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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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誰がためにその剣を振るう

 海竜から繰り出される高水圧のブレスを見切り、ふもとに入り込み、剣を突き立てる。

 だが、あまり深いダメージは与えられない。

 それを見て、回旋して再び海竜から離れる。


「ったく、あれダメージ効いてんのか?」


「でも、不自然だよね」


「何が?」


「あんまりくっちゃべってもいられないから、これだけ言っておくけど、なんで水中で戦わないんだろうって」


 それだけ俺に言ってウィナは魔法を発動する。

 そう言われれば、不自然な話である。

 あいつは海竜と名乗っているだけあり、海の中からその姿を現した。なら、水中に潜って、攻撃の機をうかがったほうが余程、合理的かつ賢明な考えだろう。


 まあ、その場合は向こうからの攻撃が届かない位置に移動するだけだが。

 ただ、戦法としては十分にありな方法だ。こちらは、水中で自由に動き回る術を持ち合わせてはいないのだから。

 そうしないのは、向こうなりの配慮なのか。

 ウィナの電撃を食らって怯んでるところに再び、剣を振り上げ、足を切りつける。

 皮膚が硬いのか、そういう性質なのか、中々斬撃が入らない。

 剣を構え直そうとしたところに、足で蹴り上げられた。

 俺の体が上空に浮かぶ。

 それにめがけて、ブレスを放とうとしてくるが、途中でよろけたために、ブレスの軌道は逸れて、直撃することはなかった。

 作戦を話し終えた三人が攻撃を仕掛けていたのだ。

 ただ、俺は不様に地面に叩きつけられていた。下が柔らかい砂の上だったことが幸いして、大したダメージにはなっていない。

 剣を地面につき、それにすがって立ち上がる。


「つつ……」


「よかったですね。下が砂浜で」


「ああ、アスファルトの上だったら木っ端微塵だったかもな」


「処理が面倒なんでやめてくださいよ。もしくはうまく受身を取ってください」


 超上空から落とされて受身を取れるような訓練を俺は積んではいない。

 それ以前にそんな状況を想定して訓練をする奴はまずいない。

 せいぜい崖から落ちた場合ぐらいだろう。そんな状況に陥りたくはないけど。


「おそろいだな」


「おかげさんでな。まあ、全員ではないが、お前を倒すには十分な戦力だ」


「今までの私が本気だとでも?」


「だろうな」


 おそらく、防御に徹していたために、あまり攻撃を効かないようにしていたのだろう。

 ただ、それであの攻撃力か。

 あれ以上に上がるとするならば、厄介だな。


「なんだ?最近のボスキャラは段階的に強くなるのが流行ってんのか?」


「なんの話だ?」


「いや、気にするな。こっちの話だ」


 俺たちは、旅を通して色々な敵と戦っていくが、あくまでも海竜含むモンスターは、俺たちと戦うのは初めての話なのだ。こちらの事情を話したところでしょうがない話である。


 俺が、少し気を緩めたところで、海竜は飛び上がった。

 高すぎても、照準が合わないためか、少し低い位置だが。

 でも、これならあいつの射程距離だ。


「アリス!」


「今やってます!」


 アリスは武器に弓を選択し、矢を引いている。

 その細腕からは信じられないほどのスピードで直線的に海竜へと向かっていく。

 だが、そのスピードにも容易く対応し、海竜は滑空してくる。

 誰狙いだ?


「って、俺か!」


「ソード!構えて!」


 攻撃に備えて、剣を前に出し、受けきる体制をとった。

 これでは、ジリ貧だ。俺では分が悪い。ターン制にしてください。無理?

 まだ、こんなことを考えられているのだから、多少は余裕はあるのだろう。

 足のかぎ爪で俺を海竜は押し続ける。

 足元の砂もかなりえぐれてる。


 誰か……!


 俺の後ろから、矢が飛び、海竜の目に命中する。

 視界が遮られたのか、激しく悶絶している。

 俺はかぎ爪をなぎ払い、さらに足を切りはらった。

 剣は先程より、深く刺さった。動揺により、防御が疎かになったか、もしくは攻撃に割き始めたために、防御は手薄にしていたのか。

 もう数撃剣撃を入れて、少し後退し様子を見る。

 俺以外にも四人が攻撃している。今の俺なんかよりは、ずっと優秀な奴らだ。

 俺が今できるのは力押しではなく、経験から相手の弱いところを探すことだ。

 海竜はみんなから攻撃を受け続けているのにも関わらず、俺に向けて突進してくる。

 素直に受け止める気もないので、うまく避けられる位置に移動し、剣で切り裂く。

 それでも、海竜は執拗に俺を追ってくる。

 俺は、一度立ち止まった。

 海竜もそれを見て、共に立ち止まる。

 みんなは、俺と海竜が一対一の状態を遠巻きに見守っている。

 だが、それでもすぐに攻撃に入れる体制を取っている。

 体を傷だらけにしている海竜に俺は話しかけた。


「なんで、俺を標的にする?俺を倒そうとも、俺よりあいつらのほうがずっと強い。あまり頭のいい策だとは思えないが?」


 海竜は少し小馬鹿にするような溜息を吐く。


「あやつらと戦っても私は意味がない。貴様らが我が子に傷をつける連中とも思えない。だが、我が子を預けようとは思えない」


「……なんでだ?」


「己の心に聞いてみるがいい……とでも言いたいところだが、そんなことしてもすぐに答えなど出ないだろう。私がそれを言っておいてやる。……お前が逃げているからだ」


「そりゃ、傷つきたくないからな。出来る限りは逃げるし避ける。戦いの上では常識だ。かつ、狙い目があるならそれを狙う」


「別に貴様の戦い方を批判するつもりはない。……だが、貴様の剣が誰のためにあるのかが分からない」


「俺の剣?そりゃ、ただ、戦うための道具だと言えばそこまででもある。が、俺は本当は誰かを守るために剣を取ってる。……だから、詰めが甘いんだろうな。こうして、傷だらけのモンスター一匹、トドメを刺そうとしない」


「確かに、こうして喋ってはいるが、私が倒されるのも時間の問題だろう。もう敗北は目に見えている。なら、一つ頼みたいことがある」


「特にこちらに損がないなら引き受けるぜ」


「きっとイーブンといったところか」


「どういう意味だ?」


「負ければイーブン。勝てばプラス、ということだ」


 なんとなく、海竜の意図が読めた。

 俺は頷き、海竜と共にみんなの元へ戻る。

 みんなはまだ構えていたが、説明をして、それぞれ武器を下げた。


「じゃあ、答えを出してもらおう」


「すまないな。わざわざ、こちらが条件を破棄した上に賭けに付き合わせて」


「別にいいさ。あんたが母親なんだし、俺は俺のためじゃないからさ」


 途中で立ち止まると、こちらに近づいてきた姿が見受けられた。

 ロロちゃんが、シークと並んで歩いている。

 答えを出すのは1人と1匹だ。

 賭けを飲んだことを彼女は怒るだろうか。

 仮定ばかり考えていても仕方ない。

 俺は目を閉じて、事の顛末がいい方であるようにと願った。





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