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憲太は妖怪料理人になりました  作者: ジャン・幸田
その壱:クビにされてしまった!
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お別れ会なのじゃ!

 回転すし屋をクビになって数日後。なぜか俺の送別会が開かれていた。学生の時に教師の離任式なんてあったが、まさか自分のために開いてくれるとは思ってもいなかった。しかも会社にいらないといわれ、追い出されたのにである。そもそもクビになった男など相手にしてくれたのだ! それはそれで嬉しかった。


 「山村、いいじゃないか岡島のつらを見なくていいのだからさ。本当、スタッフみんな岡島の奴なんかいないほうがいいと思っているさ。まあ”岡島派”ぐらいだろ。いま、良い思いをしているのはさ」


 「だいたい、岡島は気に入らない奴に言うよないつも。”お前のかわりなんぞいくらでもいるからな”というよな。でも、最近うちの評判をしっているんだろうかよ? ブラック企業、ブラック・バイトなんかといわれているのを。だからバイト募集をしても面接すら来ないのにさ」


 そんなことを”元”同僚のスタッフがいっていた。ちなみに”岡島派”とは岡島のお気に入りの社員に対するもので、岡島の考えに近く優遇されいていると陰口をいわれていた。当然のことだが俺の送別会には誰一人来ていなかった。


 今日は十数人が送別会に来ていたが、何故か一人だけ異様な人が居た。その人はスタッフではなく常連客だった。彼は本名は知らないが”フォックス帽”というあだ名があった。いつも狐のマークが入った帽子を被っていたからだ。彼自身は”フォッシー”といっていたが、これも本名ではなくニックネームだろう。


 「山ちゃん、びっくりしたわよ。今日店に行ったら首になったというじゃないのよ! しかも突然だってね。いつも山ちゃんとおしゃべりするのが好きだったのに、いなくなるだなんて思ってもいなかったわよ。だから送別会があるってありがたいわよ」


 「すいませんね、フォッシーさん。別れの挨拶が出来なくって。お客サンなのに奢ってもらうなんて悪いような気がします。それにしても、こんな夜遅くても大丈夫ですか?」


 この時、回転すしの閉店後に開催されたので、この時深夜一時だった。普段、フォッシーさんは昼間にしか会った事がなかった。いつも、どこかの営業の途中のような様子であった。


 「山ちゃん、ところでこれからどうするのよ。まあ、山ちゃんだったらすぐ他の飲食店からさそわれるのじゃないかな」


 「実際にオファーがあったよ。FCのオーナーさんから住むところを用意してあげるから是非来てくれないかっていわれたよ。でも遠い町だし引越しをするのも大変だしね。それに、しばらく休みたいんですよ。毎日朝八時から夜十一時まで店にいて、休みは週一、盆も正月も休まず一年のうち三百日出勤していて、時給に換算すると時間当たりの給料がバイトの試用期間よりも安かったんですよ。だから少し休もうと思うんですよ」


 そんな事を俺は愚痴としていったが、この日送別会に来てくれたスタッフの中に辞めたばかりの者もいた。会社が一店舗あたりの正社員を減らしフリーターを増やす事で人件費を安くなる事を目論んでいたことに反発しての事だった。だいたい会社は正社員にサービス残業を強制しているんだから、本当は正社員を使っていたほうが法律違反であるが、安かったのにである。まあ、そんな事情はもう関係なかったが。


 この時、フォッシーさんがカバンからクリアファイルに入った一枚のパンフレットを取り出していた。

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