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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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原動力(3)

 地下は、体感だけでも一階の三倍ぐらいは広い。足元を照らすだけの灯火では心許ないが、メンテナンスとかはどうしていたのだろうか。そもそもメンテナンスなんて必要のない作りにしていたのかどうか。

 あんだけ、おおがかりな方法で地下へ行かなければならないのだ。頻繁に出入りした様子もない。

 だが、埃が積もっている様子も見受けられないのだが、出入りしていないのなら、普通は積もっていてもおかしくないはず。

 もしくは、埃すらも積もらないぐらい隙間も存在しないのか。

 ともすれば、一種のシェルターみたいなものか。避難の仕方が難解つうか、条件が酷すぎるけど。

 そもそも、ここを避難するためのものと考えているのが間違いなのかもしれないな。


「ああ、あったあった」


 カルマさんが立ち止まって、目的のものを指差す。

 そこにはアリスとスターの姿もあった。


「で、なんですこれ?」


「動力源だと思われます」


「確証はないと?」


「そんなところだね。燃料を入れる場所も見当たらないし、あったとして、どうやって、地下のここから、5階のあそこまで熱量を運んでいたのかということになるんだ」


「…………?」


「カルマさん、そんな小難しい話をするとソードの頭がショートします」


「これぐらいはついてきてくれよ……」


「すいませんがもうちょっと噛み砕いてあげてください」


「じゃあ、例え話だ。草が成長するには、根から成長するための養分を吸収するわけだ。じゃあ、その根はどうやって養分となるものを作ってるのかな?」


「あ~っと……土から栄養をもらってる?」


「そう。根と土が繋がってるからこそ、草は成長する。それでこれに戻るけど、今のこれは言うならば、燃料を送るための根がない状態なんだ」


「……あの蔦ははどうなんだ?」


「それも4階までしかないし、5階にはなかっただろう。それに、あの蔦も外から侵入してるものだしね」


「じゃあ、これは一体なんなんだ?」


「僕からはなんとも言えないね」


「この中に封印されしモンスターがいるとか……」


「まさかあ」


 頂上に何もなかった以上地下にも何もないとは考えにくい。こちらはまったく確証がないわけではない。

 それでも推測の範囲は出ないが、かつて、同じような物を見ている。

 ……どこで?

 俺の記憶はあやふやだが、既視感を覚えている。

 前にここに来ているのか?

 そんなことはない。俺は海の方向へは向かったことはない。それは、一緒に行っていたウィナの言葉によって証明されている。

 ただ、どこかで同じようなものを見ているはずだ。

 俺一人で悩んでいてもしょうがない。


「ウィナ、どこかで同じようなものを見てないか?」


「え?私?ん〜前に旅してた時にこんなのあったっけ?」


「気のせいなのかな……」


「色々旅して、記憶が混濁してるのかもしれないね。でも、旅の間で見てなくてもソードが見たことがあるのかもしれないことが一個だけあるよ」


「え?なんだ?」


「覚えてないかもしれないけど、実は魔法陣を作った際に何か生み出してるんだよ。それが……」


「これ……ってことか」


 何も生み出しやしないと思ったけど、そんな裏事情があったのか。なんで隠してやがった。


「最も、本当に生み出されたのかどうかすらも怪しかったし、何もなかったってことにしたほうが都合が良かったんでしょ」


「誰にとってだよ」


「そりゃ、お国のお偉いさんかな」


 王様ではなさそうだが、魔法を使うかつ、モンスターを使役したいと考えてる、俺が魔法陣を提供した人だな。

 自分が開発したといえば、それは自分の利益となる。

 いくらかは俺にも入ってはいるが、それでも微々たるものだ。

 だが、ウィナ以外に成功した例を聴かないところを見ると、俺が魔法陣は欠陥品だったのだろう。

 ま、魔法を使えないと分かっているやつに使えてたまるかというプライドもあったのかもしれない。

 ただ、だとして俺は一体何を生み出したのか。そして、それは消えないままこうして残ってしまっていたのか。

 それならば、俺ならその答えが出せる。

 俺は、その謎の塊に手を差し出す。

 みんなが固唾を飲んで見守っているのが、感じ取れる。

 俺の手が触れた。

 謎の塊は光を放ち、薄暗かったこの地下のフロアを照らし出す。

 急な光に目を細めたが、その輝きは一瞬の出来事であったため、すぐに目は慣れてきた。

 再び、地下は薄暗い空間へと戻る。

 先ほどまで球状の塊であったものが、異形なものへとなっていた。


「………」


「………」


「………」


「zzzz」


 一人を除いて言葉を失っていた。一名は、こんな状況に関わらず未だに寝ています。


「ピギー‼︎」


 甲高い声を上げて、翼を広げた。だが、まだうまく使えないらしく、その場でバタつかせているだけである。


「うわっ!なに?」


 鳴き声に驚いて、眠りこけていた姫が目覚めた。そして、鳴き声の主だと分かったのか、そいつの元へと詰め寄る。


「うるさい」


「ピ、ピギー……」


 そして、おとなしくさせてしまった。この子は人よりモンスターへの耐性の方が強そうな気がする。まあ、色々気にする必要がないからね。仕方ないね。

 俺が目覚めさせたモンスターは見た目から推測するに、ドラゴンの幼体……なのだろうか。

 ロロちゃんに威圧されて縮こまっていて、その尊厳なんてものは全くなくなってしまっているが。


「ロロちゃん、いきなりいじめちゃダメだろ」


「人が寝てたのにいきなり大声出す方が悪い」


「この状況下で寝ているロロちゃんのほうがおかしいんだけど……」


 それはともかく、謎のドラゴンらしきモンスターの元へと俺は寄ってみる。

 大きさは、全長はまだ、俺よりも小さいぐらいだ。

 敵なのか、味方なのか。それすらも判断がつかない。

 それは、向こう側も同じことだろう。俺たちが、自分を害するものなのか。

 ならば、こちらは誠意を見せてみよう。


「怖がらなくていいぞ。俺たちは別にお前を傷つけたりはしない。俺の名前はソードだ」


「ピーピー?」


「そうそう。お前は名前とかあるのか?そうだ、ロロちゃん。あれで、こいつの名前検索できないか?」


「どうだろ?やってみるけど……」


 ロロちゃんがいじっているものを見て、カルマさんが聞いてくる。


「ロロちゃんが使ってるあれはなんだい?」


「ロロちゃんのステーテスを表す機械?」


「なんで疑問系なんだい」


「いや、俺もよくわかってないんで。ただ、モンスターの情報を見ることも可能みたいですよ」


「それは便利なものがあったものだ。でも、あまりモンスターも出ないご時世に必要なものかい?」


「それこそ、今みたいな非常用ですよ」


「ソード〜」


「なんか分かったか?」


 見終わったのか、ロロちゃんが戻ってきた。


「なんか分かんない。直して」


 画面を見るとエラーの文字が表示されていた。別に壊れたわけではなく、データとして入ってないんだろう。


「別に壊れたわけじゃないみたいだぞ。ここを……こうして、と。ほら」


「あ、直った。ありがと」


「こっちもありがとな。わざわざ調べてくれて」


「でも、結局分かんなかったよ?」


「分かんないなら、俺たちで勝手につけちまけばいい。誰も文句言わねえさ」


「なら、誕生させたソード君にその権利があるね」


「えーソードばっかり〜」


「君は寝ていただけだろう……」


「いいっすよ。別に名前の権利ぐらい。ロロちゃんがなんかいいのあったらつけていいぞ」


「やった!え〜っと……」


「いいのかい?」


「残念なことに俺にはネーミングセンスがないんで」


 つけてもらうなら、カッコイイものがいいだろう。俺がつけたら大八郎とかになるぞ。誰だよ大八郎って話だが。


「よしっ!決めた!」


「お?なんだ?」


「ウルトラエターナルスペシャルエクストリームウイングマグナム!」


「すげえ、適当に考えた必殺技みたいだな」


「略称はシーク」


「どのあたりにシークの要素があったんだ?」


 適当な単語をつらつら並べたやつよりは断然いいだろう。


「じゃあ、これからお前の名前はシークだ」


「ピー?」


「よろしく、シーク」


「ピー!」


「わっ!くすぐったいよ〜」


 顔をロロちゃんに擦り寄せている。俺が目覚めさせたはずなのに、なぜ向こうに懐く。


「これからどうするんだい?」


「ん〜。こいつを連れ歩くわけにもいかないんだけど……」


「ピギー?」


 シークは見た目からしてモンスターだし、それも数の少ないドラゴン系ときたもんだ。人の目に触れれば、狩られることは必至だろう。どうにかして、人目に触れずになんとかできないものか。


「ソードの魔法陣から呼び出したものなら、ソードが解除すれば一旦、その場からはいなくなるんじゃない?」


「その魔法陣は行方不明なんですけど」


「とは言わせないよ」


 ウィナの持ち物から、なにやら紙が取り出された。

 もうあの人のバッグの中は四次元にでも繋がってるんではないでしょうか?四次元って時間旅行のことだけど。


「でも、それを棄却したところで、また同じやつが書けなかったら、こいつを呼び出すことはできないだろ?」


「本来、こういうものでも魔力を込める必要があるんだけどね。魔力が欠片しかないソードがどうして、ドラゴンの卵を呼び寄せることができたのか……」


「……呼び寄せる、というより、新たに生み出したっていうほうが自然な話なのかもしれないね」


「そうなのか?」


「元々召喚魔法陣自体がそういう仕組みなのかもしれない。元々いるものではなく、ゼロからの創造。興味深い話だ」


「なら、最初から即戦力を持ってこれるわけではなかったのか」


「そうなるね」


 魔力に比例して、強いモンスターを召喚できるものだと考えていたが、そういう基準でもないみたいだな。考察の余地があるかもしれないが、もしかしたら、召喚できるのは、1人一体という制限もついてるのかもしれない。


「そういや、ウィナも召喚したことあるよな?そのモンスターはどうしたんだ?」


「私の場合は、私の意思で消えてくれたけどね。ソードがそうとは限らないっぽいね」


「なんで?」


「そもそも召喚したことすら知らなかったわけだし」


「まあ、そうだな……」


 そもそも召喚自体、その場に魔法陣を描いて、その場で召喚されるものと認識してたし。どう座標が狂ったら、こんなところに行き着いたんだ。

 もしくは、発見した誰かがここに隔離したのか。

 いや、隔離するにも、不自然な点は多いが、ここで上げててもキリがない。

 俺は、俺自身が召喚したと思われる、ドラゴンもといシークを見やる。

 未だ、俺をそっちのけでロロちゃんと戯れていた。


「とりあえず、ここを出てから考えるか」


 こんなところで思考を巡らせていても、いい考えは出ない。

 俺たちは、シークをそのまま連れて、謎の塔だったのか、灯台だったのかを脱出することにした。

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