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魔王拾いました  作者: otsk
荒野のオアシス編
95/145

力の代償

 前に泊まった宿とは別の宿を取り、わざわざ分けるのも面倒だということで一部屋だけとった。

 その代わり、男連中は床だって。酷い扱いです。

 まあ、金をケチったのもあるだろう。服買ってたし。

 そして、夜。俺はウィナを連れ出していた。いや、別に告白とかじゃないです。


「どうしたの?いきなり」


「お前にしか頼めないからな」


 ポケットから二つほどの欠片を取り出す。

 まあ、相も変わらず文字が書いてあるわけだが。おかげで、『これが……』みたいな驚きが全くないです。


「どこで手に入れたの?」


「……誰もいねえよな?」


 辺りを見渡して、人影の確認をする。いや、逆に多くの人がいた方が紛れていいのかもしれない。大概、自分の知り合い以外は大して気にも留めてないからだ。

 でも、ここは宿だし、大した人気は期待できない。そうならば、物陰に行くしかない。だから、何もしないから。


「まさか……ソード……」


「そう疑心暗鬼になるなって。これ、戻して欲しいのとこれの入手経路をお前だけには話しとこうと思ってな」


「誰からなの?その辺で拾ったとかはやめてよ」


「流石の俺もそんなことはしねえよ……。これは、魔王から直接もらった」


「ま、まおっ!」


「声がデカイ。魔王が地上に降りてきてるなんて出回ったらそれこそ大問題だ。今、魔王はセイバー・アーレンに扮している。そもそも、最近出てきたのだから、元々いたやつでもないんだろう。あいつから、言伝を預かってんだ」


「言伝?」


「三ヶ月後、魔王城の真下に魔王城への道を作ってくれるそうだ」


「…………」


「……やっぱ信じられねえか?」


「ううん。ソードは嘘はつかないから。誤魔化すの下手だし。でも、なんでわざわざ魔王が私たちの手助けをするの?」


「少し、話し合ったんだ。あいつも思うところがあったんだろうな。そもそも、この世界に来たのも侵略が目的でもなかったらしい」


「やっぱりロロちゃん?」


「みたいだな。昔、人間が魔族に歩み寄ったって話あったろ?」


「魔法を教えてもらったっていう?」


「そう。向こうの世界じゃ、寂れっぷりもいいところで、こっちに来た時に驚いたみたいだ。魔王自身は人間と仲良くやりたいらしい。だけど現実は……」


「魔王を人間が敵だとみなしてるってことだね」


「そ。だから、魔王だって無抵抗のわけにもいかないから、反撃したそうだ。それが、たぶん火種だったんだろうな。魔王=危ないやつって図式が成り立ってしまった。いつか、ロロちゃんも狙われるようになって、5年前に城の外に出したみたいだ」


「5年も前?」


「その時、ロロちゃんがどれぐらい成長していたのか知らねえけどな。もしかしたら、魔王はついてなくてもお母さんは付いて行ってたのかもしれないし」


「向こうでの成長速度が遅くてもこっちで、急に成長することだってあるかもしれないしね」


「その辺りは置いておくとして、ロロちゃんは確かお母さんはすでにいないはずなんだ」


「あっ……」


「途中で病気になったとかならまだ分かんなくもないが……」


 最悪のケースを想定する。ただ、それはロロちゃんだけが知る領域だ。俺たちが踏み入るところではない。だが、俺が考えてるのは全て憶測の範囲を出ない。

 ただ、ロロちゃんが人間に限りなく心を開いてるところを見ると、とくに人間に恨みを抱いているようには見えない。


「何か思い当たる節が?」


「いや、ロロちゃんさ、一応魔王とエルフのハーフだって話じゃん。だけど、あまりエルフの方は話しねえなって思ってさ」


「お母さんがエルフだったからあまり思い出したくないとか?」


「もしくはあまりエルフにいい感情を抱いてないか、のどちらかだな」


「どちらにせよ、今一番やらなきゃいけないのは儀式だね。今日やっちゃおうか」


「いいのか?無理しなくても」


「時間は少ないんだよ?やれることは今日のうちに終わらせる!」


「こっちとしてはありがたいんだが……」


 ウィナがいいと言ってるからそれに甘えているわけだが、これは俺が力を取り戻す代わりに、ウィナの疲労が半端じゃない。

 元々、疲れ知らずだったはずなのに、儀式で弱った姿を見るのは、俺はいたたまれない。

 ただ、だからといってまとめてやるのも、余計に力を使うわけだが。


「ソードがそんな顔しない。そういえば、前戻したのはパワーじゃなくて賢さだったね」


「あれ?そうだっけ?」


「そもそも手に入れた本人が忘れるのか……まあ、重いものが持てるようになったのも、いつもロロちゃんをおぶってるから力がついたんじゃない?」


「知らず知らずのうちに筋トレしてたのか……。でも、これも小さいとはいえ、二つあるんだぜ?体の方は大丈夫か?」


「私が倒れたら、ソードが運んでくれればいいから」


「ったく、俺も男なんだぞ」


「大丈夫。信じてるから」


 一緒の部屋で正解だったなと思った瞬間だった。部屋が分かれてると、いるやつが分かってても謎の抵抗が生まれるからだ。なんなんでしょうね、あの感覚。


「でも、どこかできそうな場所あったかな?」


「エドの家……は使えねえよな。魔法陣の処理もしなくちゃだし、外でやるか」


「ソードー。ウィナー」


 どこからか、俺たちを呼ぶ間抜けな声が聞こえる。ロロちゃんが探しに来たのだろう。


「とりあえず、出てくとしますか」


「そだね」


 物陰から出ると、ちょうどロロちゃんもたどり着いたところみたく、出会い頭にぶつかってしまった。

 まあ、ぶつかったと言っても、倒れたのもロロちゃんだけだが。


「もー!ちゃんと前見て歩け!」


「いや、曲がり角でそれやっても無意味というか、人が来ることわかってたら、俺は予知者だぞ。戦闘にも大活躍だ」


「二人でこそこそしないでよ」


「力の欠片を戻すために魔法陣を描かないといけないからな。良さそうな場所探してたんだ」


「本当?」


「嘘ついてもしょうがないでしょ?」


「なんか隠し事してるって私の感が言ってるよ」


 どこにそんな敏感なセンサーをつけたんだ。

 まあ、俺も咄嗟にしては、そこそこの言い訳を出来たと思う。力を戻す儀式は俺とウィナ以外には関係のないことだからな。他の人がいても仕方のない話なのだ。

 ロロちゃん相手にあんまりごまかしたくもないが、当事者であるので、話すこともためらってしまう。

 ウィナの方も口は堅いので、黙っててくれるだろう。


「とりあえず、この辺りは使えそうにないから別のところ探しに行ってくるね。ロロちゃんは先に戻って寝てていいから」


「わたしの活動時間はどんどん削られていくよ……」


 ちゃんと日中も起きてればいいのではないのか?と考えたわけだが、ロロちゃんにはそんな考えは毛頭ないのだろう。基本的に寝ること自体が好きな子だし。まあ、寝るまではスターかアリスに構っててもらおう。

 フラフラと元の部屋へと戻っていくロロちゃんを見送ってから、本題に戻る。


「まったく。誰の差し金なんだか」


「アリスぐらいしかいない気がするけど」


「諦めたんじゃなかったのか?」


「さあてね。でも、やっぱりこの辺りだと出来そうにないし、外に行こっか。よほど、襲撃されることはないと思うし。でも、その代わり儀式やってる間は、私は無防備だからソード頼むよ」


「それって、俺が動いてもいいもんだったっけ?」


「半径10m以内にいればいいよ。……たぶん」


 たぶんって言いました?もっとも、俺もおとなしくしてればいい話なんだが、やはり妨害されないような場所は欲しいものだ。


「やっぱりエドさんに頼む?」


「別に暴発するようなものでもねえしな。でかい紙にでも、書けばいい話でもあるし」


「それを考えると、手間のかからない地面のほうがいいんだけどね」


「つべこべ言っててもしょうがねえな。頼むことにしよう」


 ーーーーーーーーーーーーー


「あたしの家は連れ込み宿じゃないのよ?」


 開口一番ひどい言い草だった。


「ちげーよ。場所を提供してほしいんだ。外だと人目に着いた時にどうなるか分からんし、宿だと好き勝手使えないからな」


「あたしの家は好き勝手使ってもいいような言い方ね……」


「宿よりはある程度融通が利くだろ」


「まあ、いいわよ。減るもんじゃなさそうだし。やっぱりうちに泊まってけばよかったじゃない」


「そこまで世話になる気はない」


「結構お世話になってる気がするけどね……」


「外にいちゃ寒いでしょ。入った入った」


 ガチャ


「なんで鍵閉めた」


「防犯対策よ」


「あんたほど強いなら、防犯どころか自分が防犯システムだよな」


「えらく買ってくれるじゃない。その心意気や良し。まあ、一人暮らしって言っても、こんな一軒家に住んでちゃ場所も余るってものよ。空部屋があるから使ってちょうだい」


「すいません。何から何まで」


「ウィナちゃんの頼みじゃ仕方ないわ。……前日は申し訳ないことしたし……」


 そっちが本音か。

 ウィナに異常に甘いのではなく、割と罪悪感で動いていたようだ。罪の意識があるのらよろしいです。ウィナを汚さないでもらいたい。


「二階の奥の部屋よ。終わったら片しといてね」


 キッチンの方へと向かっていくところを見ると案内はしてくれないようだ。

 大方、何か飲み物でも作ってくれるのだろう。


「じゃ、行くか」


「うん」


 思っていたより新しい造りの家だったので、少し遠慮しながら、階段を上っていく。階段を上り切って、廊下の突き当たりまで進む。エドが言っていたのはここだろう。

 ドアノブを回して中へと入る。


「広いな」


「と言うよりは何も置いてないっていう方が正しい気もするね。窓とクローゼットがあるぐらいだし。でも、これだけの広さがあれば、魔法陣も作れるよ」


「二つやる時は、二回魔法陣を作らなきゃいけないのか?」


「いや、時間がかかるだけで魔法陣自体は同じものを使えばいいから」


「さて、と」


「どうしたの?」


「いや、魔法陣描こうと」


「床に直接描かないよ」


「なんだと⁉︎」


「なんでそこで驚くの⁉︎」


 そういや大きな紙にでも描くとか言ってたか。でも、前は外で行ってたし、ミーナちゃんの家では専用の部屋があったぐらいだ。だが、魔法に乏しいエドの家ではそんなところはないだろう。かと言って、そのでかい魔法陣が描けるほどの紙があるかといえばまた別問題なのだが。


「大丈夫。紙ならあるから」


「でかした」


 そして、どこから取り出しのか分からないが、やけに長い筒状に丸められた紙を取り出す。

 広げると、ギリギリ部屋に収まった。そして、その紙にはすでに魔法陣が描かれている。


「こんなんあるなら、いつもこれ使えばいいのに」


「これは一度使ったら消える類なんだよ。ばあやさんにもらったの。使い所がなかったけど、今が使い所でしょ。じゃ、始めるよ。私の前に座った」


「こんな近くでやってたか?」


「私たちしかいないのに、対角線に離れてても変でしょ。私は中央にいなきゃいけないし」


「まあ、いいんだけどさ」


 二人とも中央に座り、ウィナは詠唱を始める。

 すると、魔法陣が光り、二つの欠片が輝きを増す。

 まず一つ目が、そのまま弾け、粒子となる。これで、一通りの流れが完了だ。

 そして、二つ目に入る。ウィナは少し肩で息をしているようで息苦しそうだ。だが、俺が話しかけてそれを中断させるわけにはいかない。やると決めたら、最後までやり切らないとへそを曲げるタイプだからな。

 二つ目の方は、少し時間がかかったが、一連の流れを消化し、魔法陣も同時に消滅した。

 床一面に広げた紙の上に、ウィナは倒れそうになったところを俺は抱きとめた。


「はあ……はあ……」


「大丈夫か?ゆっくり呼吸しろ」


「う……ん。はあ……はあ……」


「寝てていいぞ。俺が担いでやっから」


「ありがと……ソード……」


 そのまま、目を瞑ってウィナは眠ってしまった。

 礼を言うのは俺の方だよ。

 いつも頼りっぱなしだからな。これぐらいは俺がやってやらないと。

 とりあえず紙はそのままにして、ウィナを背負いながら、一階へと下りる。


「終わった?」


「そんな事後報告みたいな、聞き方をするんじゃない」


「そんなつもりはないんだけどね〜。どうしてもあたしが言うとそう聞こえるのか」


「ちょっと、ソファー借りるぞ。あとタオルあったら貸してくれないか?」


「自分で汚しておいてヒドイもんね」


「ちげーよ!汗かいてるからこのままだと風邪引くだろうが!」


「分かってるわよ。甲斐性なし貧乏性の根性なしにそんなことできませんもんね〜」


 俺の一般認識ってそんなんなの?いや、間違ってないけどさ。逆に当たってることに腹が立つ。


「あんたたちコーヒー飲めた?」


「ウィナは甘いのしか飲めない」


「意外にあんたよりウィナちゃんの方が子供舌よね。じゃ、タオル持ってきがてら、運ぶわ。……私がやろうか?」


「全力で拒否する」


「触りたい放題だもんね。弱ってることをいいことに」


 だから人聞きが悪いことを言わないでくれませんかね?俺だって、許してくれるならいつでも……。ゲフン、ゲフン。じゃなくて、エドに任せたら、ウィナが可哀想だ。

 極力見ないようにやるからご遠慮ください。


「はい。タオル。しょうがないから、あたしは退散してるわ。終わったら呼んでちょうだい」


 すたこらとどこかへ去って……


「襖の隙間から覗くな」


「バレた」


「バレバレだ」


「ちっ。バレたからにはしょうがない。退散!」


 いちいち元気なやつだな。年取ったんだからもう少し落ち着けよ。

 エドが今度こそ去ったのを確認して、ウィナを起こす。


「ん……」


「体起こせるか?」


「ちょっと……力が入らない」


「じゃ寝たままでいいぞ。今から少し体拭くけど大丈夫か?」


「……背中からなら」


「少し捲るぞ」


 シャツを少しめくりあげる。ウィナの程よい肉付きのくびれと白い肌が俺の目には眩しい……じゃなくて、体拭かないと。

 出来る限り目を逸らしながら拭いていく。


「くすぐったくないか?」


「大丈夫……」


「前の方拭いてくぞ。体浮かせれるか?」


「それぐらいなら」


 なんか疲れた状態のせいなのか、妙に色っぽい。くそ、アリスめ。いつもこんなことやってたのか。羨ましいぞ。

 女の子同士だから抵抗がないのかもしれないが。


「よし、上終了。あとは……」


 幸い下はスカートだったので、拭きやすそうだ。


「ウィナ〜下拭いてくぞ」


「や……ちょっ……それは……」


「どうした?」


「み……見えちゃうから……」


「極力興奮しないようにする」


「見る気満々じゃん!」


「元気だなぁ。じゃあ座るか」


「起こして」


「ロロちゃんみたいなことを……」


 まあ、別に文句もないので、抱き抱えてソファーにもたれ掛けさせる形で座らせた。


「ほら、脚閉じて」


 太ももから下に降りてく形で拭いていく。少しくすぐったかのか体をくねらせていたが、上よりは早く終わった。


「そこにコーヒー牛乳あるから飲めそうなら飲んでいいぞ。エドからの差し入れだ。じゃ、俺はタオル返してくるから」


「うん」


 少し快復したのか、タオルケットにくるまりながら、カップに手を伸ばしていた。

 エドは上かな……。

 階段の方に目をやり、少し物音がしていたのでそれを目指すことにする。


「エド。終わったぞ。タオルどうする?」


「早かったわね。もっと堪能して良かったのに」


「回復した時にボコボコにされるわ」


「何色だった?」


「…………」


 目を逸らしてその質問には答えないことにする。

 色は白でした。女の子は白ですよね。

 なんの話かって?靴下です。


「誰も靴下の話なんかしてないわよ」


「知ってたとしてお前に教えるわけないだろ」


「何なのかしらね。あたしの時だけ、鉄壁のガードがあるのよ。さっき階段上るときも、あんたが邪魔で見えないし」


 そんなに必死こいて覗こうとするんじゃねえよ。ウィナが知ったらまた泣きだすぞ。そしたら、もう金輪際来ないだろう。


「ったく、いい加減にしとけよ。これ以上ウィナからの好感度下げてどうする気だよ」


「前の旅でMAXまで上げたと思ったんだけど」


 過大評価しすぎだろ。これまでの行動でマイナスに下がってるの可能性もあるぞ。てか、どうやってMAXまで上げたなんて分かんだよ。


「ちなみにあんたは30%ね」


 妥当なところだろう。俺への判断は出来るのに、ウィナに対してなんでここまで盲目なんだ。


「ウィナちゃん可愛いわね〜」


「どういう意味でだよ」


「娘に欲しい」


 娘だったら何しても構わないとか言いそうで怖い。早いうちにかくまっておかないと、本気で連れ去られそう。主にこいつに。


「ソード。あんたこれからどうするつもり?」


「別に……宿にウィナと帰って寝るぐらいだけど」


「そんな近くの話をしてないわよ。この国を出てからの話」


「5匹目の悪魔の所在を掴んだ。次はそこへ向かう。そして、それが済んだらエルフの国へ向かおうと思う」


「エルフ?あたしたちが旅をした時は見つからなかったじゃない」


「大丈夫だ。どうにかして見つけるから。そうしないと、俺たちの旅は終わりそうにないしな」


「魔王倒してはいめでたし。じゃなかったの?」


「そう簡単なものでもないだろ。倒した後も俺たちの生活は続いてくんだし、例えば勇者としての役割を終えたら俺は何をしていけばいいんだろうな」


「ウィナちゃんのところに婿入りしてヒモにでもなれば?」


「一番最悪なやつじゃねえか。ウィナもそんなやつは御免だと」


「釘刺されてるのね」


「……聞かないのか?」


「何を?」


「いや、聞く気がないならそれでいいんだが……」


「あのちっちゃい子?……まあ、聞きたいことは山ほどあるし、根掘り葉掘り聞きたいけど、あんたも答えたくないんでしょ。ウィナちゃんも同様に」


「根掘り葉掘り聞こうとしたみたいだな」


「あの子も口が硬いわね。貞操観念と一緒で」


 だから、その一言が余計なんだよ。


「じゃ、あんたに一個だけ聴くわ。あの子は何者なの?」


「答えられねえな。旅が終わって、あの子が話してもいいって言ったら、土産話にでも聞かせてやるよ」


「即答ね。昔のあんたじゃ考えられないわ。何でも後ろに隠れて、何でも誰かに指示をもらってからじゃないと動けなくて、何でもウィナちゃんに頼りきりだった頃に比べて、自分で動けるようになったじゃない」


「褒めてもらってどうも。だが、餞別としても答えられないな。紙は回収してくよ。あっても邪魔だろうし」


「いいわよ。どうせ空き部屋だし、隅に丸めて寄っけとけば、邪魔にならないでしょ。それにウィナちゃん背負ったままじゃ、持ってくのも面倒だろうし、どうせあれももう使えないんでしょ?」


「相変わらず鋭いな。俺は全く気づかなかったけどな」


「ウィナちゃんがそんな非効率なものを持ち歩くこと自体がおかしいからね。さて、そろそろかしら」


「何が?」


「ほら、さっさと姫を運んでいきなさい」


「?」


 言われるがままにウィナがいる場所へと押し返された。

 ウィナはソファーに横になって、すやすやと寝息を立てている。

 あいつ、睡眠薬でも混ぜやがったな?


「よっ、と。さすがにロロちゃんよりは重いか」


「勇者が泣き言言わない」


「別に泣き言じゃねえさ。いつかは背負う気でもいたからな」


「いた?過去形なのね」


 旅に出る前の話だ。断られたからな。旅を終えて、その気持ちが本当なのかハッキリさせようと思う。

 正直八割がた傾いてるような気がする。最初のアドバンテージが大きい気がするけど。でも、最終的に誰を選ぶのかなんて分からない。そもそも選ぶ立場に置かれてない。選んでもらえるように頑張るしかないのだ。

 少し冷めたコーヒーを飲んで、眠気を覚まし、ウィナを背中に背負い直した。

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