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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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翼を広げて

 灯台ということで話がついたので、どうやって照らし、そして、あの地下がなぜ存在していたのかなどと謎は多く残されていたが、俺たちにとってその謎の究明は取るに足らないことであるので、さっさと出てきていた。


「ピー!」


 そして、生まれたばかり?で、右も左も分かってないようなシークに早速またがってる少女が一人。


「レッツゴー!」


「待て待て」


「止めないでよ、ソード」


「止めるわ!どこに行く気だ!」


「私一人で魔王城に乗り込むよ。みんな、今までありがとう」


「勝手に終わらそうとするな!そもそも、そいつじゃそんなに飛べやしないだろ」


「そうなの?」


「ピギー?」


「シークに聞いても自分の力がどんなものかすら分かってないのに、いきなり人乗せて飛べって、どんなイジメだよ」


 そもそもさっきも羽をバタバタさせてただけで飛べるかどうか分からんし。

 確認をすることが必要だな。


「よしっ。ここなら基本的に誰もこないはずだし、いっちょ、飛ぶ練習をしてみようか」


「ピー?」


「そうだ。お前は飛ぶんだ。この大空にな」


「ピーピー」


 なんか抗議されてる気がする。

 まあ、子は親の背を見て育つとか言うし、見本がなければいけないか。

 さっきのウィナじゃないけど。

 でも、こればっかりはできるやつがいないしな……。どうしたもんか。


「よし、見よう見まねだ。ウィナ、座標移動させてくれ」


「できるかそんなこと」


「ええ~」


「いかにもがっかりそうに言うんじゃない。前に言ったでしょうが」


「がっかり」


「口に出して言うな!」


「いはいいはい」


「ですが、空を飛ぼうにも確かに見本は必要ですよね」


 何本か木々を抱えたスターがこちらへ来て状況を察知してくれた。


「じゃあ、頼む」


「いきなり人任せにしないでください。そもそも、ソードさんが生み出したんですから、最後まで責任持って見届けてください」


「思ったけどよ。例えば、このままこいつを消すとするじゃん?じゃあ、こいつは一体どこに行くんだ?」


「さあ?」


「考えたら負け的なところじゃないんですか?」


「それと、一度消して、また呼び出したら経験値がリセットされるとか」


「どこかの体験版のゲームのようだね」


「ああ、国に戻ってもっとほのぼのしたい……」


「なんか目的忘れてるような……」


「ロロちゃんも、魔王城行かずにうちの国で暮らそうぜ。みんないるし」


「今までの旅を無駄にするかのような発言だね……」


「それはともかく、このモンスターの力量は測ったほうがいいね。味方なら、君たちの力になってくれるだろうし、まだ生まれたばかりなんだから伸び代はいくらでもあるよ」


「戦闘はしねえぞ」


「誰もそんなこと言ってないだろう。あくまでソード君が使役してるんだ。君が上手いこと舵を取れればいい」


「船はないけどな」


「そういう意味じゃない」


 違ったのか。


「体も成長するだろうし、人を乗せて飛行とかもできるようになるんじゃないかな。もっとも、どういう原理でこの地上に出てきているのかは不明なんだけども」


「俺に意外と魔力があるとか……?」


「それはない」


 今度はウィナから否定された。そうだよな。1年以上もこうやって放置されてなお、存在しているわけだが、俺が召喚したかさえも今現在は定かではないのだ。

 では、これを召喚していたから魔法を使うのに制限がかかっていたかと聞かれればそうではない。

 元々、あの召喚術式を書いたのも旅を終えてからだし、以前の旅では魔法は使えなかったのだ。いや、使おうと努力はしましたよ?ほら、自分だけ使えないのも癪だったから。

 だからこそ、ウィナに否定されたわけだが、そもそも、召喚するときにだけ魔力を使うのであって、維持には必要のないものなのかもしれない。辻褄が合わないことは多いが、世の中はいつでも理不尽なので、これぐらいは許してもらうことにしよう。


 バサッバサッ


「ん?」


「ソード〜シーク飛んでる〜」


「ああ……飛んでるな……」


 さすがに、シークから降りて地上からロロちゃんは見守っていたが、確かにシークは大空を飛んでいた。


「ピー!」


 あんまり、ドラゴンっぽくない鳴き声だが。生まれたばかりだし、こんなものだろう。いや、そもそも生まれて数時間で歩き回って、空を飛ぶって規格外過ぎるな。


「この調子なら一週間程度ほっとけば、大人になって、人の言葉を話すようになるんじゃね?」


「そんなバカな……」


「わっ、なにあれ?」


 どこかに行っていたのか、アリスが俺たちのところに来て、驚いていた。うん、これが普通の反応だよね。


「シークだよ。見本もなしに飛び回ってやがる」


「お兄ちゃんより、お利口さんだね」


「俺を比較対象に引き出すんじゃない」


「ごめんなさ〜い」


 てへっ、と可愛く舌を出していたずらっぽく謝る。


「お兄ちゃん、シークに乗れないかな?」


「乗るとしてもロロちゃんの次だな」


「ええ〜なんで〜?ロロちゃんばっかり?」


「1番軽いし、小さいからな。ロロちゃんを乗せて飛べるならいいけど、それに人柱になりたいのか?」


「人柱?」


「うちの妹に変な言葉吹き込まないでください」


「酸いも甘いも噛み分けたお兄さんからのありがたい金言だぞ」


「噛み砕いて役に立たなくなってそうだけど」


「ぶっちゃけ、八割は覚えてても役に立たん。そもそも人生無駄だらけだ」


「また、元も子もないことを……」


 だが、その中で自分にとっては必要ないものかもしれないが、誰かにとって必要なものかもしれないので、全部が全部無駄という話ではない。


「まあ、さすがに人を乗せて飛ぶのは明日以降に……」


 なんか、妙に興奮してるというか騒いでるというか、甲高いどこかで聞いたような声が上から聞こえる。

 ……上?

 俺たちは一斉に顔を空へと向けた。


「ヒャッホー‼︎」


「「…………」」


 全員が声を出せなくなっていた。色んな意味で絶句しているのだろう。ったく、あの子はなんでああも、自由奔放なんだ。


「ロロちゃん!降りて来なさい!」


「ヤダ!」


「やだじゃない!危ないから!」


「降りたら怒られる!」


 じゃあ、なんで怒られることわかってるのに乗ったんだ。


「怒らないから降りて来なさい!」


「それ怒る人の前振りじゃん!」


「怒らないぞ!ひたすら撫で回すだけだから!」


「な、なんかそれもイヤー!」


 拒否られた。

 ロロちゃんが、上で騒いだせいか、暴れたせいか分からないけど、シークが体制を崩した。


「れ?」


 そして、ロロちゃんが転落した。


「うおおお待て待て待て‼︎」


「ニギャァァァァ!」


 幸い?なことに真上かつ、目視できる高さだったので、落下地点にはすぐ入れた。

 ただし、俺にキャッチングの技術はなく、ロロちゃんに思いっきりダイビングされた。


「ぐおおおお」


「そ、ソード!大丈夫?」


 とりあえず、指で輪っかを作ってオーケーのサインを取っておく。が、かなりのダメージを負ってしまった。

 そして、シークがロロちゃんの安全を確認したのか、俺の元へと降り立った。

 そして、すまなさそうにこうべを垂れている。


「お前は悪くないさ。……悪いのはそこの姫さんでなあ」


「ひ、ご、ごめんなさい!好奇心だったんです!私が全面的に悪かったです!」


「ロロちゃん、こっち向いて」


「ふえ?」


「チョップ」


「った」


 軽く、小突くだけのような、そんな柔らかい攻撃。俺へのツッコミとは天地ほどの威力の違いがございますが、どういうことでしょうか?


「今回はソードが無様にも助けてくれたから良かったものの」


 なんで俺をdisるところから始めるの?必要ないよね?


「もし、ロロちゃん自身に何かあったらどうするの?それは、誰かが助けることができないから言ってるんだよ?ソードだって、ロロちゃんのことが大好きで心配だからああやって、言ってるんだから」


「うん……ごめんなさい」


「これからは何かするときは誰かにひとこと言うこと」


「うん……」


「私からは以上!ほら、ソードも何か言わないと。甘やかしてばかりじゃダメって言ったのはソードでしょ?」


「あの……すいません、ウィナさん。もう少し休ませてもらえませんか?」


「年中無休、不眠不休で働け」


 俺に死ねと?


「年長者として、先駆者としてアドバイスするのは、1秒でも早いほうがいいの。特にソードは」


「どういう意味だよ」


「どうせ、すぐ言わなきゃ、すぐ忘れる鳥頭なんだから」


「お前は年上を少しは敬え!」


「ソードは年下にそう言われないくらい立派になってください〜。体だけ立派になっても、心は子供のままなんだから」


「ということを踏まえてだな」


「いや、何を踏まえる必要があるのかさっぱりなんだけど」


「そう言うな。やっぱり、失敗ばかりして、人は学ぶんだ。誰も最初からから全て上手く出来る奴なんて、いないさ。だから、失敗して怒られて成長する。それを積み重ねて大人になるんだ。それに、ロロちゃんは自分の身に何かあったり、何か失敗したら、自分で責任を取れないだろ?」


「うん……」


「だからこうやって、俺たちが一緒にいるんだ。もちろん、ロロちゃん自身に何かあったら、俺たちも責任は本当は取れない。だから、何事もなく旅を終えなきゃいけない」


「ソードはいいの?」


「俺はいいさ。そういう役目だからな。でも、心配してくれてるやつはいる。迷惑をかけないようにとまでは言わない。失敗したら、尻拭いぐらいはしてやるから」


「なんかソードが言うとエロい……」


「なんでだよ!いいこと言っただろ⁉︎」


「ソードだからね。しょうがないね」


 しょうがないで片付けられる俺は、よほど人望がないのでしょうか。

 シークはそんな俺たちを見守るかのように大空を再び羽ばたいていた。

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