原動力
一番上まで登ったのに、早々に下に降りることになってしまった。
その間も、また蔦の絡まった地面を歩き続ける。なぜかロロちゃんはまた、猫に戻ってアリスの腕に収まっていたが。
ただ単に自分の足で歩きたくないだけじゃないだろうな?
「もう一回見渡しても、宝箱ねえな」
「そういくつもあるものじゃないでしょ」
そう言われても、ダンジョン的立ち位置っぽいから、地図以外のものがあっても誰も文句言わないよ?
それでも、一度来た道ではあるので、特に苦にすることなく、入り口のある一階へ戻ってきた。
「まあ、新しく面積が増えたとかはないから、5階から2階までは特に目新しいものはなかったわけだが、あるとしたらこの階だと思うので、各々探してきてください」
「じゃ、はい。お兄ちゃん」
アリスがロロちゃんを差し出してきた。
「……多分、大丈夫だから。心配してもらわなくても、監視をつけてもらわなくても」
「そっか」
「では、兄さんのところに行ってきます」
アリスはたどたどしい手つきで敬礼して、スターの元へ向かっていった。
あいつはそう言ったけど、大丈夫だろうか。
「ロロちゃんはどう思う?」
「にゃ~?」
「そういや、喋れなかったな。悪い」
変身の時間には制限があるって言ってたけど、回数に関してはないんだろうか。
でも、言うほど時間も使ってないし、基本的にはアリスの腕に抱かれていたので、体力的にも消耗が少ないのかもしれない。
「……俺たちも探しますか」
今度は俺がロロちゃんを腕に抱いて、探し回ることにした。
注釈かなんかに猫ですって加えておかないと誤解されそうだ。
それはいいとして、この塔は、上の階に行くほど、面積が狭くなっていくようだ。まあ、どんな建物もそういうものだろうけど。逆の建物があったら上の重量に耐えられないだろうし。
したがって、この階は無駄に広いということだ。さっきも階段を探しただけなので、全体的には見て回ってはいない。
さて、どこにあるのやら。
薄暗い空間をなんとか目をこらしながら進んでいく。
その途中でジタバタと腕の中でロロちゃんが動いていた。下りたいのだろうか?
ひとまず、地面に下ろしてやる。
下ろすとすぐに、俺の足元を叩いてきた。
ついてこいってことか。
随分と猫の状態でも意思疎通が図れるようになったな。不便なのは変わりないけど。
それにしても、何か見つけたのだろうか。そういえば、猫は夜目が利くとか……利きそうじゃない?猫は基本的には夜行性らしいし。あら、さらにロロちゃんに当てはまる要素が生まれた。
数歩前を行く、ロロちゃんにおとなしくついていくことにする。
「にゃっ⁉︎」
「とっ……って、うわあああ!」
階段があったらしく、そのまま踏み外して、二人(?)とも転げ落ちてしまった。
「っつつ……」
「痛い……」
衝撃のせいか、ロロちゃんも変身が解けてしまったようだ。
「ロロちゃん、怪我ないか?」
「うん……大丈夫。ありがと、庇ってくれて」
「大丈夫だ。今となっちゃ頑丈なのだけが取り柄だしな」
「体力ないくせにね」
「戦闘時には覚醒するから大丈夫だ」
「普段からしてもらいたいね」
「ま、なんにせよ、これが地下の入り口ってことだな。とりあえず、みんなを呼びに上に戻るか」
「穴になってないだけ幸いしたね」
「まったくだ」
穴だったら、すぐには戻れなかっただろうし。
階段を上ると、俺の声が聞こえたのか何人か来ていた。
「何があったの?」
「どうせ、ソードさんのことですし、階段に気づかずに踏み外したんでしょう」
当たっているので言い返せないのが悔しいです。
だが、反論の声が上がった。
「違うもん!ソードは私を庇っただけなんだから!」
意外にもロロちゃんが声を張ったから、駆けつけたウィナとスターは面を食らっていた。
「ご、ごめん。急に大声出して」
「いや、いいよ。僕も憶測で軽率な発言をした」
「そうだ。もっと反省しろ」
「ソードさんは黙っててください」
ねえ、俺の話じゃないの?俺が責められるのおかしくない?
「すぐ調子に乗るんだから」
「俺は褒められて伸びるタイプだ。だいたい叱って伸びるやつなんていないだろ」
「褒められると現状に満足して伸びない場合があるけど」
「叱られたら俺の場合やってやるぞー、じゃなくてやる気をなくす」
「おじさんの特訓はちゃんとやってたじゃない」
「あれは別に叱られてたわけじゃないからな。理不尽な大人の言い分に負けたくなかったんだ」
「なるほど、それでこんな歪んだ子供ができたと」
「俺を不良品扱いするんじゃない」
どういう曲解をすれば、そういう結論に至るんだ。一番の理解者のはずなのに、一番評価が酷い気がする。
そうこうしてるうちに、カルマさんとアリスもこちらにたどり着いた。よく場所を特定できましたね。
「そりゃ、省エネモードで灯火クラスの火の玉を出してるから」
「……それ、出来ないの、俺とロロちゃんだけじゃね?」
「なんでできないのに、行っちゃうかな?」
「だったら置いていくなよ!」
「まあ、ソードだったら大丈夫かと」
「ソードさんだし」
「お兄ちゃんだし」
あんたら、バカにしてんの?
「まあまあ、とにかく入り口も見つかったんだしコントもそこまでにしてとこう」
コント扱いですか?俺はそれなりに傷ついていますけど?
「良くも悪くもソードはそういうポジションなんだよ。大丈夫、私はバカにしないから」
「バカにできるほどの実力もないしな」
「ソードよりは上だもん!」
やっぱり俺は一番下なんですか?
でも、まあもう少し前は、もうちょっとツンツンしてたから懐いてくれてるのはいいことである。
「ロロちゃんが妹だったらな……」
「私も妹にしたら妹三人だよ?」
「多いな。でも、アリスはともかくウィナは年下って感じがしねえけど」
「だ・れ・が、おばさんですって?」
「んなことは一言も言ってねえ!」
またも曲解されてる。ウィナの頭というか、脳がどうやって今の言葉を変換してるか誰か見てください。
「ふふ」
「カルマさん!見てないで助けてください!」
「いやいや、僕が入るのも野暮だし、先に地下に行ってるよ」
「僕も行ってますね」
「裏切り者!」
俺だけを残して、男二人は地下へと潜っていった。
「……?珍しく、アリスがいないな?」
「ソードに飽きたんじゃない?」
「なんてこったい」
「やっぱり己はロリコンか!」
「痛い痛い!ロリコンじゃなくて可愛い子が好きなだけだ!」
「尚更悪いわ!」
どう答えればウィナの機嫌は直るんでしょうか?誰か解答を俺に教えてください。
地下へ行く前から、すでに力尽きそうだった。




