轟くその名
カルマさんは、その後海辺のあのおっさんが営んでいる?ところでしばらくお世話になるとのことで、別れとなった。
あの人も対海竜戦で活躍してくれたなあ。本当は俺がやるべき立場なんだろうけど。魔法が使えるというのはかなり有利なアドバンテージなのかもしれない。
そして、俺たちは新たな目的地を目指し、歩を進めていた。
「いや、全然進んでないでしょうが。ここ数日ぐらい魔法陣を引っ張り出してくるし」
「シーク呼び出せねえかなってさ」
「自分で無理って結論を出したくせに」
無理でも挑戦したがるのが男の性なのだ。ロロちゃんも少し寂しそうだし。
ただ、こうして他のことに逃げているのは、アリスのことを気にしすぎないようにするためなのかもしれない。
前の通り、いつも通り接してやればいい。
だが、アリスの線引きがわからないため、こちらからあまりちょっかいをかけるわけにもいかない。
だから無理やり道中でもできることを探して、こうして無理だと結論付けた召喚を懲りずにやっているのだ。
そして、魔法陣は特に何の反応も示すことない。
「失敗か……やっぱり正式な手順を踏まないとダメだよな」
「どうせ覚えてないでしょ」
「ウィナはどっかにメモしてないのかよ」
「私は全部破棄しました」
「んだよ」
そういや、そもそもあんまり召喚術が好きじゃないって話だったな。
こいつのことだから覚えてはいるんだろうけど、探り入れたところで教えてはくれないだろう。
「しゃーない。諦めるか」
「そのほうがいいよ」
魔法陣を処理していると、どこからか音が聞こえる。
「ったく、うるせえな。なんだ?」
「なんか、音が近づいてない?」
「俺たちに何か用でもあるのか?」
「それは知らないけど」
だが、確かに言う通り音は段々近づいてきてる。
「ああ、これは僕ですね」
「スター?何かあったか」
「電報みたいなものです」
「電報?」
「月一ぐらいで仕入れた情報を送ってもらうように院長に頼んだんです。流石にデマをつかませるわけもないでしょうから。僕たちだけじゃ限界もあるでしょうし」
そう言っている間に音はけたましく鳴り響き、俺たちの元へとたどり着いた。
スターがそれに触れると音が鳴り止む。
見た目的には小さな鳥みたいな感じだ。サイズは手のひら程度。こんなんに大した情報が入ってんのか?
「仕組みが気になるようですね」
「そらそうだろ。こんなんで大した情報が得られるのかよ」
「サイエンスは進歩してるということですよ」
「モンスターが出るような退廃的なこの世界でか?」
「退廃的とか言わないでください。廃れていくものもあれば、進化していくものもあるんですから」
「これは進化した産物なのか?」
機械的なものである。ただ、見た目はちゃんと羽毛が生えてるし、鳥の形を成している。
ピーチクパーチク鳴くようなこともない。
「で、どうやって情報を見るんだ?」
「ああ、それはこうやって……」
軽く電気を流し、手をスライドさせて、画面を表示させ……待て待て待て。
「何がどうなっている」
「僕の魔法に反応して電子画面が表示されるんです」
「それをどうやってやってるのか聞きたいんだが」
「魔法を作ってた際の偶然の産物でしょう」
「そんなんでいいのか」
「深く追求しますと禿げるか、組織に消されますよ」
「なんの組織だよ」
「未だに遭遇してない宗教団体でしょうかね」
そんなところに襲われたら、理不尽もいいところだろ。
しかし、近くにそんなところあったかな……
「ああ、ちょうどその宗教団体のことが載ってますね」
「図ってんじゃねえだろうな?」
「…………」
しばらく、スターは読みふけっていた。
ふと、振り向くとアリスと視線があった。
アリスはバツが悪そうに目をそらす。
そういや、結構性急だったな。何があったんだろうか。
少し落ち着いたら聞いてみることにしよう。
「ありがとう。また、頼むよ」
読み終えたのか、スターは小鳥を空へと還した。音も鳴らさずに、遠く羽ばたいていく。
「何が書いてあったんだ?」
「何やら、一つの教会で悪事が発覚したらしいです」
「ふーん。確定要素じゃないから調査に迎えとか?」
「いえ、その教会がある一人の手によって壊滅させられたそうです」
「壊滅?」
「死傷者も出てるそうです。もっとも、主犯格と思われてた人たちだそうですが」
「頭を潰したから満足したのか?」
「どうなんでしょうか……そもそも、ちょっとした悪事程度でそこまでする必要性が……」
「そこまでの悪事だったか、そいつに自分の親でも殺されたのか」
「……名前が載ってました。その教会を強襲した人も割れているそうです」
「だったら捕まえりゃ良いじゃねえか。どんな事情があれ、人を殺すことは重罪だ」
「……依頼されてたかもしれませんね。それこそ、上の組織に」
「上ってなんだよ。俺の上は王様だぞ?」
「一宗教を潰しても、自分たちの手を汚さないような組織ですかね」
「よくわからんな」
「全世界に知られているような、でも実態のしれないものですかね?」
「そんな組織知ってるか?ウィナ」
「私は聞いたことないかな」
「じゃあフリーメイソンだな」
「なんです?その組織」
「その昔、大国を作っただとか、国を代表するやつらばかり所属してるとか、だが、実際のところは何を資金源として、何を目的としてるのかよくわからない組織らしい」
「いつの話なんだか……」
「だから昔々なのだ」
「今も続いてるとでも?」
「わけのわからん組織だからこそ、無駄に謎の情報が流てるもんだ」
「そんな架空の組織を引っ張り出して話をややこしくしないでください」
「夢を見たっていいじゃないかと」
「夢を語るより、今のこの現状をどうにかしてください」
なんだか、視界の隅でアリスとロロちゃんが座り込んでいる。
特に何をしてるわけでもないが、何もやらないわけにはいかないのだろう。
自分の思いの丈を、ロロちゃんに話してるのかもしれない。
それをスターは俺にどうにかしろと言ってるわけだ。
「もう少し……してからだな」
「……まあ、僕が言えた義理ではないので、解決するのなら、いいんですが」
「そういや、その襲った犯人とやらを聞いてなかったな」
「ええ。名前はセイバー・アーレンというようです」
「いや、名前だけ言われても……はあ、それが何か感が半端ねえな」
「では、こういえばいいですか?最近、クエストランキングのトップランカーに入ってて、あの時にクエストを妨害してきた人ですよ」
「あいつか!」
やたら好戦的な戦闘狂。
「でもおかしくねえか?」
「ええ、ですから僕も首を傾げてるわけですが」
「何がわからないの?」
ロロちゃんが話に入ってきた。
アリスはウィナに押し付けてみたみたいだ。ロロちゃんでは荷が重かったのだろう。
「あんまりロロちゃんに聞かせる話でもないんだけどな」
「む〜子供扱いして〜。私の方が年上なんだよ!」
「見えん」
「バッサリ切り捨てるな!」
「いたいいたい」
腕に噛み付いてきおった。
まあ、甘噛みなので、軽く歯型がつくぐらいだろう。
ロロちゃんを腕にぶら下げたまま話を続けることにする。
「いや、離したほうがいいんじゃないですか?」
「私も疲れた」
「なら最初から噛み付くなよ」
「なんの話だったっけ」
「一応、これからの行く先……かな?」
「調査に向かう必要はありそうですね」
「行く先決まったの?」
「まあ、いるかどうか分からんけど、行かないわけにもいかないからな」
「ですね」
「む〜私にも分かるように話してよ」
「歩きながら話してやるから、そろそろ出発しよう」
正直、あまり気は進まないが、セイバーとやらに会いに行くために、俺たちは再び東に戻っていくこととした。正確には北東だが、それはどうでもいいことである。




