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憲太は妖怪料理人になりました  作者: ジャン・幸田
その壱:クビにされてしまった!
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チクルわけないだろ!

 嫌な奴だから入れたくは無かったが、岡島マネージャーと六本木社長を家の中に入れた。俺の家は築何年かわからないぐらいボロボロの平屋建てで、屋根は色が落ちて苔むしたコンクリート瓦。壁は薄い最近の家では使われない建材に穴が開いたところに錆だらけのトタンで蓋をした代物だった。


 当然内部も酷く歩くたびに沈み込む床板、色が変わり土に帰ろうかというようなボロボロの畳、そして圧倒的に少ない家具類。ようは極貧のギリギリ生活だった。家で一番の贅沢品が車だったが、これも中古車店で三万円で買ったデコボコだらけ傷だらけの代物で、今は母親が使っていた。


 「お前、ネットにわが社の不正だという動画を投稿しただろ! おまえぐらいだろうだからね、そんなバイトテロを仕掛ける奴はな! スマホとパソコンを見せやがれ!」


 そう岡島は恫喝していた。ウチのテレビは古いブラウン管テレビで地レジチューナーを繋いで見ていたが、先週壊れたので次の最後の給料で買おうとおもっていたところだった。だから何が起きたのか判らなかったので、しかたがないので次のように言ってやった。


 「あのですね、この家にはパソコンありませんし電話もありません。このとおり極貧生活ですから。親父の残した借金を返すためにギリギリの生活をしていますから。それに携帯ですがこれを見てくださいよ」


 そういうと俺は親父が使っていた古いガラゲーを取り出した。一昔前の代物なので画素数の少ない粗悪な写メしか撮れないし動画は撮影できても保存できないように破損していた。そんなガラゲーで動画投稿サイトに投稿したというのだろうか?


 「ふざげるな! お前の携帯じゃないだろ! それを証明してやる!」と岡島が言うとスマホでどこかに電話をかけた。当然、俺の携帯が目の前で鳴り始めた。


 「じゃあ、お前は誰かに投稿させたのかというのか? じゃあ名前を言いやがれ!」


 「さっきから、一体何の話をしているのですか? 見ての通りこの家にはパソコンもありませんしスマホのような文化的な機器はありません。どこかの会社の給料も安かったですしね。投稿だ、動画じゃといっても何をしたというのか説明してください!」


 「何しらばくれているんだよ! お前じゃないんか、動画投稿サイトに痛んだ魚をネタにしたり、賞味期限切れの冷凍ネタを、回転寿司のレーンに流した画像を投稿したのは? どこかネットカフェでも行って流したんじゃないか! 白状しろ!」


 「そんな社会にチクるようなマネをするわけないだろ! だいたい何の得があるんだよ? クビにしたあんたに復讐するならあんたの大事なベンベーに腐った魚の汁をかけてやるほうが清々するぞ! そんなことしては無いはずだ。あんたのベンベー魚臭くなっていないだろうに!」


 結局、二人はその後も何としても白状しようとしたが、もうクビにした社員に証拠も無く詰め寄っていたので、困っていたところ、お袋が帰ってきて、「うちの息子がお世話になりましたが、もう必要ないはずですよね? そしたら警察を呼びますよ」といったところで、諦めて帰って行った。


 それにしても、不都合な動画を見ていないのでなんともいえないが、気に入らない奴をクビにしたら復讐するに違いないと考えるところは、さすが岡島だと思った。それにしても六本木社長は一体なにしに同行していたんだろうか? 

 

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