさん! この腐敗した腐臭漂う素晴らしい世界へ! 」
私が仕事場の扉を開けた時、彼女はその場に再び気絶する。入門者には、些か刺激が強すぎたようだ。
「先生、何騒いでるんですか? 」
「ああ、あのね……ネタが降ってきた」
「えー! やったじゃないですか! 新刊のネタ? 聞かせて下さいよー! 」
「いや、文字通り。とりあえずA子ちゃん、この子の着替えと手当て手伝って貰えるかな? 」
部屋の間でぶっ倒れた魔法使い? を指差して、私はアシスタントのA子ちゃんの方を見た。
*
【『助けなければならない』 -380 】
勇者なんて職業、ちょっと前まで廃れていた。傭兵免許のようなもの。あれば少し箔が付く、そんなもので名誉職なんて肩書きは薄れてしまって。昔々魔を祓った聖剣が、魔に冒されていることに気付いた者もいない。それどころか何処に奉られているのかさえ、正しく把握している者はいなくなる。そして時が流れる内に、悪しき者を倒すための武器が悪しき物へと転身。 十数年前、とうとうその時が来た。剣の封印を解いた馬鹿なお姫様が居た。彼女の罪により、聖剣が魔剣に変わったことを人は知る。彼女はその罪から身分を失い、王は世界に対する償いのための資金を投じ、犠牲を量産するに至る。彼らの職業名は勇者。勇者なんて、名ばかりの……人身御供。それでも名誉や金を求める輩は次々と、勇者育成施設の門を叩いた。私達四人も例には漏れず、そんな輩の内の一握り。だけどそれぞれ、夢が目的がありここにいる。他人に何と言われようと、欲しい物があったから。
「いいか……とうとうここまで来た! だが油断はするな! これまでの敵とは段違い、一瞬たりとも気は抜けない」
剣を構えた男が仲間に呼びかける。ここまで来たらあとは気持ちの問題……なんてその男は私達に言うのだろうな。
「な、ナイトさん! 」
「どうしたハーツ! 」
焦った女のか細い声に、男は慌てて振り返る。その間のフォローは、弓を操る少年が敵を牽制して場を繋ぐ。
「ロットちゃんが……居ません」
回復役である彼女にも、自分の心は治せない。不安に苛まれ青ざめて行く彼女の表情に、男も焦りが生じ出す。
「は……? 冗談は止せ。ハンターからの情報では、この洞窟の主は物理が効かない。シールドこそ物理突破が可能だが、本体を倒すには俺達が然るべきタイミングであいつに魔法属性付与を受け、尚かつそれで時間を稼ぎ、敵の最大攻撃が出る前にあいつが最大火力をぶつけ……」
「今やっと、あのドラゴンのシールド破ったところだよな? 俺と騎士のにーちゃんで」
声の調子こそ軽いが、矢をつがえる少年の手も僅かに震える。全員が気付いている。この戦いは四人揃って、それが前提。一人でも欠けたなら、彼ら……私達には勝ち目がない。
私だって土属性攻撃でシールドに石投げまくったわよ。|魔法(物理)でちゃんと働いたわよ。……なんてこんな言葉も彼らには、もはや届いていないのだ。
「つ、つまり……キャロットが居ないと言うことは、魔法撤退も不可能ということか? 」
「は、はい」
「あ、あの腐れ魔法使いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! 」
某小説賞で落選した作品です。時間も流れたので腹いせにアップしようかと思います。
ありだとおもうんだけどなー!! こんな逆異世界物なら私は読みたい。