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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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原動力(2)

 地下に行くと、さらに光が差し込まないためか暗く感じられる。

 そのため、ウィナのほうが魔法量が多いためか、火の玉を出してくれて光を確保しながら、前を歩いてくれている。


「何で私が先導してんのでしょうね?」


「俺はさっきの騒動で疲れた上に、俺は魔法を使えないと何度でも言っている」


「試しにやってみようよ。私たちが教えてあげるから」


「え?私も教えるの?まだ、教わってる立場だよ?」


「しまった……アリスじゃなくてロロちゃんだった……」


「ねえ、露骨に落胆するのやめよ?私も傷つくよ?」


 ウィナは人をナチュラルに傷つける術を身につけたようだ。そんなスキルいらないから、もっと優しくしてください。


「まあ、ロロちゃんは……火の魔法使えたっけ?」


「ごあいにく氷の魔法しか使えません」


「なら、それを極めたほうがいいね……。でも、氷魔法って、標準魔法でいえば、回復魔法の次に習得難易度が高かったと思うんだけど……」


「最初にたどり着いたところが、非常に灼熱の大地でして、自分でもいかに涼しい思いをするかということを考えた挙句の果てに、じゃあ自分で魔法使えば早いじゃんってことになって、このようなことに」


「それで使えるようになるものなんだ……」


「氷魔法だけ無駄に発達してるようなところだったから」


「今度は逆に極寒地になっててもおかしくなさそうだな」


「そのあたりは調整しだいだけどね。でも、人の力じゃ自然には勝てないのですよ」


「ロロちゃんはクオーターじゃん」


「そこはツッコんだら負けだよ」


「俺は負けたのか……」


 とりあえず、一番習得難易度が低いと言われてる火の魔法を教えてもらうことにする。


「本当は詠唱を覚えなきゃいけないんだけど……ソードの頭じゃ無理か」


「そんな頭ごなしに否定するもんじゃないぞ。だいたいウィナだって、詠唱なんかしてねえじゃねえか」


「わたしはある程度の魔法は詠唱なしでも使えるの。それだけやってきたから。ゼロから始めるソードにほいほいやられても私の立つ瀬がないでしょ」


「意外にやってこなかっただけで、やらしたらすごいかもしれんぞ?」


「イメージだけで出来るもんじゃないから」


 魔法学なんてものを、学習するようなご時世だしな。ある程度の魔法というものの概念を理解した上で、魔法は扱わなきゃいけないらしい。かといって、周りの奴ら普通にバンバン使ってるもんだから、そんな危険なものにも見えないし、そもそも現代魔法は人には害のないように改良されたから、危険も何もあったもんじゃないと思うけどな。


「ところがどっこい、だよ」


「何がだよ」


「魔法って、人の体から出て、それを制御してるでしょ?じゃあ、その原動力となってるのはなんだと思う?」


「そりゃ、魔力とかいうぐらいだし、体のどこかに魔力の錬成っつうの?そういう器官があるんじゃないのか?」


「そう。ま、それは人それぞれで許容量が違うわけだけど、それを原動力として魔法を使ってるの。ソードのはショボそうだけど」


「俺はその分、別のところに力を割いてるんだよ」


「でも、これぐらいなら使えると便利だし、やってみよっか。ちなみに詠唱呪文はこれね」


 ウィナがどこからか詠唱呪文の書かれた紙を取り出して、俺の前に差し出した。

 ロロちゃんも身を乗り出してそれを見ている。

 そして、二人とも頭を抱えることになる。


「あんたら、これぐらいも読めんのか……」


「だって、会話するぐらいなら支障ないし」


「魔法の詠唱呪文って別言語に思えるんだよ。だから、いくつも使える人は多重言語を話してるのと同義なんだよ」


「なるほど、普通の人が一つか二つ、それもそこまでレベルの高くない魔法を使っている理由が今判明したな」


「好きなものこそ上手なれっていうけどさ……」


 そもそも今から新たに覚えるとか無理があるわ。

 だからこそ、初歩かつ簡単なやつをウィナは選択してくれたんだろうけど、それすらも辛い。


「見ながらでもいいのか?」


「敵がいるわけじゃないし、別に戦闘に使うようなものでもないからいいよ」


「……すいません。とりあえず、見本を見せてください」


「……まあ、資料だけ渡して、はい、やっとけって言われても無理だもんね。仕方ない、先生が特別に見せてあげよう」


 仕方ないとか言ってる割にはウキウキしてるようにも見えるのは俺の錯覚でしょうか先生。

 もちろんだが、ウィナは見なくても詠唱は可能なので、そのまま暗唱して、魔法を出す。

 ウィナの指先に小さな火の玉が灯った。


「まあ、このぐらいなら、二つ魔法を出すことも可能だけど……それは、今はいっか。やり方わかった?」


「くうくう……」


 ウィナが火を消した一瞬の隙にロロちゃんが睡眠に入っていた。早すぎるだろ。1分あるかないかだったぞ。


「ロロちゃんはいいよ。今度、みっちり氷魔法教えておくから」


「質問いいか?」


「どうぞ」


「詠唱スピードとか、間違ったりだとかそういうのってどれぐらい魔法を発動するのに影響するんだ?」


「いくら早くても、詠唱して出るものは決まってるから威力が大きくなったりはしないよ。でも、間違えたりすると、上手く出なかったり、暴発したりする可能性はあるから気をつけてね」


「暴発すると詠唱者自身に何かダメージがあったりするのか?」


「ダメージというよりは、普通に発動するより余計に魔力消費をするってことかな。だから、最初は見ながら確実に間違えないようにやるんだよ」


「ふむふむ」


 ブツブツ……


「あっ、まちが……」


 ボンッ


「…………」


「…………」


 なんだろう。言葉にならない悔しさがこみ上げてくる。

 なんというか発動できなかったことより、無性に恥ずかしい。


「は、初めてなんだからゆっくりやってこ!」


 その優しさが俺には辛いです。


 30分後……


 ボッ


 俺の手のひらに火の玉が灯った。


「おお……できた」


「はあ……はあ……」


「なんでウィナが疲れてるんだ?」


「いや……なんでだろ?」


「普通はその魔法に30分もかけるような人はいないからだよ」


「うわ!いたんすか⁉︎」


「妙に変な詠唱が聞こえてくるからアリスちゃんが怖がってたんだよ。だから、僕がこうして様子を見に来たんだ」


 なんか、誠に申し訳ございません。後で、アリスに謝っておこう。


「で、できたのかい?」


「ええ、おかげさまで」


 言った瞬間に手のひらに灯した火は消えてしまった。


「まるで君の命ようだ」


「儚いって意味ですか⁉︎まだ、死ぬ気はありませんよ!」


「と言うのは冗談で、ちょっと面白そうなの見つけたから、それもあって呼びに来たんだ」


「あ、あのアリスが怖がってたのって……」


「ああ、それは本当だから謝っておきなよ」


「心配かけてすいません」


「で、こっちの眠り姫はどうするのかい?」


 そういや、ロロちゃんが寝っぱなしなの忘れてた。まったく、よくこんなところで寝れるな。


「路上で寝てたりしたら心配だね……近場にやらかしそうな人がいるし」


 誰を見ながら言っておる。俺はひたすら愛でるだけだぞ。


「お〜い、ロロちゃ〜ん。起きなさ〜い」


 ウィナが揺すってみるが、寝息を立てて起きる気配を見せない。


「はあ。じゃあ、ソード」


「あいよ」


「君達、甘やかしすぎじゃないのかい?」


「いいんすよ。これで。ぶっちゃけいえば、俺たちはこの子のおかげで色々助かってますし、俺自身もあまりできることがないっすから」


「君たちは、この子のために動いてるようにも見えるね」


 よく考えれば、別に勇者として国に貢献しようなんて気はさらさらない。

 それこそ、ロロちゃんを魔王の元に戻すためだけにこうして旅をしている。

 その手がかりのためにこうして、色々探索をしているのだ。

 誰が、誰のために目的を持っているかは分からないけど、とりあえず俺とウィナはロロちゃんのために旅を続けているのだ。


「目的なき旅よりはいいと思います。それで、面白いものって?」


「ソード君とウィナちゃんにとってのロロちゃんみたいなものが見つかったってところかな」


「はあ……」


 よく分からないままに、ウィナが再び火を灯して先導してくれた。

 あんなこと言ってたけど、別にカルマさんも火の魔法が使えるわけではないらしい。

 その代わり、雷魔法が使えるからなんかバックライト的な感じで照らすことができるらしい。

 いや、だったらウィナにじゃなくてあんたやれよ。


「あれ、燃費悪いんだ……だから、一瞬だけ照らして、あとは一瞬見た光景を脳裏に焼き付けて進むんだよ」


 めんどくせえな。使えない俺が言える立場じゃないけど。


「も〜ぶつくさ言ってないで早く歩く!」


「「はい、すいません」」


 なんで、年下の女の子に大の男が2人揃って叱られてるんでしょうか。

 頼りないからですね。分かります。

 今度、魔法の練習しておこう。

 俺はロロちゃんを背に、詠唱呪文が書かれた紙を小脇に挟んで歩いていた。

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