会いたい人、会いたくない人
「…………」
「…………」
俺たちは無言で荒野を歩いていた。
この世界にこんな荒れ果てた場所あったっけ?前の旅でこんなところ通りました?
「そりゃ、色んな場所があるんだから、場所によって気温も気候も違うし、それによって環境も変わってくるよ」
「ただ、ここまで何もないとなあ」
「あんまり喋ってると、喉渇きますよ。ただでさえ、この辺りは空気が乾燥してますから」
「そうだな」
一週間は持ち得る水分は確保してきたが、このままだと次の国へと着く前に全て消費してしまうかもしれない。
今は、一人一本ではなく、一本を回し飲みしてる状態だ。一人一本では、勝手に飲み過ぎて、どうせすぐになくなるという判断からだ。主に俺の心配をされて。信用ありませんね。
「ここ……暑い……」
「地面が干からびてるぐらいだからな。ロロちゃんは特に水分取っとけよ。ただでさえ日に弱いんだし」
「ありがと」
ロロちゃんだけ、全員で回し飲みしてるのとは別にボトルに入った水を渡しておく。
正直なところフラフラしているので、以前のように倒れるのではないかと内心ハラハラしているのだが。
「ったく。あの人のこんな酷暑の地域に住んでんのかよ」
「住んでるところはオアシスでもあるんじゃない?」
「あり得そうだな」
少なくとも、その国から出ないというなら、十二分に生活には事足りるだろう。だったら、なおさらこんな辺境の地から俺たちのパーティに加わったのもよく分からないけど。誰の推薦だよ。ぶっちゃけ、性格的に人選ミスだろ。
「ソード君。あれじゃない?」
「あ?」
アリスが指差す方向に何やら、賑わっている音が響いている。
確かにそれらしき、関所もあるしあれがエドがいると思われる国で間違いないだろう。
「じゃあ、もう一踏ん張りだな」
「も、もう……無理……」
「わー!ロロちゃん⁉︎」
暑さに耐えかねたのか、ロロちゃんが再び倒れてしまった。この子暑さに耐性が無さ過ぎる。海ではしゃいでいたのはなんだったんだ。
ただ、ここには背の高い木もないし、他に影が出来てるようなものもないので、ここで休息というわけにもいかない。
だが、ロロちゃんは見るからに疲弊しきっている。
「なんか、フードのついたもんか、帽子ないか?」
「帽子ならあったかも」
「鎧と一緒にあるような兜はやめてくれよ」
「私はそんなもの持ってません。……あった。はい、ロロちゃん。ちょっと暑いかもしれないけど、被ってて」
「…………」
すでに意識が朦朧としているのか、返事もできないようだ。
それでも、無理やり被せて、背中に背負う。
「慣れたものだね」
「週一ぐらいのペースでおんぶしてる気がする」
「あと、どれくらいだろ?」
「さあな。見えてるし、一時間もあれば行けると思うが」
「とりあえず歩こっか」
ーーーーーーーーーーーーー
「あかん……俺が倒れる」
「もう、目と鼻の先でしょうが!歩け!」
「せめてロロちゃんをパスして誰か受け取って」
「それはソードがやらなくちゃいけないことなの」
「そうなの?」
二人に確認を取るが、むしろ違ったのかという表情で見られた。
確かに俺以外に背負ってる奴を見たことがない。ロロちゃんも俺の背中で満足しているのか、文句も言わないのでいいのだが。
「ロロちゃんもソードだから安心してるんだよ。他の人だと違和感感じるんじゃない?」
「別に背負えるなら、誰でも良さそうなもんだけどな」
「ロロちゃんは結構人見知りだけどね」
「ああ……そうだったな」
俺たちと会った時然り、魔法使いの国で会ったミーナちゃんでも、向こうから来てくれたからよかったものの、多分こちらから近づくことはなかっただろう。
これから、俺たちには所縁のある人でも、ロロちゃんにとっては赤の他人もいいところだ。
せいぜいあの人が女の子が好きだということが幸いだけど、いかんせん、この子は魔王の娘なのだ。あの人が情報を漏らすとは信じがたいが、不用意に話すこともないだろう。だが、隠したままあの人の元を訪れてもいつかバレるだろうし、しばらく行動は共にすることになるだろう。
「ほら、ソード。ボーッとしてないで、着いたよ」
「ん?ああ、ようやく着いたか」
いつと間にか関所にたどり着いていた。
関所と言っても、形式的なもので、人は誰もいない。
なりふり構ってもいられないので、まずは、エドのところへ行く前に、宿へと直行することにした。
まあ、会おうとしても、あの人の家を知ってるわけでもないので、情報収集がてらだ。
「ハァハァ……」
「もうちょっとだからな。我慢してくれ」
苦しそうな息遣いのロロちゃんを励ましながら、先ほどの荒野とは打って変わって、整備された道を歩く。




