銀色世界
白銀に染まる景色。
白く柔らかいものが降り積もった地面。
俺たちはまだ見ぬ景色に立ち尽くしていた。
……吹雪のせいで。
「誰だ!こんなところに行くとか言ったやつ‼︎」
「ソードでしょうが‼︎」
「まあまああんまり叫んでると余計に体力消費しちゃいますよ」
「さ、さささ寒い〜」
「ロロちゃん、これ着とけ」
「ソード大丈夫?」
「動けばいいんだよ。もしくは洞窟でも見つけようぜ。街につくより早く見つかるかもしれんぜ」
「そういうところに限ってダンジョンだったりするからな……」
その白い息すらも雪によるものなのか、寒さで吐息が凍ったものなのか判断ができない。
俺たちの頭にも大分雪が積もってきていて、動きにくい。早いところ見つけないとな……。
「ん?」
「なんかあった?」
「いや、視界の端に何か光ったから」
「あ、あそこ!」
アリスが指を指して、俺が言った光るものを発見する。
どうやら、なぜか滞空してる様子。
「ついて行ってみるか?」
「指標になりそうなものもないしね」
俺たちが近づくと、ゆっくりと進んでいく。どうやら、本当に俺たちを案内してくれるようだ。いつの間にこんなVIP待遇になったんだ?いや、VIPならこんなところで徒歩で歩き回っちゃいないな。
文句は言わないでおこう。道標があるだけ大助かりだ。
……せめて、行った先で大ボスが出てこないことを祈ることとしよう。
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光の案内のもとに歩いて行くと洞窟に辿り着いた。話聞いてたんか?というか、あの光は一体なんなんだ?
「捕まえた」
「こらこら」
ロロちゃんがここぞとばかりに野生化しおった。その辺を飛んでるもんを素手で掴むんじゃない。潰れちゃうかもでしょ。
ロロちゃんが握った手を広げると、光の物体?は少しぐったりしていた。
「いきなり捕まえるからだろ」
「捕まえとかないと逃げられそうで」
UMAにでもあったかのように嬉々とするんじゃない。ちなみにたいていの未確認生物はこちらではモンスターということで片付けております。
「にしても小さいな」
「なんか……人?みたいだけど」
「何なんだろう」
ぐったりしているようだが、一時的なものだったらしく、すぐにノビをした。
特に羽とかが生えてるわけでもないし、どこかに発光する機能が付いてるようにも見えない。
先程はどうやって光りながら飛んでいたのだろうか?
「メーデー。メーデー。聞こえるか?」
「うるさいです!」
「め、目がぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」
ロロちゃんの小さな手のひらから、さらに小さな身体を跳ねさせて、俺の目へと突撃してきた。あまりの痛みに下がゴツゴツとした地面と知りながらのたうち回る羽目になる。
「メーデーってなに?」
「遭難信号だったかな」
「若干間違ってないような気がするけど、連絡する相手は間違ってるよ」
「確かにここで連絡したところで助けが来るわけではありませんからね」
ねえ、皆さん。冷静に考察する前にすることあるでしょ?
「ソード。いつまでそうやってんの?」
「ちょっとは誰か心配してくれよ‼︎」
「まずは自己紹介からですね」
ねえ、年長者は敬うものだよ。君たちみたいに若いうちからぞんざいに扱ってるといつか痛い目見るよ。
実際に痛い目を見てるのは俺だが。主に物理的理由で。
「う、うう……デカイ……」
「そりゃ、君から見たら大きく映るだろうね。うーん。ということは人……ではないのかな?」
「その通りなのです!そこのお兄さん!」
「じゃあ、君は何者だい?」
「かの有名な妖精さんなのです」
なのです。だそうです。
妖精だからといって女の子のイメージでいてはいけないよ?今、俺たちが対面してるのは女の子っぽいけど。
「性別はメスです」
「そんな動物のような……」
「人間と違って生理的現象はありませんから。あれば食べるし、服を着たりしますがね」
ずいぶん親切な妖精だな。自分の情報をペラペラと喋ってくれるぞ。
「妖精……ってことはエルフと同種なのか?」
「エルフの方がより人間に近い存在なのです。でも、私たち妖精の方が分母が少ないので私たちの方が上位種族なのです」
それを聞く限りだと、人間も等しく妖精より下等生物だとでも言いたそうだな。確かに、分母が大きいほど食物連鎖的に下というのはどこかで聞いた話ではあるが、ここまで小さいと逆に食われる側だろう。話せて、知識があろうとも体格差は覆せるものではない。
「そこのデカイ人。不思議そうな顔してるのですね。では、私が華麗に説明して見せましょう」
あんたから見れば全員デカイ人だよ。だが、この妖精から見えてる世界がどんなものなのかは正直興味がある。
「まず、人間は二足歩行に進化しました。むかーし、昔は4足歩行だったのにも関わらずにです。これは、生活をより便利にするために進化したものだと考えられてます。ですが、4足歩行の方が運動能力の面で関していえば、圧倒的に上です。それなのにですよ?食物連鎖では人間が最上位に君臨しています。何故だと思います?」
「人間には考える頭があったからだよ。だから、道具を使い、自分より大きな生き物に対抗し、食物連鎖のトップに立つことができた。これでいいかな?」
「そこのお姉さん、大正解です。ですが、人間が私たちより下等だと言うのは一応理由はあるのです」
「一応聞かせてもらおうか?」
「確かに食物連鎖上で一番上に立つのは人間です。ですが、愚かしいことに知識を持ったがばかりに、同族を殺すということが起きます。まあ、他の生き物にもそういうのはいますが、人間のように私怨に走ったりするのではなく、あくまで生きてくために必要なことなんです」
「妖精さんはお互いを傷つけあったりしないの?」
「そこです。私たちの世界へと案内しましょう」
「はい?」
「傷つけ合う世界がどんなに醜いかということを私たちの世界を見て考え直して欲しいです」
「…………ひとつ聞いていいか?」
「どうぞ」
「なぜ、わざわざ俺たちを捕まえたんだ?人間なら、この国にもいくらでもいるはずだ」
「そんな人がわざわざこんなところまで来ないでしょう。ここから国へ入るにはまだ遠いですし、こんな所に観光気分で歩いてくる人なんていませんから、あなたたちは勇者一行でしょう?」
「ご明察」
「で、そこのお兄さんが勇者ですね?」
「いや、僕じゃなくてこっちのデカイ人」
「え……?」
そんな驚愕の真実を告げられたのような顔をするんじゃない。勇者といえば、若くてイケメンでエリートみたいな幻想でも抱いていたか。残念だったな。せいぜい若いぐらいしかないぜ。……自分で言ってて悲しくなってきた。
「ウィナー。ソードが一人で泣いてる」
「そっとしてあげよ。傷ついてるのはソード自身なんだから」
悔しくないもんね。勇者バカにすんな!
「別に勇者自体はバカにしてないですが、あなたはバカにしてます」
「というわけで、私が勇者です」
「今更胸張られても」
「てか、結局自己紹介出来てねえじゃねか。俺からいくぞ。俺はソード・ブレイバー。19歳。勇者だ」
「私は、ウィナ・ウィルザート。17歳で魔法使いだよ」
「僕かな?えっと、スター・グラスフィールド。17歳。元修道士で……今は何なんでしょう?」
「剣士でいいんじゃねえの?」
「というわけで剣士です」
「兄さん雑だよ」
「最初が一番雑だというか、その流れに乗ってるだけだから、文句はあの人に言ってくれ」
「まあいいけど。私はアリス・グラスフィールド。15歳だよ。恋に恋する女の子です♪」
物凄く嘘くさい自己紹介だなおい。
「ちなみに戦闘での役割はその時によって変わるからオールラウンダーだよ」
「あ、最後か。私、ロロ。12歳。魔法使いの見習い……ってところかな。一応、ソードの親戚」
ってことで通してます。
「……んー。ロロさん?あなた幾つか嘘ついてませんか?」
「つ、ついてないよ?」
「バラしたところで立場が危うくなるとか、私が案内しないとかはないので大丈夫ですよ。元より、一番はあなたのためですから」
「わ、私?」
「そうです。ロロ・アークハルトさん」
「なんで私のフルネームを……ストーカーですか?」
「違います。あとは来てもらえればいいです。でも、私はいいんですが、他の人から当たりは強いかもしれません。それだけは頭に入れておいてください」
「何が始まるの?」
「とりあえず、行ってみたほうがよさそうだ」
「私になんか当たりが強いらしいけど、くじ引きでも当たるのかな?」
「その意味の当たりではないぞ。まあ、大丈夫だ。目的がわからないからなんとも言えんが、俺たちが守ってやる。最初からそう言ってるだろ?」
「そこの勇者の言うとおりです。ネタバラしは向こうについてから話していくのでまずはついてきてください」
「って、ちょっと待て。お前の名前を聞いてないぞ」
「向こうについてから言います。細かいことをぐちぐち言わないでください」
流れ的に言っておこうよ。それが社交辞令というものだよ。
俺から言ったところで特に態度を変える気はないのだろう。
そして、またも妖精さんに導かれるままに俺たちは洞窟の奥深くへと進んでいく。




