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魔王拾いました  作者: otsk
荒野のオアシス編
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指名手配

 有用な手がかりも得られそうになかったため、俺たちは新たにクエストを受注しに来ていた。

 だが、クエスト一覧に特異なものを見つける。


『指名手配犯を捕まえよ。場合によってはいかなる状態でも構わない』


 その指名手配犯とやらがセイバー・アーレンだった。


「今更、この辺りにいるのかよ」


「クエストというぐらいですから、大陸中に頼んでる場合もありますよ?」


「ええ。ここは被害を受けた場所ですので、重点的にこのクエストをしてくださるように頼んではいるのですが……」


 未だにここに残ってるということは誰もやってはないのか。それとも、失敗してここに再度張り出されているのか。


「この人の名前は知れ渡っているし、実力も折り紙付きですので、尻凄みしてしまって……果敢に行った人も返り討ちにあって全治3ヶ月の大怪我です」


「……それじゃ、他の奴らがためらうのは無理ねえな」


「どうします?これやりますか?別のにしますか?」


「まあ、元々ここへ来たのもこいつの調査だし、行方をたどるのも悪くない選択だとは思うが……」


「それ以前にここにきた後の足跡が分かりませんね」


「それなんだよな」


 闇雲に探し回ったところで、見つかるとも考えにくい。まだ近くにいるのならまだしも、セイバー自身も自分が指名手配されてることぐらい知っているだろう。

 ただ、こうも知れ渡っていては、ほとぼりが冷めるまで身を隠しているのではないだろうか。それとも、さらに罪を重ねるのだろうか。


「僕の勘ですが、まだ近くにいるような気がします」


「なんでだ?」


「あれほど実力があるのなら、わざわざ身を隠してるよりは、来たものを返り討ちにしている方が、手っ取り早いと思うんです。それに……」


「それに?」


「来るもの拒まずというか、戦闘に飢えているというか、そんな雰囲気を醸し出してましたから」


「一理あるな」


 もう一度クエストの受注書を見る。

 よく見ると期限は無期限。いつでも張り出されていて、早い者勝ちみたいだ。


「一人にこんだけ掛けてていいもんか?」


「それだけ重要な案件なんですよ」


「ええ……まだ、これを受注し始めたのは一週間ほど前ですが、張り出された当初こそ殺到しましたが、今では誰も受注していません」


「それが逆に釣り上げてんのか」


 報酬金がかなり高い数値に設定されている。危険度が高い証拠であることは前にも言った通りだが、相手1人のはずなのに、こうも捕まえられないものなのか。


「それこそ、本当に捕まえるではなくて殺すつもりでいかないといけないものではないでしょうか?」


「……スターよ。同族殺しがなぜ重罪か知ってるか?」


「……いえ」


「俺も知らん」


「とりあえず、受注さてもらいますね。報告はどこの集会所でもいいんでしょうか?」


「ええ。受注したら、大陸中に伝わるシステムになってるので」


 俺のツッコミどころ満載のセリフを無視して、スターはクエストを受注していた。

 ねえ、無視されるのが一番辛いんだよ?反応ぐらいはしようよ。

 報告書を受け取って、俺とスターは椅子に腰掛けていたウィナたちの元へと戻る。


「とりあえず受注してきた」


「結局やるの?」


「野放しにしてるわけにもいかないからな。世界各地に勇者がいるとしても、みんながみんなやるとも限らん」


「今のご時世にソードみたいな勇者が何人いるのやら」


「さあ……4,5人はいてもおかしくはないと思うけどな。血でなるのなら」


「でも、それだと勇者は全員ソードの親戚ってことになるね」


「うわ、気持ち悪」


「そのうちの一人が自分だということを忘れてますね」


「だが、ジイさん、バアさんのことは知らんし、親父に兄弟がいたなんてことも聞いたことないんだが」


「いや、そもそも勇者に該当するものがいなかった場合は推薦されるはずですけど」


「根っからの勇者はそういないってことか」


「初代勇者からの純粋なって意味ではそうなりますかね」


「じゃあ、ロロちゃんが見てきたっていうやつも、大半は適当に勇者を語っていただけかもな」


「なる。通りで手応えがないようなのが、多かったわけだだよ」


「ロロちゃんが戦ってたわけじゃないだろ」


「その通りですね〜」


 多分、最後に挑んだのも俺だろう。それ以来は空に浮いて、そこに行ったやつも、帰っきたやつも聞いたことはない。


「まったく、本当にどうやって帰ってきたんだか」


「そればっかりは私も」


 俺と同じようにウィナも首を振って、覚えていないことをアピールする。

 普通に考えるならば、浮く直前に抜け出したはずだが、無我夢中だったのだろう。


「……行きたくないが、あの人のところに行くか。ここからならまだ近いだろうし」


「自分が一番嫌ってたくせに」


「嫌ってたわけじゃないぞ、苦手なだけだ」


 俺にばっかり厳しい上、対抗手段がなかったので。

 セドの場合はいい喧嘩相手がいたぐらいのことだろう。

 ということで、手掛かりとしては、前我々のパーティメンバーの格闘家エド・ウォーカー。その人に聞くしかない。セドは行方不明だし、エドと違ってこいつは嫌いです。


「よくそんなので前の旅やってましたね」


「二人が大人だったんだよ」


「大の大人が初旅の少年をいびって何が大人だよ」


「期待の裏返しだったんじゃないの?」


「だったら、ウィナだけに優しかったのが腑に落ちない」


「……不毛な話になりそうだから、切っとこう。じゃあ、クエスト開始は明日から?」


「とりあえずそうしておくか。これからの予定まとめとくぞ」


 クエストを受注しているので、無期限ではあるが、優先的にセイバー・アーレンを探し出すこと。

 探しがてら、魔王城への行き方の手がかりをつかむためにエドの元を訪れること。


「どうでもいいけど、ソードって字下手だね。解読が難しいよ」


「学校行ってなかったし、おじさんも大して上手くなかったからね。そこは見逃してあげて」


「ウィナが教えてあげれば?」


「字は教えたところで上手くなるとは限らないんだよ」


 ウィナが虚ろな目で言うが、俺がウィナの店でバイトしていた時に何度か字を書く機会があったが、あまりに下手すぎたので、ウィナから少し教わったのだが、せいぜい判別がつくぐらいにしかならなかった。

 手癖がついちゃってるんでしょうね。下手ですいません。ウィナは教えられるだけあって上手いです。


「そりゃ、ソードから見たら誰だって上手いと思うよ」


「今まで報告書とかどうしてたんですか」


「ウィナに代筆してもらってました」


「ウィナさん、ソードさんを甘やかしすぎじゃないですか?」


「流石にこれを見せるわけにもいかないから……王様もソードは字だけはまともに書けると思ってるよ」


「よくバレなかったですね」


「だって、王様に報告書出したの一回きりだしな」


「今書いてるんですか?」


「ぼちぼちと自分で書いてる」


「それ、出す気ですか?」


「ウィナに代筆してもらいます」


「ソードのって報告書っていうか日記みたいなものなんだけど」


「文章力がないんだ。察してくれ」


「まあ、それが逆にソードが書いたって冗長してるのかもね」


「ウィナが書いたのだったら、もっともマシなものになってるだろう」


「で、どんなの書いてるんですか?」


「まあ、報告書だから、その国の現状とか、どんなクエストをこなしただとか書いてるぐらいだが……」


「見せてもらいますね」


「あ、こら」


「…………」


「なぜ、メインがロロちゃんのことなんですか。今、ソードさんが言ったことなんて一行程度しか書いてないじゃないですか!」


「ま、まあまあそんな怒るなって。一応、魔王の娘だから、書いとかねえと」


「じゃあこのタイトルはなんですかね?」


『ロロ、観察日記』


 そのタイトルを目の前に突き出されて、俺は目をそらす。どうやら言い逃れは出来なさそうだ。だが、書いてあることは魔王の子であることはほぼボカして、ありのままのロロちゃんを等身大で書いている。


「ソード、そんなに私のこと大好きなの?」


「大好きですがなにか?」


「なんか微妙に複雑だよ……」


 俺の愛情はロロちゃんには微妙に伝わらないらしい。おかしいな。


「えっと、そのエドさん?のところに行くんですよね。この国からどれくらいなんですか?」


「さあ?ざっともう一週間程度も歩けば着くと思うぞ」


「なら、もう少し旅支度したほうがいいですね。幸いお金はありますし、いくらか買い足しておきましょう。ソードさん付き合ってください」


「嫌だ〜。明日に備えて英気を養うんだ〜」


 そんな俺の言葉は無視して、首根っこを掴まれて、引きづられることになった。

 スター君、力強くなりましたね。元師匠として嬉しい限りですよ。ですが、もう少し、元師匠に敬意を示してください。お願いします。

 次の報告書にそう書いておこう。荷物持ちという名の同行をさせられながら、再び、あの指名手配のセイバーの顔を思い描いていた。

 ……あいつ、どんな顔してたっけ?





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