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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
98/145

妖精の里

 外は豪雪が吹き荒れている。

 だが、洞窟にいればその雪もどこ吹く風だ。

 洞窟って素晴らしい。ビバ!洞窟!

 でも、だからってここに住みたくはねえな。昔の人はこういう所を切り開いて整えて暮らしていたらしいけど、今の生活に慣れてしまっては、昔の人すげーな、と感心するしかない。

 まあ、洞窟の有能性などどうでもいいのだ。

 今現在、その洞窟の中を進んでいるわけだが、誰かが掘り進めたのか、自然現象でこのようなトンネルができたのか分からない。


「どこまで行くの?」


 ロロちゃんは俺たちをここまで案内してきた妖精に話しかける。こちらの自己紹介をしたのに、向こう側は妖精だという以外の情報を渡してくれないのだ。だが、俺たちもこの辺りの地域に悪魔がいるという情報しか掴んでいない。半ば情報収集がてら、付いて行っているようにも感じられるぐらいだが、ロロちゃんだけは違うだろう。

 なんでも、この妖精はロロちゃんに用があるといい、ロロちゃんのことを知ってるようなのだ。もっとも、ロロちゃんは向こうのことを知らないようだが。


「とりあえず、お前が案内したいところに着く前にどういうところなのか教えてくれよ。何にもわからんまま、行きたくないんだが」


「あなたは旅をする前にネタバ……もとい前情報を掴んでから行くんですか?」


 ネタバレって言おうとしただろ。


「目的なき旅ほど意味のないもんもないしな。一応何かしらの目的を持ってからそこへと向かうもんだ。まあ、行く途中で寄り道することはあるにすれどな」


「私が今から案内するところも寄り道程度のことで考えておいてください。何か得るかどうかは分かりませんから」


 どうあっても、前情報を与える気はないようだ。話せない理由でもあるのか、この妖精自身あまり話したくないのか。そう考えるときな臭いところだな。


「そろそろですよ。まあ、身構えることはありません。のどかなところですから。最近は」


「最近は……ねぇ」


 ついこの間まではその雰囲気すらもなかったかのような物言いだ。


「さあ、出口ですよ」


 少し先に光が差し込んでいる。あそこが出口だろう。

 誰が作ったのか、もしくは作られたのか。何かしら意図的なものを感じる。何故だろう。

 ここは今だけ開かれているような、でもいつかは閉ざされる。そんな感覚。


「ソード、どうしたの?行くよ?」


「ああ」


 先に駆け出して行っているロロちゃんを追うように、みんなは走り出していた。

 それに気付けなかった俺は、ウィナに声をかけられて我に返り小走りのスピードで走り出した。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 妖精の言う通り、見た目上はのどかなように見える。

 だが、逆にそれが偽りのようにも見えて仕方ない。のどか過ぎて、違和感を出しているのだ。

 何も起きてないことにはいいことなのだろうが。


「妖精さんよ」


「はい。妖精さんなのです」


「そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーか?」


「そこまで勘繰ることもありませんよ?むしろそこまで勘繰る人も初めてですよ。せっかく妖精の里。いわば、エルフの住む国へと足を踏み入れたんですから」


「妖精とエルフは別種族じゃなかったのか?」


「精々大きさと生理的機能が備わってるかどうかの差ですね。ですが、やはり暮らしは別々ですが」


「それはいいんだが、今更ロロちゃんをまた連れてきてどうする気だ?」


「……中々バカみたいな面して、鋭いですね」


「辛辣な言葉ありがとう」


「どういたしまして」


「皮肉だよちくしょー‼︎」


「叫ばないでください。あなたも他の人たちみたいに色々散策してみては?」


「そういうわけにもいかん。今は俺がロロちゃんの保護者だ」


「はて?あの子の親はあの魔王、という話ですが?」


「やっぱり知ってんじゃねえか」


「おっと。私としたことが口を滑らせてしまいました」


「やっぱりあの子の母親のことだろ」


「聞いていたのですか?」


「父親が魔王、母親がエルフだってことだけな。それ以上は追求してないし、ロロちゃん自身が話したくないのなら俺たちはそれで構わない」


「……話したくない、ではなく話せないのですよ。あの子は何も覚えてないんですから」


「なに?」


「ここでする話ではないですね。長のところへ行きましょう。一刻を争うわけでもないですが、私はあの子をここに連れてくるように頼まれているので」


「裏はないんだな?」


「……私にはないと言っておくです。終わったことをまたほじくり返すのか、それは長の考えのところですから。詳しいことはそこに着いてから、長から説明があると思うので、みなさんを集めてください」


「というか、あいつら自由に歩き回りすぎだろ。落ち着きというものはどこへ無くした」


「逆にいえば、あなたが動かなすぎです。エルフの伝説をこ存じないわけではないでしょう」


「んなもん眉唾だろ。エルフの羽を煎じた薬を飲めば不老不死になるだとか、エルフの血はどんな怪我も治すだとか」


「あながち間違いでもないですよ。ただ、不老不死ではなく、衰えが少なくなるだけですが、ちゃんと寿命も存在しますし」


「妖精はどうなんだ?」


「エルフより短いです。だいたい50年生きれば大往生ですから、平均的には30後半〜40前半ぐらいが寿命ですね」


「太く短くというわけなのか、別の動物みたいに、人間には一秒に感じるものが、倍の秒数に感じて生きてるみたいなものなのか?」


「どんな生き物にも等しくコマ数というのが決められているそうです。そのコマ数に到達したら寿命ということですね。ですから、人間は無駄に長生きなんです」


「お前は人間に何か恨みでもあるのか」


「いえ、妖精はないと思いますが、エルフの皆さんはあるかもしれませんね。ほら、あそこに」


 妖精が指差す方向に目を向けると、なんかエルフに絡まれていた。

 絡まれているのはアリスとスターだが、比較的小さい部類のアリスよりもさらに小さい。


「あれ、子供のエルフか?」


「いえ、ちゃんと成人してますね。あれもエルフの特徴です。エルフの世界では150cmもあれば大きい部類です。平均は140cm前後でしょう」


 なんだっけ。小人があんな感じだったような。ドワーフっていうんだったか?でも、あれだとさらに小さいな。あれよりは少し大きいと考えればいいか。ただ、そう考えるとロロちゃんが小さいのも血なのか。12歳ぐらいの年頃にしては小さいと思ったが。女の子のほうが比較的成長は早いため、多少はあれぐらいなら背が伸びててもおかしくはないと思っていたのだが、合点はいった。


「のんびり見てるわけにもいかねえな。ちょっと付いてきてくれ。回収するぞ」


「ええ〜めんどっちいです」


「お前が連れてきたんだから、ちゃんと説明をしてくれないと毎回突っ掛かられることになるだろうが」


「仕方ないですね〜。こればっかりにしてくださいよ。次は絡まれないようにしてください」


 そもそも絡まれることがわかっていたのに放置していたあなたサイドにも問題があると思うのですが俺だけなんですかね?

 アリスとスターが気が優しいのをいいことにドワーフさんはなんか言いたい放題言っていた。俺たちが先に着く前に、ウィナとロロちゃんが助太刀に向かって、何故かロロちゃんが論破していた。


「見慣れないからって、なんでも言っていいなんてことないんだよ?種族が違うからって非難していいなんて教わったの?この二人があなたに何か迷惑かけた?私たちだって来たばっかりなんだから、頭ごなしに言われても何も分からないし、ちゃんとここに来た理由はこの妖精さんが説明してくれるから」


 俺たちが来たのを確認して、ロロちゃんは妖精にバトンタッチした。


「またお前達か妖精。こっちに迷惑かけるなと言ってるだろう。人間なんて見たくないんだよ」


「なら、あなたは一生自分の家に閉じこもっていればいいでしょう。一生人間に会うことなんてないでしょうし、そもそもあなたたちを匿うために私たちは場所を提供しているのですよ?追い出されたいんですか?」


「ぐっ……とにかく!人間が私たちの居場所を荒らさないように見張っとけよ‼︎」


 ドワーフさんは羽を生やして飛び去った。あれってしまうことが可能なのか。俺も飛びたい。

 違ったな。今はそんなことどうでもいいや。


「立場的にはあんたたちの方が上なんだな」


「ええ。元々エルフも奥深く、人目につかないような場所で暮らしていましたが、魔王襲来以来、人と容姿が違うためモンスターと間違わられ、人間に迫害されました。多分、伝説はその時に捕虜になったエルフを実験体にでも使ったのでしょう。まあ、あまり気分のいい話ではないのでここらで打ち切りにしておきます。結論としては、私たちが居場所をなくしたエルフを匿う形でここに案内したんです。ここへは、私たちが案内する以外入る方法がありませんから」


「魔王襲来っていつの話だ?」


「3,40年前の話のことですね。ですから、先代魔王の時です。正直なところは今の魔王については完全にとばっちりなわけです……これは向こうで話しましょう。ま、エルフは私たちと違って長生きですから、迫害の現場を見てきた人もいるので、先ほどのどわ……エルフもいるわけです」


 だから、ドワーフって言おうとしただろ。俺もさっきからドワーフ、ドワーフ言ってたけども。


「パパのこと知ってるの?」


「ですから、あなたのことをこうやってここへと案内したわけです。ただ、思ってたよりも純真に育っていたようですが」


「パパだって、別に邪悪な心持ってるわけじゃないもん」


「結局、憶測だけでイメージは固められてしまいますからね。実際がどうであるかは重要ではないのですよ」


「魔王っていうだけで、イメージ悪いからなあ」


「パパ……悪くないもん……」


「そんな顔すんなって。魔王は別に悪い奴じゃない。悪い奴なら、今でも侵略の手が伸びてるはずだからな」


「ソードはパパを悪人だって言わないの?勇者なのに?」


「俺はそんな節操なしじゃねえよ」


「女の子に対しては結構節操なしだけど」


「誰だ、そんなこと言ったやつ」


「エド」


「魔王は信じてもあの人のことは信じるな」


「元パーティメンバーなのに疑いすぎだよね」


 元パーティメンバーだからではないでしょうか?本性を知ってるのでこんなことになるんだと思います。


「節操なし勇者のことはおいといて、話を進めたいので、私についてきてください。ここに連れてくるように言った長のところへ案内します」


 おいとくんじゃねえよ。一番重要なところだろ。

 俺の言葉など聞くはずもなく、みなさん妖精へとついて行った。

 ねえ、俺が節操なしだと思ってないよね?

 みんなが俺のことを信頼してるものだということを、信じて少し遅れて歩き出した。

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