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天使の放課後、狼たちの午前  作者: 西九条
プロローグ
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プロローグ1

「現世はゆめ、よるの夢こそまこと」

                ~ 江戸川乱歩


葛原揚子くずはらようこは今月から中学2年生になる。初年の中学生活はお世辞にも健全な青春を謳歌したとは言えなかった。小学校時代の友人は中学進学と共に疎遠になり、彼女の楽しみといえば学内非公認の課外活動のオカルト研究ぐらいの物であった。傍から聞けば大部分の人は友達のいないインドア少女という印象を受けるが、彼女本人はこの生活に充実感すら覚えるほどであった。それに彼女が人との間に壁を作るのは誰にも言えない秘密があるからだ。

揚子は他人ひとより霊感が強い。オカルト雑誌に読者として寄稿しているものは全て彼女の実体験によるものだ。夜になると父から譲り受けたカメラを片手に街の文明的な光に隠れた影を暴き出す。それが彼女の日常となっていた。

ある晩のことだった。揚子はいつもと変わらずネタ探しの為に夜の町を歩いていた。千鳥足で歩く酔っ払いや夜勤に備えて一服するタクシー運転手が見える時間帯だ。いくら放任主義の父は門限を設けない主義だからとはいえ限度があるだろう。それくらいは世俗に疎い揚子にもわかっていた。

「今日も収穫なしか。」

思わずため息をついた。ここ最近はずっとこの調子だ。よくても低俗霊の些細な悪戯程度で、以前出したネタと被ってしまう。明日の学校に遅刻すると面倒なので揚子はもう帰ることにした。今から帰れば午前0時には間に合うだろうと思ったからだ。もうこの近辺のネタは掘りつくしたのかも知れない。新しい発見の為には県を越えることも考えよう。

そう思った矢先に強い光と共に悲鳴が聞こえた。揚子の耳には人間の声ではなく明らかに霊的存在のそれに聞こえた。家とは反対方向であったが、この潮時を逃す手はない。スランプ脱出の絶好の機会だ。そう頭で考えるよりも先に体が動いていた。

その先にある出会いこそが彼女の異常な日常をより非日常的にしたのであった。



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