誤報(2)
思わぬ形で宿敵の魔王と再会したが、結局、親ってなんだろうかと考え直す機会を得ただけだった。
まあ、いいことなんだろうけど。俺にとっての親は、恨む対象であると同時に尊敬こそしないが、感謝ぐらいは1ビットぐらいはするものだからな。親父の話であって、母さんには骨を埋めるまで誠意を持って感謝したいと思います。
魔王と別れ、次の行き先を決めたところで、エドの家を目指す。
あいつはまだやることがあると言っていたが、おおよそ、俺の予測であるが、教会にでも預けられていた子供を探し出して、あの建物で保護をするつもりなのだろう。
拠り所である教会はすでに壊れているのだから。
俺にはどうすることもできない。
ある程度精神も体も育ってなきゃ、俺では会話も成立させるのは難しいだろう。えてして、子供なんてそういうものなんだろうけど。
『親にもなったことない奴が知ったような口を利くな!』
魔王も、魔王である以前に父親だったってことか。ロロちゃんの母親はすでに亡くなっているらしいし、ロロちゃんの世話をずっとしてきたのだろう。俺では考えが及ぼないような苦労をし続けてきたんだろう。
だが、俺は一方の面だけを見て、魔王を否定した。
そりゃ、怒られるよな。人の苦労なんて、他人に理解できるはずはない。それが分かっただけでも収穫か。人は誰しもどこかで苦労しながら生きているんだ。
エドの家へと歩いてる途中、見知った2人が目の前を通った。
「スター、アリス」
「ソードさん。帰ってきたんですか」
「なんだよ。帰ってきちゃ悪かったか」
「最悪、金輪際会えないとか言ってたから……」
あのクソ弟。余計なデマを吹聴しやがって。簡単に死んでたまるか。
「何にせよ、無事ならいいんです。働いてください」
「もう、その必要はねえよ」
「え?」
「話すより先にエドを探そう。ウィナとロロちゃんは?」
「エドさんと一緒にいます」
「ま、当然か。どのあたりにいるか分かるか?」
「かなり離れてますよ?エドさんの家で待ってたほうが得策かと」
「集合時間とか決まってるか?」
「ええと……今、11時ですので、一応12時になったら、一度切り上げって言ってました」
「じゃあ、すぐ戻ってくんだろ。俺たちも帰るぞ」
スターとアリスを引き連れて、再び歩き出す。
どうでもいいけど、王家のご子息を二人とも従えてるよ。
この状況を王様が見たらブチ切れるんだろうな。いないからどうでもいいけど。
そして、俺の後ろで兄妹は仲良く手を繋いでるけど。
羨ましくなんかないもんね!一人だけあぶれてるから寂しいなんてことはないんだからね!
言い訳してると余計虚しい。
手を繋いでると言っても、大方アリスがフラフラどっかへ行かないようにスターが手を引いてるって言ったほうが正しいな。
以前は手をつなぐどころか、顔を合わせることもしなかったんだから、いいことだけど、俺だけ手持ち無沙汰で寂しいです。
俺の手は空いてますよ~。
所在は結局見つからずに、プラプラさせてるわけだが。エドの家へたどり着くまで見つかることはありませんでした。
「到着。そしてお邪魔します」
「開いてませんよ」
「鍵」
「ないです」
「あるよ。ソード君」
「でかしたアリス。無能兄貴とは大違いだ」
「誰が無能兄貴ですか」
「この時点で俺は鍵が欲しかった。だが、お前は持ってなくて、アリスは持ってた。ほら、アリスの方が有能だろ」
「無茶苦茶な論理をかまさないでください」
早速、アリスから鍵を受け取り……なんかデカイな。まあ、エドの家のやつは特別製なんだろう。
鍵穴に入れようと……
「入らねえよ‼︎どこの鍵だこれ⁉︎」
「わたしの部屋の鍵」
「今この場で渡されても使いようがないだろ!ていうか、アリスの部屋の鍵デカイな!」
「二つと作れないように、あと父上に入られないように」
王様、相変わらず娘から嫌われてんな。いったい何したらここまで嫌われるんだよ。思春期の女の子ってこんなもんなの?部屋の余計な詮索をしてくるのは、俺の場合、母親じゃなくてウィナだったけど。おかげで、俺の情操教育もウィナの情操教育も幼いままだよ。
「だが、この炎天下でボサッと突っ立ってんのも自殺行為だな。せめて、日陰探そうぜ」
「連絡取れる方法があるといいんですけどね」
「そうだ。お前、なんか伝書鳩みたいなの使ってたじゃん。お前自身が使えねえの?」
「あれは修道院のものですので、僕の一存じゃ使えません」
「ちなみに携帯などの類は充電など出来ないし、戦闘で壊れる可能性が高いので持ち合わせていない。家電は普通にあるぞ」
「誰に言ってるんですかね」
「見えない誰かにだよ」
扉の前でうだうだやっていたら、三人とも戻って来た。
「ヴァンのやつは?」
「自宅に帰ったわよ。特にこれ以上やれることもなさそうだったしね。まぁ、でも先に戻ってるとは思わなかった。悪かったわね」
「ソード、生きてたんだ」
「ロロちゃんまでなんて事を言うんだ」
「ヤバい組織に潜入してったとか言ってたから」
だから、あいつら適当な情報を撒き散らしすぎだろ。
誇大しすぎた情報を、エドの耳に間違って入ったとかそんなオチじゃねえだろうな?
「で、ソードの方はちゃんと情報を掴んだんでしょうね?」
「もちろんだ」
「じゃあ、ここに紙とペン持ってくるから、書いてポストに入れといて」
「ここまできてイジメ以外の何物でもないだろ!」
「冗談よ。みんな入って」
「「お邪魔しまーす」」
なんか腑に落ちないまま上がりこんだ。
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「かいつまんで言えば、別に女の子だけじゃなくて、普通に男の子もいて、その人はいわゆる足長おじさんをしてたわけか」
「足長おじさん?」
「身寄りのない子供を援助したりする人のことだよ」
「なら私もしてくれませんかね……」
「ロロちゃんには俺たちがいんだろ。もし帰れなくても、ロロちゃん1人ぐらいスターのとこが養ってくれるぞ」
「ロロちゃんならいいですけど、それについてソードさんは上がりこまないでください」
「なあ、スター。俺のこと嫌いか?」
「父よりマシ程度です」
めちゃくちゃ低いですね、俺の好感度。アリスルートが消滅した以上、俺に王族になる資格は残されてはいまい。
「はっ!」
「なに?」
「ウィナがスターと結婚して、俺とも結婚すれば俺も王族になれないか?」
「そもそも私が重婚してるからおかしいんだけど」
「昔々の殿様は何人いう妾をそばに置いていたらしい」
「私殿様じゃないし!結婚するなら一人だし‼︎」
「その一人は決まってるのかしらね〜?」
「そりゃ〜ソー」
「「今ここで言うなー‼︎」」
「ムググ」
二人でロロちゃんの口封じ。
人を弄って何が楽しい?
まあ、反応見て楽しんでるんでしょうね。性格悪いなあんたら。
「……それはそうとして、その人のことはどうするの?仮にも指名手配までされてるんだよ?」
「正当化されることはないんだろうけど、汚職は密告しておくよ。資料はもらったしな。まあ、そいつも一ヶ月もしたら離れるそうだ」
「子供たちはどうするの?」
「エド。話来てるんだろ?」
「え?ああ……まあね」
「エドさんが?」
「どうやって嗅ぎつけたのか知らんが、そもそもあそこに近寄らなかったのも本当は答えを知ってたんだろ。なんで、わざわざ俺に行かせんたんだ」
「残しておけば、あんたは行くと思ったからね。あんたが来るって情報ももらってたし」
「セイバーにか?」
「いや?セドよ」
「はああああああ⁉︎」
セド?せど?セド・ギルフォード?
「なんであいつが俺たちの居場所知ってんだよ!」
「まあ、剣を置いてったのもあいつだし。セドだからって説明しかできないけど」
「あいつはそういうやつだわな……」
雲隠れしてたと思ったのに、以外に近くにいたな。
「で、それ訪れたのはいつだ?」
「一週間とちょっと前かしらね?」
「どうやって先回りしてんだ?」
「さあね。またどっか雲隠れしてんでしょ。何をしたいのか知らないけど」
「誰?」
「前に教えただろ?傍若無人の限りを尽くした、俺の元パーティメンバー。実力だけはズバ抜けてたな」
「あいつだけは私も認めざるを得ないわね」
「ちっ、あいつは後回しでもなんとかならあ。それよりも、悪魔の情報を得た」
「悪魔?あんたたちは一体何と戦ってるの?」
「失った未来とかな」
「魔王が力を奪って、七匹の悪魔に渡しちゃったらしいんです。だから、力を戻して魔王とまた戦うために悪魔と戦うハメに」
「あんたが普通に修行すればいいじゃない」
「今更普通に修行ができると思うか?」
「あんた見ない間に腑抜けたわね。喝入れ直したほうがいいかしらね〜?」
「だ、大丈夫ですから!私が見てますので!」
「ウィナちゃんが言うなら、しょうがないわね。で、行き先は?」
「ここから北へと行ったところらしい。世界の最北端?らしいぞ」
「なら、入る前に暖かくなる装備やら、道具やら揃えておいたほうがいいわよ」
「これじゃダメなの?」
「あくまでここで対応してるだけだからね。年中寒いような地域で、使えるか分からないわよ?」
「そっか……残念」
新しく買った服が気に入った様子。やっぱりロロちゃん可愛いや。
「ちょ、いきなりなんで撫でてるの?」
「可愛いものは可愛いと思った時に愛でとかないとダメだと思った」
「ソード。あんた、そんなに節操なしだった?」
「ロロちゃんだけだぞ」
「確かにあんたが撫で回したくなる理由は分かるわ……これはほっとけない可愛さね。今までなんで、放置されてたか分からないぐらいだわ」
「今でこそ人の姿だけど、ちょっと前は猫で生活してたらしい」
「猫?」
「今、変身するのは疲れるかヤダ」
「だそうで」
「あら、そう。どっちにせよ、明日、明後日あたりには出発するのね?」
「そうだな。出発する時はまた来るよ。世話になっといて挨拶しないのもなんだしな」
「うちに泊まってけばいいじゃない」
「一人暮らし用の家に、全員で6人も寝れるか」
「五人はなんとかなるわよ」
「俺だけ出てけってか」
「感がいいわね。お姉さん、そういう子嫌いじゃないわよ?」
「お姉さんというには無理なと……」
殺気を感じたので、一歩後ずさる。
そして、飛び跳ねるのようにして、扉に向かい、ドアノブを回した。
「とりあえず、また来るからよろしくな!」
「次会った時、覚えておきなさいよ!」
どうしよう。行きたくなくなってきた。いやだって、事実じゃん。25歳だぜ?いや、まだいいのか?でも、俺から見たら、あれなので。慣れって怖い。あれとかそればかりで具体性何もないけど。
結局、エドが捜査していた幼女連れ去り事件は、セイバーの慈善事業ということで幕を閉じた。
きっと、クエスト出す側も知っていたから、何も出してなかったんだろうな。セイバー自身、名前をここでは変えてると言っていたし。正直、当事者以外はそこまで気にしないものだ。
今日はお開きだ。ゆっくり睡眠をとることにしよう。




