誤報
明朝。朝に弱い俺とロロちゃんだったが、俺だけ叩き起こされる。
理不尽だと思います。
ロロちゃんは俺が背負って、宿を出発。
すでに睡魔が襲ってきてる状態だが、ウィナに尻を叩かれながら、エドの家へと歩いていく。
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「あら?早かったわね」
「早かったわね、と言う割に用意は全て終わらせているお前に驚きを隠せないんだが」
いつから起きてるんだよ。もしかしたら、寝てないという可能性もある。
なお、こいつに限ってはそれはない模様。
やたらに早起きで、鍛錬とかしているのだ。武闘家の名は伊達じゃねえや。
「姉貴?誰かいるのか」
「お客よ」
「げ」
「げ、とは挨拶だなあ……名前忘れた」
「無理に思い出してもらわなくてもいいです。むしろ忘れててください。そのまま一生思い出してもらわなくて結構です」
どんだけ自分の名前を覚えてもらいたくないんだよ。エドの関係者だと分かったからか?
姉が横暴だから、その近辺にいたやつも横暴だとでも思っているのか?
そんな事実はどこにもない。
横暴だったのは、エドとセドぐらいです。パーティの半分を占めてる時点でおかしいけど。
「確か…ヴァン君だったっけ?」
「げ、覚えられてた」
「うちのウィナをバカにするな」
「誰があんたのよ!」
「痛い痛い、ロロちゃん落ちるから」
「ふぇ?」
起きたようです。
「どこ?」
「エドさんの家です」
「なぜ?」
「昨日の話を覚えてないんかい」
「あ~……くぅ」
「もう寝かせておこう。エド、ベッド借りるぞ」
「二人で寝ないでよ?」
「この子寝かせるだけだっつーの!」
いったい俺をなんだと思ってやがる。
しかも今の言い方だと半ば容認してないか?
世間体的にも、パーティ内という意味でも波乱必至、崩壊間違いなしだろ。
寝ているぶんには可愛いけど、起きてるとさらに可愛いです。あれ?なんかおかしいぞ。
無限ループに可愛いって言い続けてそうだから、早々に退出した。
「で、俺たちはどの辺りを探せばいいんだ?」
「あの子は連れて行かないの?」
「まだ起こすには早かったな……」
「基本的に夜に行動するタイプの子なんで……」
「日が昇ってるうちはまだ行動できないの?」
「いや、目が覚めれば、出来る限り日が当たらないようにして行動をする」
「かなり日に弱い子なのね……」
「まあ、体質らしいから……」
ここでも一応魔王の娘であることは未だ伏せている。気づかないふりをしてくれているのか、俺が誤魔化してるのが、通じているのか、なんにせよ、知らないふりをしてくれてるのはこちらとしてもありがたい。
うちの前パーティメンバーはやたら勘の鋭い奴らばっかりだったから、俺は肩身がいろいろ狭かったです。
「西の方はあらかた捜索したから、東の方を手分けして探しましょう」
「目星みたいなのはあるのか?」
「一個あるんだけどね……手続きが面倒なのよ」
「じゃあ、俺がそこに行ってきていいか?」
「手続きを受理してもらうのは、明日になるわよ?」
「構わねえよ。それなら、手続き終えたら俺もこっちで調査すっから」
「まあ、広いから人手があるに越したことはないしね」
「じゃ、行ってくるわ。……道が分からないから、どっちかついてきてくれ」
「じゃあ、ヴァン。行ってあげて」
「何でだよ!姉貴が行けばいいだろ⁉︎」
「行ってきなさい?」
「う……い、行かせていただきます」
二度目の抵抗を許さずに承諾させるのはこいつぐらいだろう。
もっとも本性知っていればの話だが。
見た感じは気の良さそうなやつであるからである。見た目に騙されるなってことだね。
「悪いな。じゃあ、ロロちゃん頼むぜ。ついでに、スター。お前が一番さしっかりしとくんだぞ」
「?は、はい」
いまいち俺が言ったことを理解してないようだったが、それについては俺と、弟であるヴァンがいなくなったら分かることだろう。
釘はさしておいたので、手続きを取るために、みんなを残してエドの家を出た。
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「逃げましたね?」
「お前もよかっただろ」
逃げた、というわけでもない。
ただ舵取りをしてもらうためにウィナは残したが、エドという人物をほとんど知らないまま、俺たちの元パーティメンバーというだけで信用するわけにもいかないだろう。
俺が舵取りしろよって話だが、俺が介入したらそれこそ色々こじれる上に余計な詮索が入ることが目に見えているからな。
「…………」
隣を歩く、エドの弟、ヴァン。正直まだ扱いは俺もどうしたらいいかわからない。ただ、話しかけてきたといことは、それなりに信用したのか、それとも単なる暇つぶしか。
ならば、俺も暇つぶしをするか。
「ヴァン。お前が思ってるほど、エドは怖くはないと思うぞ」
「別にあんたに言われなくても、あんたより長く一緒にいたんだ。それぐらい分かってる。でも、姉という存在に弟は逆らえないんだ」
「そういうもんか」
「そういうもんです」
「俺、一人っ子でさ、近くに兄妹がいるが下の方が結構、好き勝手やってるもんだから、世の中そういうもんだと思ったけどな」
「まあ、世の中にはそういうところもいるでしょうね。結局、バランスが取れるようになってるんだ」
「バランスねぇ」
魔王がいるから勇者がいるみたいなものでもあるか。
ただ、魔王側を悪と決めつけるのもよろしくはないのだが。
魔王にとっての正義かもしれないし、魔王側からしたら俺たちの方がよっぽど悪なんだろう。
どこかで、正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義だと聞いた記憶がある。
なかなかに言い得てる言葉だと思う。
結局、どちらも己が正義だと信じて行動しているわけだから。自分がやってることが悪だなんて認識で行動を起こしてるやつの方が少ないだろう。
まあ、だからその線引きとして法律なんてものが存在するのだ。やっていいことと、やっちゃ悪いことのバランスを取るために。
「で、手続きはどこでするんだ?集会所?」
「いえ、その立ち入り禁止区域の入り口です」
「なんで入り口まで行って、また引きかえさなきゃいけないんだよ」
「姉貴もそう言ってんだ。だから、後回しにしてたんだ。でも、一番怪しいのはそこなんだけどな」
「何かあるのか?」
「そりゃ、立ち入り禁止っていうぐらいだからな。でも、あそこにあんのはオアシスのはずなんだけどな」
「観光名所みたいなものか?」
「以前はな。だけど、気づかないうちに、立ち入り禁止区域になってた」
「なんで手続きをあいつは後回しにしてんだよ。1日経てば入れんだろ?」
「姉貴が後回しにしてる理由がよくわかんねえけど、やっぱり不愉快なことでもあんじゃないの?」
「兎にも角にも、一度行ってみればわかることか」
「みたいだな」
しばらく歩いていると視界の端に、何か映った。
「どうかしましたか?」
「いや、誰かいたような気がして」
「そりゃ誰か入るだろ」
「あと、お前は俺に対してタメ口なのか敬語使ってんのかどっちなんだ?」
「どっちがいいのやらと」
「敬語だとスターと被るな。タメ口でいいぞ。だが、最低限の敬意は払ってくれ」
「その言い方だと他の人たちに敬意が払わられてないように聞こえるな……」
言葉の裏をとるんじゃない。その通りだから否定もできないのが悲しい話だが。
「で、何が見えたんだ?」
「話戻ってくれんのね」
「そっちが振ってきた話だろ」
「うちのは自分の話に入ったら、止めるまで自分のターンみたいなやつらばっかりだし……」
主にロロちゃんとかアリスとか。たまに自分が何を話していたのか忘れるレベルまである。
「そっちの話はどうでもいいんだよ」
「だろうな。何が見えたってーと……どうだろうな、少し小さいぐらいの女の子が、一人でいたようにも見えた」
「ようにも見えた?」
「今現在、その姿は見えなくなった」
「なんでさっさと言わねえんだよ!」
「お前が中途半端は返答をしたからだろ!」
「だー!ここで言い合ってても仕方ねえ!探すぞ‼︎」
「だけど、女の子がそんな一瞬で姿を消せるか?」
「それもそうだな……やっぱり誰かが連れて行ったって考えるほうが妥当か」
「だけど、そんな芸当ができるもんかね?」
「あそこに行ってみれば分かることか」
「ここからどれぐらいだ?」
「ざっと、10分もかければいける」
「少し飛ばすか」
「走れるのか?」
「勇者。バカにすんじゃねえぜ」
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飛ばしすぎて、3分ほどで着きました。
誰だよ10分かかるとか言ったやつ。
まあ、おかげで息が絶え絶えだが。
「あ、甘いな勇者……」
「お前もだろうが……」
膝に手をついてはいるが、まだ崩れ落ちるほどではない。呼吸を整えて、歩き出そうとすると、視界の奥にまたも人影が見えた。
俺は急いで、受付と思われる場所に駆け寄る。
「ここって、関係者以外立ち入り禁止なのか?」
「そ、そうだが……手続きさえすれば、ある程度は見て回ることは一般人でも可能だ」
「今、入ってった奴は関係者か?」
「今?おい、誰か入ってったか?」
「ん?ああ、あの人は構わない」
「そいつ。ここで何してんだ?」
「なんだお前は。その人と知り合いなのか?」
「こちとら切羽詰まってんだよ……。今日のところはそれさえ聞ければ、後日出直すからよ……教えてくれ……ダッ!」
「何やってんだ!あんたは!」
「お前はエド様の……」
「すいません。この人旅の人で、ルールとかいまいち分かってないんで。ほら、早く……」
「あれはエドが勝手に調べていることなんだろ?」
「そうだけど、それがどうかしたか?」
「ならば公には問題になってないってことだ。なぜ、小さい子が連れ去られてるのに問題にならない?親が心配して捜索願ぐらい出すだろう」
「……ここに連れ込んでるってことか?」
「もう一つ可能性があるが、それは聞けばいい話だ。なあ、あんた。その人に会うことはできないか?」
「わたしの一存ではな……少し待っててもらえるなら、今から聞いてみよう。おい、受付は任せたぞ」
もう一人の担当に任せて、1人は中へと入っていった。本当ならば、それも後日という形であるだろう。だが、その姿を俺が確認している。ならば、入って間もないはずだから、どこかにいるはずだ。
「頼む」
俺は軽く会釈して、見送った。
「何をそんなに躍起になってんだよ」
「もしかしたら……今、追ってる奴かもしれないんだ。あいつの行き先を俺たちは知らない。だが、ここで捕まえておけば……」
「誰を追ってるんだ?」
「セイバー・アーレン。今、指名手配中の元クエストランキングのトップランカーだ」
「そういや噂になってたな。追求しようとしたやつが返り討ちにあってるとか」
「別に、俺自身はそいつに恨みがあるわけでもないし、報酬金に目が眩んで、受けたわけでもない。そいつがどんなやつで、何を目的としてそんなことをしたのか知りたいんだ」
「そう簡単に口を割るかね?」
「それも会ってみなきゃわからないだろ」
「そうだな」
一時間ほど経ったか、先ほどの受付の担当が戻ってきた。
「ついてきなさい。一応、監視のために私会ってる間も私は同行させてもらう」
「それぐらい構わねえよ。ヴァン、俺が帰るのに時間かかるって言っておいてくれ。あいつら心配するかもしれんし」
「……なんかおごれよ」
「気が向いたらな」
ヴァンは来た道を、俺はオアシスへと歩き出した。




